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九十七、対話
「あなたが…龍我の式神?」
目の前に立つ異形の男性に、私はそう声をかけた。
『お前たちの言葉を使えば、そういうことになるな。』
淡々と、それでいて哀愁の漂う低い声で、そう返事が返ってきた。
今のところ、攻撃の意思は感じられない。
「龍我を…元の、人の姿に戻したいの。どうしたらいいか、教えてくれない?」
『それはできない。』
はっきりと、しっかりと、そう答えられた。
『戻ったら、またあいつは苦しむことになるだろう?』
男の問いかけを、私は否定することが出来なかった。
『1番頼りたい者たちが側にいない辛さ、好きな物を嫌いにならざるを得ない状況、あいつの抱えてきた物の重みが、お前に分かるか?』
語気を強めて、私を責める様にそう投げかけた。
「…分からないよ。」
『ならば引け。引けば手荒な真似は…。』
「でも!」
大きな声で言葉を遮り、一歩前に出る。
「このまま龍我が遠い存在になるのは、嫌だ。」
『それは、お前の都合だ。』
「そうだよ。私の都合。でも悪いけど、引き下がる気は無いから。」
覚悟を決めて手首の勾玉に触れ、陰陽師化する。
『人の話を聞く気は、無いと言うわけか。』
男が右腕を振りかざすと、血も凍りつきそうな冷たさの水が、大量に流れ込んできた。




