七十九、理不尽の先
俺の父親は一時期、中学校バスケ部のコーチをしていた。
父親は良くも悪くも、思ったことをそのまま口に出してしまう人だ。そのせいで、気が合う仲間は出来やすかったが、同時に敵をつくり易い傾向もあった。
それをはっきりと認識したのは、高校に入ってから。
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「おいおいおい!そんな簡単なこともできねーのか?おめーは親父から何を教わったんだっ?」
下卑た笑いを顔に貼り付けた、偉そうなおっさん。
そう。こいつはいわゆる、お父さん《・・・・》と気が合わなかった奴。
ボールを掴む手に、思わず力が入る。
恨みを子供に晴らすなんて滑稽だ。
そんな使い古しの常套句は、こんな人間性の奴の心に、1ミリの影響だって及ぼさない。
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現実には、理不尽な事が山程ある。
自分に被害が及ぶのを恐れて、俺を助けようなんて奴は1人もいないし、こいつは調子にのって人格の否定まで始まる始末。
訴えたところで、面倒ごとを起こしたくない学校側は恐らく、なんだかんだと理由をつけて『和解』とかいう、薄っぺらい2文字で全てを無かったことにするだろう。
何より、そんなことのために貴重なバスケの時間を失いたくない。
泣き寝入りするのが、結局1番被害が少なくて済む。
でも、おかしいなぁ。
俺のやりたいことって…こんなことだったっけ?
ベッドの上、尋ねる様にボールを見つめても、当然何も答えは返ってこない。
次第にボールの輪郭がぼやける。
力尽きる様に、俺は意識を手放した。




