タトゥーの話
地下鉄が目的地に着いたので降りると、夏休みのせいなのかとにかく人が多い。平日の昼間にも関わらずだ。
人波に流されて改札へと向かう。目の前を歩いているのはタンクトップに短パン、ビーサンのリゾート地仕様の外国人男性だ。全体的にでかくて色素が薄い。
なんとはなしにその人を見ながら歩いていたら、左腕のタトゥーに気がついた。
「生き甲斐」
明朝体でそう彫ってある。一文字の大きさは1.5センチくらいで4文字間の余白をいれて横幅は12センチくらいだろうか。ともあれ「生き甲斐」である。そしてそれは二の腕の外側の目立つ場所にある。
そしてその下には縦一列で何かが彫ってある。漢字なのだろうか?気になる、が、近寄って見るのは怖い。
ちなみにこの方、右腕には羅針盤のようなもの、首には髑髏でした。
なかなか盛りだくさんの内容だ。羅針盤の方はカラフルだった。時間もかかるし、広範囲だと痛みも相当あるのだろうなあと思う。わたしは眉毛アートメイクすら痛くて一度で断念した根性なしなので、たとえ文字でも卒倒しそうだ。
ちなみにアートメイクしようと決心したのは、その頃スイミングにハマってて毎日一キロ泳いでいて、水泳は当然化粧なしで泳ぐのだけど、どうしても薄い眉毛が気になるからだった。眉毛がないとより一層ぼんやり顔になるのだ。
今はどうか知らないけれど当時のアートメイク眉毛は、入れたあと1週間ほど海苔をはりつけたみたいな(イモトアヤコさんのメイクのような)太くて黒い眉になるので、前髪で眉毛を隠していた。1週間くらいしたら痒くなってその黒い海苔が剥がれ落ちるのである。
次はアイラインもしないかと言われたけれど、眉毛だけであんなに痛いのだからアイラインなんて地獄でしょう。唇に入れるのもあるらしいが、何故そんな必要があるのか理解に苦しむ。やわらかい場所ほど痛いだろうし、口紅でいいのでは?と思う。
とりあえず眉毛を一回だけしてメンテナンスには行かなかった。痛いのは嫌だ。
若い人のタトゥーを本当によく見かけるようになったので、驚きはしないけれど、外国の方の漢字は驚いた。文字を入れると意味があるものになるから、飽きて不必要になった時に困りそうだ。
その時付き合っていた恋人の名前を入れて別れたらどうすんの?とか、変な意味の外国語とか、消したくてもそれもお金がかかるし、痛みは入れる時より痛いのではないだろうか。
そんな事を思ったので、「生き甲斐」を左の二の腕に入れ墨しちゃった白人のお兄さんは勇気のある人だなあと思ったのだった。
良い言葉ですけどね。
生き甲斐だけでは答えはわからないから。




