5 立てこもり
お待たせしました!5話です!
雪月花とそのメンバーの行方と状況は......!?どうぞお楽しみください!
あれ、そういえば――
「――他の『 雪月花 』の子達はどうしたの?ここに来るまでに1人も見かけなかったんだけど」
今更ながらに思い出した違和感を問うようにアルカナに言葉を投げかける。
「……え?私がここまで来た時は皆この街中に居ましたけど……?誰もいませんでしたか?」
アルカナは私の質問に目を丸くしながら答えた。
「え、うん……誰もいなかったけど……」
「そんなはずは……」
アルカナが落ち着きが無い様子でクルクルと小さく円を描くようにその場を歩くのを見て、私はアルカナが本気で焦っているのを感じた。
「一旦本部に行ってみよっか」
私は落ち着きを促すことも含めてそう提案する。
「……あっ、その可能性もありますね……!行きましょう……!」
アルカナははっとしたように私の顔を見ると、希望を見つけたように笑顔を浮かべて言った。
「そうと決まれば、出発〜!」
「おぉ〜!」
私がテンションを上げようと右手に拳を握って振り上げながらそう言うと、アルカナも同じようにしながら答えた。
小さい頃にいとこの子達と良くしていたコーレスだったなぁと懐かしい気持ちになっていた。
***
そんなこんなあって、私とアルカナは2人で歩きながら『 雪月花 』の本部である建物を目指して歩いた。
ちなみに本部の建物は " 星月邸 " へ向かう途中に横目で見た雲まで届くような高層ビルだ。あのビルや周辺のビルには重要な施設を始め、組織のメンバーなどが生活できる寮などが完備されている。……なんと温泉もある!!
「星那様」
そんなことを考えながら歩いていたら、アルカナが先程私と話していた時のような感情が丸出しの雰囲気からほとんど先程のような感情を表に出さない召使いの様な声色で私の名を呼んだ。
「ん……なんか騒がしいね。皆集まってるのかな?」
何があったんだろうか?そう考えながら私とアルカナが歩を進めていくと、本部の建物の入口にたむろしていたメンバーの中でも後ろの方に居た者が私たちの存在に気が付き、「あ、あなた様はぁ……!?」などと大袈裟な反応をしながら瞬時に地に額を着けて平服した。
ん……?平伏した……??
「……?…………あれってもしかしてアルカナ様か?」
「アルカナ様だよな、あの方は」
「だよな、でもあの隣にいる巫女服のモデルみたいな美人は誰だ?」
「アルカナ様が少し後ろを歩いてきたよな?しかも何のお咎めもないみたいだし……」
「でもアルカナ様って " 天影 " だろ?組織のNo.2で今のところ実質ボスみたいなとこあるだろ?」
「No.2が少し後ろを歩くってことはめちゃくちゃ身分が高い人ってことだろ……?」
「まさか…… " 天女 " が帰ってこられたのか……!?」
「ばか、焦りすぎだって。それじゃ漢字違うだろ? " 天如 " だろ」
平伏したメンバーの周囲に居た者達が一斉に此方を見てはアルカナに驚き、ひとしきり驚き終わったと思えば今度は私を見て何者かを考察し始める。
「えっ……と……?……なんで急に土下座……?
これってどういう状況なのかな?」
私がそう口を開くと、辺りはシーンとして誰も反応を示さなかった。
何故だろうと周りを見渡してみれば、ある者はアルカナが何も言わず私の傍で控えていることに驚いて呆然としており、ある者は私の容姿を見て固まり、ある者は私の声を聞いて固まっていた。
何故私を見て固まる……??
「……おい、者共。星那様がお前たちに " 何があったのか " とお聞きになっているのだ。早く質問に答えよ」
シーンと静まり返った状態がしばらく経っても変わらなかったからか、アルカナが痺れを切らしたように聞いたこともないような高圧的な口調で言った。
「はっ、はいっ……!
え、えーとですね……現在、本部の建物に " 災厄の深淵 " と思しき人物が侵入、そのまま立てこもっており手が付けられない状況でして……」
平伏していた者がバッと勢いよく立ち上がると、敬礼をしながら説明する。
「ふむ……さっき話してた懸念が現実になってたかぁ……」
「それで?奴は何を要求しているんです?」
私が困ったように呟いていると、アルカナが問う。
「それが…… " 滅尽の災華 " を出せ、と。その一点張りで相手の強さも圧倒的で我らにはどうしようもなく……」
オルクスが来たのに誰も殺されてもないし建物も傷一つついてない……?そんな事があるだろうか?
「一先ず、私が出向かないといけないみたいね。皆はここで待ってて」
" 滅尽の災華 " は私の二つ名だ。それを呼んでいる上に組織の者が沢山居たであろう本部に立てこもれるほどの力を持っているとなれば、ほぼ確実にオルクス本人だろう。なら、私が対応しないといけない。
「星那様……1人は危険では?」
アルカナが心配そうに私に声をかける。
「大丈夫。少なくともオルクスにはまだここを攻撃する意思は無いだろうから。今のうちにこの周辺10km以内から避難しておいて」
私はそう指示を出して本部の建物へと入り、エレベーターを使って最上階へと向かう。
「……よぉ、やっと来たか " 滅尽の災華 " 。待ちくたびれたぞ」
駆動音の静かなエレベーターの扉が開き、私が最上階のフロアに足を踏み入れて視線を正面に向ければ、そこには燃えるような真っ赤な短い髪をしたニヤリと邪悪な笑みを浮かべながら深紫の瞳を此方に真っ直ぐ向けて立っていた。
「久しぶりね、バーサーカー。目覚めて早々今世の生みの親を殺して今度は能力も完全な状態じゃないのに私の支配地に、しかも本部に乗り込んでくるとは随分な挨拶じゃないの」
災厄の深淵とも、オルクスとも言わず、能力に取り込まれて暴れ尽くす愚か者を示す言葉である " バーサーカー " という呼び方をして最大限の皮肉を表す。
「おーおー。そっちこそ随分とご挨拶じゃねぇの。大それた家系の巫女だかなんだか知らねぇがよ、神なんぞに従属していようとだーれも助けちゃくれねぇぞ?」
オルクスはただただ愉快そうに邪悪な笑みをさらに深めながら私に対して言葉を吐きつけた。
「さーて、それはどうでしょうね。うちの神様は常に私の家系を見守っているもの。神に見放された貴方達と違ってね」
オルクスの言葉に対して、私は「ふっ」と鼻で笑い飛ばしながら悪戯っぽい笑みを浮かべながら言葉を返す。
「ちっ……相変わらず手前には口では絶対勝てねぇな」
しばらくの間互いに笑みを向けあっていると、オルクスは笑みを仏頂面に変えて後頭部を片手で掻きながらため息を吐いた。
「何それ、別に口以外でも私は負けないけど?」
口ではという所になんとも言えない不快感を覚え、私は腰に手を当ててふんぞり返るようにしながら威厳を示すように言った。
「じゃあ試しに手合わせしてみっかよ?」
ふんぞり返る私にオルクスは何か面白いものでも見たかのように笑うと、私に提案した。
「ふーん?この私に、しかも私の支配域のこの地で勝てる気でいるんだ?」
私は少し前のめりになりながら上目遣いのような視線の向け方をしつつ人差し指をオルクスに真っ直ぐ向けて笑みを浮かべた。
「あぁ。全く負ける気がしねぇなぁ?」
オルクスは挑発的な笑みを私に向けると、煽るように言った。
「ふーん……?いいじゃないの、やってやるわ!」
私はその挑発に乗る形で手合わせを受理した。
転生直後にぶつかる渾沌、その行方はどうなるのか......?
6話をお待ちください!
新生活の忙しさに翻弄されながらですが執筆は続けていくつもりですので読んでいただいたり応援などいただけると励みになりますのでどうぞよろしくお願いいたします。




