七十、規格外
『やれやれ。これは少しばかり骨が折れそうですね。』
目の前に現れた火を吐く大蛇を一瞥し、才蔵はゆらりと右手を持ち上げた。
『…狐火。』
才蔵がボソリとそう呟くと、彼の手の上に、大蛇の吐く赤い炎とは対照的な青白い炎が浮かび上がった。浮かび上がったその炎を、才蔵は顔色を変えることなく大蛇に何度も投げつける。
『っ…!?ギャァァァアアア!!!!!!』
投げつけられた狐火が大蛇を包み込み、中きら苦しげな叫び声が聞こえる。
『本当は同種の能力を持つ妖怪を攻撃するのは少々気が引けるのですがね。…お嬢様の命がありますので、大人しくして頂きます。…?』
『っ…クククククク。…アッハハハハハハ!!!!!』
大蛇を包んでいた青白い炎が内側から赤い炎へと変化し、高笑いと共に大蛇が才蔵に向けて炎を吐き出した。
『!?っ…グッ…!』
「才蔵!」
『ハハハハハハ!!!馬鹿め。狐ごときの炎で私に勝てる訳なかろう!!!格の差を考えろ小僧!!!』
『ふっ…。その割には、私を仕留めることはできていないようですが?』
『ほざけ!』
自分の炎で攻撃によるダメージを軽減させたらしい才蔵が、余裕そうな笑みをを浮かべて炎の通った軌跡上に立っていた。
「ふん…。ボロボロの状態でそないな台詞言うても、強がりにしか聞こえへんぞ。」
『ふむ。才賀家のお嬢様。これを。』
嫌味を無視した挙句、お返しのようにさらりと嫌味ったらしく丁寧にお嬢様呼ばわりしながら、才蔵はウチに小さな小瓶を放り投げた。
「…これは?」
『お嬢様から預かってきた、怨念収集用の陰陽師道具の改良型です。蓋を外せば大抵の妖怪や怨霊は、怨念の発生源ごとその小瓶に吸い込むことができます。ただどうも…、この大蛇は規格外のようで…っと!』
大蛇が吐く炎を避けながら、才蔵とウチは会話を続ける。
「規格外ぃ?」
『普段使い用を先ほど試してみたのですが、あの大蛇…、見かけによらず強敵のようで小瓶に吸収されないのですよ。今あなたに手渡した方で、試して頂けますか?』
「なんや。自分で出来ひんのか。」
『釈ですが、私がそれを使うと自分まで吸い込まれてしまいますので。私が注意を引き付けている間に、さっさと終わらせて下さい。』
余裕そうな笑みを浮かべていた才蔵が、真顔で少しだけ悔しそうに呟いた。
『成る程なぁ。それでウチの同行が必要やったんか!』
『…お嬢様、本当に余計なものばかり作ってくれる…。』
紡は気をよくした私は、ニヤリと口角を上げた。
『…はぁ。間違っても、私を吸い込まないで下さいよ!』
『手が滑らんかったらなぁ!』




