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七十八、静寂
部活終了後の、自分以外誰もいなくなった体育館。
今日の鍵当番である俺は、少しだけ1人になりたくて、まだ男の汗の匂いが漂うコートで、ボールと戯れる。
ダムダムというドリブルの音だけが広い空間に響き渡り、どうしようもない安心感と不安感が同時に押し寄せてくる。
「っ…。」
ボールを頭上に掲げ、スリーポイントラインからシュートを放つ。
ーーポスッ。
リングに当たることなくゴールへ吸い込まれたボールは、スローモーションの様に落下し床を転がった。
その様を見て、まるで今の自分の様だと思った俺は、自意識過剰なんだろうか…。
どこにも引っかかることなく、空回りした想いが、一瞬にしてあっさりと擦り抜けていく。
「…俺の言葉は…誰にも届かない。」
俺は楯本龍我。
高校2年生。バスケ部。
色々あって、今は親と離れ、父親の実家で生活している。
そして俺は…。
ーーバスケが、嫌いになりそうだ。




