九十三、咆哮
大雨、強風、雷。
その合間を縫うように、それが最も激しい場所へ向かって、高く高く昇っていく。
「っ…いた!あそこっ!!!」
思わず声を上げ、ぐねぐねと暴れ回る黒い影を指し示す。
ーーキィュウン!!!
この状態の龍我に、人の言葉が通じるのか否か。相変わらず悲しげな咆哮だけが、辺りに響き渡っていた。
龍我に少しずつ近づいてきたところで、ふと下を見下ろす。
「あれ…?」
「ど…どうしたんですか?」
「この雷…。」
ーー落ちる地域が、偏ってる。
一旦心を落ち着かせて、目を凝らす。
やたらと雷が近くに落ちている場所。学校の体育館、私たちが住んでいる家、龍我の父親たちが住んでいるアパート、そしてどこよりも雷が落ちる頻度が高い場所。
あいつが引っ越して来る前の、昔の家。
「…っ。」
「泣いて…ます。」
「え?」
「龍我さん…泣いてます。」
互いに互いの姿が視界に入る距離になり、こちらに気がついた龍我が威嚇して暴れ出す。
「っ…!」
『グッ…すぐ道を開くぞ!!!』
龍がそう言った数秒後、龍我の胴体付近に七色に光る歪んだ穴が現れる。
『うぉぉぉぉぉぉ!!!』
攻撃の合間を縫って、現れた穴に飛び込む。
離れないように雫ちゃんと繋いだ手が、穴に入る途中で解けていく。
「先輩っ!」
「雫ちゃんっ!!!」
七色の空間に私だけが吸い込まれる。
荒れた空模様と、雫ちゃんの左手がどんどん遠くなっていった。




