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九十五、滝の向こう
水が染み出す苔の生えた岩壁を伝い、狭い通路を抜け、水音の方へ歩く。
精神世界だから、詳しいことはよく分からないけれど、この狭い道を通るのに、自分の体が小さかったことはとても好都合だった。この狭さじゃ、年は私の方が上だけど雫ちゃんの身長でも恐らく入らない。せいぜい入ることができても、若葉ちゃんと仙太郎さんくらいだ。
そんなことを考えていると、突然手が滑り、触れていた岩壁の先が突然無くなった。
目が暗闇に慣れてきて、広い空間の奥で滝の様な物が流れているのが見える。
滝の向こうから、何かの気配がした。
そちら側に歩みを進めようとしたその時、滝の向こうから足音が聞こえた。
ーーカツッ、カツッ。
水のカーテンが左右に広がる。
私の目の前に現れたのは、鮮やかな青緑色の着物を羽織った、角と尾のある男性だった。




