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災淵の雪月花  作者: 暁星
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8 無制約者

オルクスvs星那の戦闘、その後は…!?






「――それで、なんで急に終わりにしようと思ったわけ?」



 私の視点からすれば急に戦闘を仕掛けて来た上にあんなにキレてたのに不自然だろう。それも、" 結界 " まで使っておいて。



「……あ?興が削がれちまったんだよ。やる気が失せちまったのに続ける意味もねぇだろ」



 オルクスはさも当然のようにただ急に気が変わっただけと言い放つ。

 こちらとしてはここまで自分の陣地を滅茶苦茶にしておいて「気が変わったからやめる」と火種を放り投げられても困るし巫山戯るなと言いたいところだ。

 組織の者は皆事前に避難させていたから良かったものの、そうでなかったら一体どれだけの被害が出ていたことか……



「あぁ……?そう…………なら仕方ない……」



「お、珍しく物分りが良いじゃねぇの星那よぉ」



 声を怒りで震わせながら私が言い放つと、オルクスは全く察していないのか私の肩に手を置いて変な笑みを浮かべる。



「…………いでしょ」



「……あ?なんて?」



「……そんなわけ、無いでしょって…………言ってんのよ!」



 聞き返してきたオルクスについに私は我慢の限界を迎えて、私の肩に置かれたオルクスの手を掴んで引き、腕まで掴みながら右足を引っ掛けてオルクスの体を浮かせながら怒りのまま思い切り背負い投げした。



「ってぇ……星那ぁ、手前……!」



「五月蝿い黙れ肉達磨が」



 オルクスが逆上して私に向かって大声で叫んだ瞬間、私は拳を握って地に倒れたままこちらを向いているその顔面を殴ろうとした…………のだが……?


 目の前に広がる光景は、長い銀髪をツインテールにしたメイド服の少女がオルクスをそれはもう恐ろしい程に殺意に溢れた目で見ながらお腹に自らの拳をめり込ませている様子だった。



「…………手前……何しやが…………」



 嗚咽を漏らしながらオルクスはその少女に殴りかかろうとする…………のだが。



「黙れと言ったのが理解出来なかったのですか汚らわしい。星那様からさっさと離れなさい。不敬ですよ」



 私とオルクスとの間に割り込んでお腹に拳をめり込ませ、仮にも" 渾沌の世代 " であるオルクスに向かって肉達磨とまで言い放つ。殴られそうになった瞬間にその乱暴な拳を軽々と避けてカウンターとして顔面に拳を叩き込む。



「ぐぁっ…………」



 お腹と顔面、その両方に短時間で手加減のない強烈な拳を叩き込まれたオルクスは何も出来ずに呻き声を上げながらその場にうずくまった。



「…………アルカナ?」



 うずくまるオルクスを見ながら一瞬私は軽蔑するような目を向けた後、視線を上げて少女の方を見て私はその名前を口にした。



「はい、星那様!アルカナですよ〜…………って、なんですかその顔!?」



 名前を呼ばれたアルカナは嬉しそうな声色で私の方に振り向いた。……そして、私の顔を見て「ガーン」という効果音が鳴りそうな程あからさまな驚愕と悲しみに塗れた表情へと変貌した。



「………………私さ」



「……はい」



 少しの沈黙が続いたあと、いつもよりも低い声でアルカナに言う。



「皆とここを離れて避難してって言っておいたよね?」



「うっ…………で、でもっ!」



 少し狼狽えつつもなんとか言い訳をしようとアルカナは噛みそうになりながら口を開く。



「でも??」



「…………星那様がどうしても……心配……で……」



 私の気迫に気圧され、アルカナはバレないように少し頬を膨らませながらも申し訳なさそうに俯きながら絞り出すように言った。



「私を心配するのは分かるけどね、言ったことは守りなさい」



 私が腕を組みながら片目を瞑り、アルカナに言い聞かせるようにそう言っていると、アルカナが懐から刃渡り30cmくらいの短刀を抜いておもむろに首にその刃を当てた。



「言いつけを守ることが出来ず申し訳ありません。つきましては、どうかこの首でお慈悲を賜りますよう……」



「まてまてまて!?」



 本当に首を断とうと力を入れようとしたアルカナを私は慌てて止める。

 言葉を発しながらアルカナの首に当てられている短刀を取り上げようとした瞬間――。



『――――――――』



『――――てぇー!!』



 突然頭の中にそんな不穏な情景が広がった。

 怒り狂う大柄の黒い男。首の無い女の亡骸を抱いて泣き叫ぶ小柄で藍色の髪の女。

 そして、3対6枚の白い大きな翼を広げて周囲をみるみるうちに聖なる炎で焼き滅ぼしていく厄災の天使。




 会話の内容も分からない程に曖昧な白昼夢だったが、私の " 眼 " が視た事ならば、それは起こりうる数多い " 可能性 " の1つがそれということ。

 要は今最も起こりうる未来が今視た白昼夢というわけだ。



「ぁ…………アルカナ!」



 「危ないっ!」……そう私が叫びながら手を伸ばしてアルカナを守ろうとした時、私の真後ろで声がした。



「そんな死にてぇなら、お望み通り殺してやるよ」



 それは酷く憎しみの籠った、酷く残虐で無慈悲な声だった。



「――死ね」



「星那様ぁぁ!!!!!!!」



 アルカナの絶望が籠った悲痛な叫びとオルクスの短い呟きが私の耳に届いたのと同時、私の身体は真横に重力が働いたかのように吹っ飛ばされた。



「……かはっ…………」



『チカラヲ』



 ビルの固い鉄筋コンクリートに身体を思いっきり叩きつけられ、咄嗟のことでまともに身体強化も施せなかった肉体が悲鳴を上げ、吐血する。それに耐えかねた精神は一時的に意識を手放そうとする。

 なんとか意識を手放すことだけは阻止していると、声が響いた。それはとても静謐で、何人にも犯されることの無い絶対的な " 聖 " そのもののようであった。



『チカラヲ』



 壊れた玩具のように同じことを繰り返すその声に、私は声を絞り出す。



「力…………でも……なん、でも……いい…………から…………わた、し……に…………寄越し……なさい……!」



 そう口にした瞬間、わたしの中で何かの錠が外れたような音がした気がした。



『ヨク、イッタ』



 初めて『チカラヲ』以外の言葉を話したのを認識した瞬間、私の意識は深く暗い闇の中へと落ちていった。








***









『はいはーい、皆様。お久しぶりの " ただの語り部 " ちゃんですよっ☆

 むむ、なんでお前が出てくるんだ、みたいなことを思いましたね?だって仕方ないでしょう?この世界は " 望月 星那 " という巫女を中心としているのですから。中心人物が意識を落としてしまったのだからその視点からではその間何があったのか、なーんて分からないんですからねぇ……

 と、いうわけでー!語り部ちゃんがその間の様子を皆様に補填に来た、ってわけなのですよぉ』



 …………さて、と。今からは少しだけここで私が話します。

 星那が意識を落としている間に起こったことをありのまま話しますのでチャンネルはそのままに、是非ともその光景を想像しながらこの語り部ちゃんのお話を聞いていってくださいな。

 …………あ、そうそう。星那が見た仮定の未来の光景は後ほど、今回の私の役割が終わる頃にお見せしますわ。




「星那よぉ……手前が居るとあのメイドの嬢ちゃん殺せねぇだろうが。擁護するのは勝手だがなぁ?俺の邪魔ァするってんなら、手前から仕留めんのは当たりめぇだよなぁ?」



 意識を手放した直後の星那に、オルクスはとても苛立った様子で一方的に言い放つ。

 アルカナは星那が蹴飛ばされた直後にオルクスによって首を絞められ、意識を奪われていた。死んではいないのが不幸中の幸いと言ったところだろうか。



「おいおい、だんまりかぁ??何とか言えよォ!」



 そう荒れた様子で叫んだオルクスは、半狂乱になりながら星那の腹部を蹴飛ばす。

 意識のない星那の身体はなんの抵抗もできずにその華奢な身体を後ろに吸い寄せられるように飛ばされていく。



「あぁん??もう壊れちまったのかぁ??呆気ねぇなぁ、星那よぉ!」



『肉体損傷、68%……《 悠久の華 》を再起動。『 創造犀星 』を再起動、成功。肉体を即座に再生、最適化。

 ……完了。〈 ■■能力 〉の起動……失敗。』



 機械的な話し方で声を出しながら……否。テレパシーを発しながら星那が起き上がると、能力を使って目も当てられないほどにボロボロになっていた肉体がみるみるうちに元の美しい華奢な姿へと再生していき、閉じていたその眼を開いた。その眼は虚ろで感情が一切読み取れない眼をしていたが、その眼からはなんとも格の違う神聖さが滲み出ていた。



「発声、問題なし。無制約者より " 神座(かむくら) " へ『 ■■■■■■ 』の起動を申請。…………5分間のみ一部の使用を許可。『 ■■■■■■ 』を起動、速やかに対象の無力化を実行。」



「………………んな馬鹿なことがあっかよ……」



 そう呟いたオルクスがみたのは藍色の長い髪が金髪に変わり果て、3対6枚の白い大きな翼を広げた神々しい星那の姿――そう、まさしく星那が未来視で()()()()だった。



「『 ■■■■■■ 』の起動を確認。……完了。完全顕現可能想定時刻、約5分間。

 対象:深淵の支配者(アビス・ルーラー)を認識。即座に制圧行動を実行。」



 無表情のまま静謐な声色で " 無制約者 " はそう言い放ち、宣言通りオルクスへと攻撃を仕掛けた。


 攻撃の内容は至ってシンプル。ただの " エネルギーレーザー " だ。ただし、その数は1本や2本ではない。それぞれの翼に1つずつレーザーを放つエネルギー体である球体を配置している為、数は6本。



「レーザー…………っつー事はよォ、そりゃ光と対して変わりねぇ速度ってぇ事じゃねぇか!」



 オルクスはやけくそ気味にそう叫んだ後、どうするかも考える暇もないという直感に従って本能のままに()()()()()()()()

 オルクスは感じていた。圧倒的な緊張感、圧倒的なまでの存在としての格の差というものを。そして同時に、星那であるとは到底言い難い目の前の熾天使や神とでも称せるような見た目をしている星那をせめて元に戻さないといけないとも感じていた。

 

 そんなオルクスが取った攻撃態勢はシンプルなものだった。《 災厄(パンドラ)の継承(・インヘリタンス) 》による自己強化を今できる最大まで行い、《 深淵の支配者(アビス・ルーラー) 》の『 深淵の手(アビス・グリップ) 』を発動して自らの両の手をそれの真っ黒な靄で染め上げ、拳を握りしめて殴りつけんとして凄まじいまでの気迫を放ちながら地を蹴る。



 " 無制約者 " は大きな翼を全て身体を包むようにして自然に動かした後、一気に広げてそのレーザーを一斉にオルクスに向かって照射した。ただし、馬鹿正直にオルクスに放った訳ではなく、その1本1本に緻密な計算が織り込まれているかの如く的確にオルクスの逃げ道を5本のレーザーで妨害しながら本命の1本のレーザーで仕留めようとしていた。



「ご丁寧に退路と逃げ道を塞いでくれやがって……」



 小さくオルクスはボヤきながら右手で拳を握って自らの身体を焼き貫かんとする1本のレーザーに向けて受け止めた。レーザーの圧倒的な威力を相殺するようにしながら押されそうになりながらも1歩ずつゆっくりと前に進んでいく。



「上等だってんだよクソが!」



 雄叫びを上げるように声を上げたオルクスはレーザーを相殺していない左手でも拳を握り、『 深淵の手(アビス・グリップ) 』 を纏わせたまま力任せに " 無制約者 " に向かってその拳を放つ。

 距離はまだ5mは離れていたが、オルクスの放った拳は絶大な威力を発していることは拳によって押し出された空気の塊に驚く " 無制約者 " の様子から見て取れた。





急展開ですがついて来れていますでしょうか?

多忙故更新が疎らでおっそいのはどうかご容赦願いたく……

これからも遅筆ですが頑張って執筆していきますのでどうか楽しみにして頂けると嬉しいです。

更新情報などに関しましては私のX(旧Twitter)にてお知らせしたりしておりますのでよければフォローしてください。



最後に一言だけ。

まったく、序盤特有の力に振り回される主人公だったり戦闘だったりめっかわキャラのキレ描写は最高だぜっ!!!!

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