7 平行線、衝突する世界
星那 vs オルクスの続きになります。
序盤なのでそこまで激しい戦闘はさせるつもりなかったのに二話使ったことに驚いてます。やはり内なる戦闘狂の血が騒いでいるのかもしれません
「星那よぉ、相変わらず手前の技は凄まじい威力だなおい」
「あんたがそれを言うか」
ぼんやりと上空を見上げ、互いの技が衝突し合い、爆発した後の余波と爆風に服と髪を激しく靡かせながらオルクスは言い、同じようにぶつかり合った技の行く末を見るため上空を見上げていた私も、巫女服のスカートを左手で抑え、日本刀を持つ右手をおでこの辺りまで上げて片目を瞑り、オルクスの呑気な言葉にお互い様であろうという意味を込めて言葉を返す。
「いんや、あれは俺の力じゃねぇよ。手前の技に含まれてた微弱な別の権能に俺の技に法則が与えられちまった。
んま、だからあの爆発をこの至近距離で互いに受けずに済んだんだけどな」
オルクスは突然真面目な顔でそう言ったと思えば、互いに爆発を至近距離で受けなくてよかったなとでも言うように笑った。
「冗談じゃないわよ。何回も言うけど、此処は私の領域なの。自分の領域下でも無いくせにあまり好き勝手できると思わないでよね」
ぷくっと頬を少し膨らませて不服な態度を示しながら、私はオルクスに対して言葉を紡ぐ。
「まあまあ、良いじゃねぇの。それに、まだまだこんなもんじゃねぇぞ!」
オルクスは右手に黒い瘴気で形成されたような蛇の形をしたモノを纏わせながら不敵に笑う。
「ふふっ、それはこっちも同じよ!」
オルクスに応えるように私が威勢よく言い放つと、『 雪月風花 』によって私の周囲をバチバチと紫電が覆い始める。
「――――」
一閃。互いの拳と刃が激しくぶつかり合い、本来生まれるはずのない火花を散らしながら衝撃に耐える肉体の強度を上昇させ続けることで生じる力に耐えきれなくなった地面は徐々に小さなクレーターを造っていく。
小さな隕石でも衝突したかのような衝撃波と小さなクレーターは、その直後にぶつかり合う力に耐えきれなくなった極限まで圧縮された空気が強引に反発することで大爆発を起こし、小さかったクレーターは家を2・3軒は丸ごと飲み込める程大きなものとなっていた。
私とオルクスはその至近距離での爆発に踏ん張りが効かなくなって数メートル吹き飛ばされた。
「ちっ……相打ちかよ……」
「さっきのは耐えきれなかった空気が悪いからノーカンでしょう?」
ゆっくりと立ち上がりながらボヤくオルクスに、私は感じた苛立ちを理不尽な理論を展開して強引に誤魔化す。
「手前……昔からたまにおかしな事言うよな」
不思議な奴を見るような目でこちらを見ながらオルクスは言う。されどその顔は愉快そうな笑みを浮かべ、今度はリボルバーの銃口を私に向ける。
「失礼な。私はいつも正しいことしか言わないよ」
冗談交じりに言い返すと、向けられた銃口に突き刺すように私は日本刀の切っ先をオルクスに向ける。
一瞬目が合った後、私たちは阿吽の呼吸とも言えるタイミングで攻撃を放った。
オルクスが引き金を引き絞り放ったのはたった一発の弾丸。しかしそれにはオルクスの能力による権能が付与されている。
《 深淵災権 》の権能の1つである『 深淵の手 』。その魔手によって触れられた者は虚無の底へと引きずり込まれる。感じている恐怖心が大きければ大きいほどその権能の強さは増し、意識と肉体は切り離されていく。
『 深淵の手 』の発動中は、その権能を纏っている部分にどす黒い霧のような、はたまたモヤのようなものがかかる。本来ならば纏う対象は手だけだろうが、能力の解釈を広げたのか、弾丸に纏わせることに成功している。つまり、その権能が弾丸に適用されているという何よりの証明。
そして、そんな触れたらまずい攻撃に対して私がオルクスと同時に刀を振り下ろし放ったのは 〈 斬撃波 〉だ。
これに関してはオルクスほど直接的に能力が関わっている訳では無い。〈 斬撃波 〉は簡単に言ってしまえばただ刀を振り下ろしただけの芸当だ。勿論、ただ振り下ろしただけと言ってもその速度や正確性は神の領域に近い化け物じみた技量である事に変わりは無いが。
音速を超える速度で、かつ正確に、ただ真っ直ぐ空気を切り裂く。それが私の〈 斬撃波 〉の正体。異次元の速度で正確に高さの数値であるy座標を切り裂かれた空間は、一瞬遅れて指向性を得る。そして、得た方向に向かってひたすらに同じy座標を切り裂いていく。
もっと具体的に言えば、地面のy座標を0、刀を振り下ろし始める最初の地点であるy座標を100としよう。0〜100までのy座標は刀によって正確に切り裂かれる。その後、遅れて刀が切り裂いた方向にy座標が指向性を持ち、その方向に向かって0〜100のy座標を例外なく切り裂いていく。
ふむ……もっと分かりやすく言えば〈 亜空切断 〉というものに近いかもしれない。
オルクスの『 深淵の手 』は多少なりとも能力を減衰させる。故に私は〈 斬撃波 〉を放ったが、正解だった。
弾丸と〈 斬撃波 〉はぶつかり、空間の断裂に権能が抗おうとする。しかし、空間が切り裂かれているのだから、空間に依存した存在である以上その断裂には逆らうことなど出来はせず、まるで元からその形状であったかのように真っ二つに弾丸は割れて転がり落ちる。
「流石にこの程度の身体強化で放つ〈 斬撃波 〉だと相打ちで消えるか……」
「……能力の攻撃に対して間接的な能力の使用で相殺できてるだけ十分だろ!」
私は冷静に分析しながら悔しそうな声を出す。全盛期の力に比べれば多少の強化でしかないとはいえ、今できる身体強化の半分は強化していたという状況で放った〈 斬撃波 〉が相殺に収まったという事実はあまり信じたくないものであった。
しかし、だ。オルクスからしてみれば巫山戯るなと声を荒らげて言いたくなるような惨状であった。自身の得意とする能力戦において、同程度に強いと思っていた相手が自分の使った直接的な能力に対して間接的な能力使用で相殺されてしまったのだ。しかも、そのほとんどはただの技術で。それに加えて「この程度の身体強化」という言葉。これがオルクスの逆鱗に触れるのには十分だった。
「そうかそうか、分かったぞ。星那よぉ、手前もっかい転生待ちにしてやんよ」
ピキピキと効果音が鳴りそうな程、額に血管を浮かび上がらせながら低い声色でオルクスが私に言う。
握られていたリボルバーはいつの間にか消えており、空いた両手には先程の銃弾よりもずっと禍々しい黒色をした霧のようなオーラを纏っていたことから、本当に私を殺しに来ているというのがひしひしと伝わってくる。
「上等よ。こっちこそあんたをもう1回転生待ちまで追い込んでやるわ!」
内心、「何故オルクスはここまで怒っているのだろうか?」と疑問に思いながらも、私はその思考を放棄して威勢よくオルクスの殺害予告とも言える発言に同じようにして言葉を返す。
「もう、余計な言葉は要らねぇな?」
「えぇ。必要無いわ」
互いに互いの思考をある程度理解しているが故か、静かに一言ずつ互いに言葉を交わすとその口を閉ざす。
そして、私とオルクスの戦闘は更に激化した。
オルクスが動き、私がそれに対処する。そんな互いの攻撃を相殺する作業がひたすらに続いていくかに思われたが、それは突然終わりを迎えた。このままでは埒が明かないと考えたオルクスが、遂に現時点での本気と言える出力での能力使用を解禁したのだ。
「埒が明かねぇな。…………『 深淵展開 』」
小さくオルクスが呟くと、度重なる相殺の衝撃波に耐えかねて廃墟のような惨状となっていた周辺の景色が一気に何も無い真っ暗な空間へと変わった。徐々に視界が戻ってくると、目の前には玉座のような少し高低差のある空間と、それを囲むようにそびえ立っている禍々しくも巨大な6つの門。そして玉座の前に立っている圧倒的な威圧感を放つオルクスが居た。
『 深淵展開 』は、オルクスが自らの心象風景を能力を利用して具現化し、相手と自分をその中に閉じ込めて能力の命中率を大幅に向上させたり、能力の影響を受けさせやすくするした自身の領域。この名称は人によって違うが、使用できるのは上澄みの中の更に上澄みである能力者に限られ、領域内に映す自らの心象風景を明確にイメージできる想像力を持つことが必須条件。まさに自らの心象風景と能力を最大限利用した能力者の奥の手と言える。
これを使ったからには決して軽くない消耗を覚悟しなければならない上に、自分が完全に有利な状況であることを考慮して必ず勝利しなければならないという自分に対する約束事でもある。
そして……この領域は練度と精度が高いものほど結界、固有結界とも呼ばれ、固有結界ともなればそれすなわち使用者そのものの所持する"世界"とも言える。
「…………結界か」
私はオルクスが本気で仕留めに来ている事を改めて実感し、自らも同じように結界を使うことを覚悟する。
「『 ⬛︎⬛︎展開』 …………っ!?」
" ソレ "を使おうとしたその瞬間、とてつもない頭痛に襲われ、私はその場で頭を抑えてうずくまった。
オルクスがそんな隙を見逃す訳もなく、一瞬で私の眼前まで迫ってきたと思えば、私の顎の辺りを思い切り蹴り上げた。頭痛でそれどころでは無かった私はその蹴りをモロに受け、軽く数十メートルは吹き飛ばされて空間を囲む禍々しい門に衝突して止まった。
「なん……で……?」
どうして展開できない?そんな疑問が私の頭を駆け巡り、思考が逡巡する。僅か1秒にも満たない間に何周もその問いに思考を巡らせ、その答えを導き出した。
「……『 千変展開 』」
蹴り上げられた顎を優しく撫でながら既に完治したことを確認すると、わざとらしくフラフラとしながらゆっくり立ち上がり、小さく呟く。
瞬間、真っ暗なオルクスの領域が塗り替えれるようにして私の周辺から後方にかけて、奇妙な心象風景が映し出される。
足元には水面、私の右側は満天の星空、左側は眩い太陽の光と雲ひとつない青空、そしてその中間に位置する真上にはそれぞれの空に調和するように夕暮れの空が広がっていた。まるで、この地球の1日の空を表したかのように。
「…………は?何しやがったンだ?」
オルクスは素っ頓狂な声を出しながら私に問う。自分が私に浴びせた蹴りが相当効いたように見えたのだろう。フラフラの私が何かしてくると思わなかったのか、相当驚いている。
「何って、あんたと同じように自分の結界を展開しただけだよ?」
フラフラとしていた体を落ち着かせ、安定した立ち姿で澄ましたような笑みを浮かべた顔を見せながら淡々と驚くオルクスに告げる。
この結界はただの結界ではなく、固有結界だ。固有結界同士ならば想像力の投影が完璧な者の方が強くなる。ただし、固有結界同士ならば、だ。固有結界を結界や領域で対抗しようとしても絶対に不可能なのだ。それほどまでに固有結界とそれ以外との差は大きい。
私たち巫女はもとより結界術は能力関係なく得意とする分野であることもあるだろう。
「はァ……?結界内に無理やり結界を展開したってのかよ?滅茶苦茶じゃねぇか」
「…………?何を今更。そもそも、私たちの存在自体が滅茶苦茶なの、理解してる?」
毒気が抜かれたように力なく言い放つオルクスに、私は首を傾げながら言葉を紡ぐ。
「そりゃごもっともだな。あぁ……もうやる気無くなっちまった。締めにすんぞ」
退屈そうにオルクスが手を降参するようにプラプラと振りながらそう言い放つと、私の眼前に広がっていた真っ暗な領域が消え去った。
その瞬間に私の領域がオルクスの消えた領域の空間を埋めるように広がったが、オルクスに戦う意思が無いことを確認した瞬間に私も領域を解除した為、全体に広がった全ての時間帯の空は消え去り元の雪月花の景色が私とオルクスの眼前に広がった。
「ちっ、また負けか」
空を見上げるオルクスの、その自分にしか聞こえない程度の大きさの声による呟きが零れる。
「ん?なんてー?」
「なンでもねぇよ」
私は単純に聞こえなかった為にオルクスに問うたが、オルクスは舌打ちをしながら不機嫌そうに誤魔化した。
いかがでしたか?
半ば強制的に終わらせた感じが出てしまって申し訳ないのですが、この調子で書いているとずっと戦闘させているだけでかなりの話数使ってしまいそうだったので......
ガチの戦闘はまだその時ではない......(万〇獅子感)
星那たちの転生が完了し、ガチ戦闘となるほどに勢力争いまで発展すれば色んな子の戦闘描写をお見せできると思うのでどうか下積み期間とでも思ってお付き合いいただければなと思います




