9 ERROR
オルクスとの戦闘は1話か2話くらいで終わらせるつもりだったんですけど、思ったより筆が進んじゃって増えちゃいました☆
戦闘書くのが大好きなのでお許しくださいな
" 無制約者 " はただただ困惑していた。
『何故、世界の理から外れた存在である自分が、借り物の器とはいえここまで手こずっているのだろうか?』
『何故、目の前のこの男は空気を拳で押し出すなどという人間離れした芸当ができるのだろう?』
『万能たる器にせっかく宿ったというのに、ここでそれも終わりになるのだろうか?』
様々な疑問が " 無制約者 " の中に生じ、それはコンピュータに存在するはずのない変数を生み出す。
" 感情 " が本来欠如して存在しないはずのものに、たった今 " 感情 " が芽生えようとしている。
その感情は………… " 苛立ち " そして " 怒り " 。
演算結果で最適と判断した行動を取るだけでは目の前の男には勝てない、と。そう学習してしまった。
感情という不確定要素を手にした " 無制約者 " が人間という不確定要素の集合体のような生物を理解し、その力さえも自らの物にしようという " 強欲 " さが芽生えた瞬間だった。
「驚いたかよ、カミサマモドキの紛い物」
オルクスは虚勢を張るように威勢よく言い放ち、間髪入れずに『 深淵の手 』を纏った拳をひたすらに打ち込んだ。
「損傷、56%……5……8%…………ゆ……るさ…………ない……」
" 無制約者 " は虚ろな顔で怪我の酷い身体が悲鳴を上げるように膝から崩れ落ちながら芽生えたばかりの " 感情 " を吐露する。
「許さないだぁ?んなもん、俺だってそうだってんだよクソが。星那の身体を奪いやがって。手前如きが簡単に手ェ出していい存在じゃあねぇんだよ」
さっさと出て行きやがれ!と言い放ちながらオルクスは右の拳を固めて " 無制約者 " の核のある鳩尾を思いきり『 深淵の手 』で殴りつける。
「っ…………がっ……」
" 無制約者 " が殴られた衝撃と核が傷ついたことによる痛みに思わず苦しむように嗚咽を漏らす。
しかし、オルクスの右腕を左手で掴み、最期の抵抗と言わんばかりに右手を空に向かって伸ばす。
「手前……何して…………んなっ……!?」
虚ろな顔のままにその行動に出た " 無制約者 " にオルクスは疑問を表しながら導かれるようにその右手に沿って空を見上げる。
その視線の先には1つの光り輝く球体。全てを照らさんとする星の光。 擬似恒星とでも言おうか。
「貴方はここで一緒に消えていただきます」
「はっ……お断りだっつの」
断りつつもオルクスはこのどうしようもない状況に少し久々の絶望を感じていた。
右腕を引き剥がそうとしても強い力に抑え込まれて中々抜け出せない。
どうしたものか、と考えているうちに擬似恒星が輝きを増し、2人を眩い光で包んでいく。
2人を包んだ光は擬似恒星から放たれた " 陽光 " だった。光だけでとてつもない圧力を加えていた。まるで重力がそこだけ千倍にでもなったかのように。
そして、オルクスは未だに右腕を離させて " 陽光 " から逃れようともがいていた。そこでオルクスが行ったのは『 深淵の手 』を腕まで纏い、力と能力の勢いを削いでなんとか逃れるというものだった。
結果はなんとか成功。" 先の一方的な殴打によって相当限界に近かった " 無制約者 " にはもはや右腕を握る力を強めるだけの余裕が無かったようだった。
「…………感情というのは……少しばかり変数が多すぎます」
そんな捨て台詞を吐き捨てながら、 " 無制約者 " は目を閉じた。
「……………あれ、私何して……」
" 陽光 " は消え去り、熾天使、或いは神を象っていた様相と3対6枚の翼が淡い光を放ちながら透明化するように消滅する。
" 無制約者 " が存在する権限を失い、星那が意識を取り戻したのだ。
***
『はーーーい、ただの語り部ちゃんですっ☆
てな感じで、星那ちゃんは意識を取り戻したのでしたぁ〜!ん?なんだって? " 星那の呼び方統一しろ? " そんなのなんだっていいじゃないの!その時呼びたい呼び方で呼べばいーーの!
……さて、と。最初に私が言ってたこと、覚えてるかな? " 星那が見た仮定の未来を後で見せる " っていうやつ。星那が見た部分だけ、今から見せますわね』
今からお見せするのが、星那が見た仮定の未来ですわ。とくとご覧あれ?
「言いつけを守ることが出来ず申し訳ありません。つきましては、どうかこの首でお慈悲を賜りますよう……」
「まてまてまて!?」
本当に首を断とうと力を入れようとしたアルカナを私は慌てて止める。
言葉を発しながらアルカナの首に当てられている短刀を取り上げようとした瞬間――。
「あぁ、そのまま死ね!アルカナァ!!」
「…………やめてぇー!!」
一瞬のうちにアルカナの背後に気配もなく現れたオルクスは、星那の悲痛な叫びに聞く耳を持つことなくアルカナの首を手刀で粗雑に吹き飛ばした。
アルカナの頭が宙を舞い、その目に宿っていた光は地面に近づくごとに徐々に失われていく。ぐちゃっ、と柔らかいナマモノが落ちる不快な音が響き、星那とオルクスの鼓膜を振動させる。恐る恐る星那がその落ちた頭を見遣れば、長い髪が吹き飛ばされた部分から切り落とされていた。身体を見れば、首から上を失い、完全に力が抜けて前のめりに倒れた亡骸がある。頭部があった場所からは存在しない頭部に血液を巡らせようと耐えることなく血液が溢れ出し、今にも身体中全ての血液を送り込まんと溢れ出していた。
星那はアルカナの亡骸にゆっくりと近づき、地に力なく座り込んでその身体を優しく抱く。そして、ただただ泣き叫ぶ。
大切な者を失う痛みを、大切な物を失う痛みを、これまで何度も、何度も味わってきているはずなのに。とっくに枯れてしまったと思っていた涙が、とめどなく溢れ出す。これまでの幾度となく転生してきた人生の中で過ごしてきたアルカナとの思い出が走馬燈のように星那の脳内に流れる。一緒にご飯を食べたりお風呂に入ったり、なんでもない事を話しながら寝た平穏な日常。時に迫り来る敵に対して一緒に倒して乗り越えてきた日々。全てアルカナと共に生きてきた。
そのアルカナを失った痛みは、星那を絶望のどん底に突き落とすにはあまりにも簡単すぎた。
「あぁぁ……ああぁぁぁぁぁぁぁああぁ…………!!」
声にならない嗚咽と泣き声で泣き叫びながら、星那の精神はすり減っていく。
すり減った精神の中で、星那は考えた。もう一度アルカナの笑顔を見る為にはどうすればいいのだろう、と。
不意に、星那の精神世界に小さな1つの影が現れて――
「――ぜんぶぜんぶけして、もういっかいやりなおせばいいんだよ」
そう、提案した。
星那はもはやまともに思考できる状態ではなかった。故に、本能のままに、内に抱くただ1つの望みのままに、星那はその圧倒的なまでの力を解き放った。
「…… 『 赫焉たる神座 』発動」
その呟きと共に、星那の身体は眩い光を放ち始める。肉体は光を帯び、藍色の髪は金へと変色し、背には6対12枚の純白の翼が現れた。
「なんだ……ありゃ…………ヤベェな。
『 深淵展開』 !」
オルクスはあっという間に変貌した星那に驚きつつも、今までにない命の危機を感じてすぐさま自身の結界を使った。
「オルクス。御前は私の世界にはもう必要ない。
《 ■■■■ 》『 ■■ 』 " 神威展開 " 」
オルクスが結界を使用し、一瞬のうちに世界を暗黒に染めたが、星那が使用した結界によって一瞬でその心象風景は無数の星々の輝く宇宙へと塗り替えられた。
「我が大地で、我が空中で、我が生命で、我が世界で……貴様如きが容易くその生命を掴んだままで居られると思うな」
その静謐な声で無慈悲に言い放たれた言葉は、今まで星那の放った言葉の何よりも強く、憎悪の籠ったものだった。
オルクスはその言葉を、黙って聞いていることしか出来なかった。その身は聖なる炎で焼かれ続け、どこまでも広がる宇宙の中ではその身体を動かすことさえ叶わなかったのだから。
『 はーい、っていうのが、星那の見た仮定の未来。星那が見た断片的なものを、私が鮮明に描写したものだよ。どうやってやったのかって?それは企業秘密ってやつだよ☆
……さーて、これにて今回の私の役目は終了。ここからはまた星那の視点にもどりますわ。ではでは、皆様お元気で〜』
***
「やっと、意識が戻ったかよ?」
疲れ果てたようにオルクスがぼーっとしている星那に声をかける。
「あれ、オルクス。なんであんたがそんなボロボロなのさ…………って、あんた!アルカナを何処にやったのよ!」
まさか……と、最悪の未来を思い浮かべてみるみる顔を怒りに染めていき――
「――だーっ!殺してねぇよ。今は向こうの方で気絶してすやすや寝てんだろ」
勘弁してくれ、とでも言いたげなオルクスが降参するように力なく座り込んで手を挙げながら片手でアルカナが気絶している方向を指して示した。
というわけで9話でした!!
毎度毎度次回更新までかなりお待たせして申し訳ございませんm(_ _)m
のんびりペースではありますが引き続き更新して参りますのでどうぞよろしくお願いします!
楽しんで頂けていたら嬉しいです!
感想など良ければたくさん下さい()




