82/109
八十二、どうでもいいか
ーー走る。
走る。走る。走る。
山の上へ向かって、ただひたすらに走る。
「っはぁっ…!はぁっ…っ。」
体力が尽きて、倒れるように道路のアスファルトに膝をつく。
あがって来た息が落ち着いてくると、ごうごうと水の落ちる音が耳に入ってきた。
音の方に顔を向けると、道路の頂上にあるダムが目に入る。ゆっくりと体を起こし、とぼとぼと歩みを進める。
ダムの淵を歩き、丁度真ん中のあたりで腰をおろす。
月明かりに照らされて、流れる水がキラキラと輝いて見えた。
「はぁ…。」
『委ねろ。』
「え…?」
どこからか、突然声が聞こえた。
夢でよく聞いていた、あの声が。
「っ…いたっ!!!」
いつの間にやら、俺を追いかけてきたらしい千晶が、肩で息をしながら叫んだ。
「千晶?…っうおっ!?」
「っ!?龍我!!!」
何かに引きずられるように、体が後ろ側に倒れていく。
背中が冷たい。
水が俺を、後ろに引っ張っているみたいだ。
バランスを崩して、背中から水の中に落ちていく。
スローモーションのように遠くなって見える星空に向かい、俺は自嘲気味の笑みを浮かべた。
あぁ…別にいいか。こんな人生。
もう…。
ーーどうでもいいや…。




