六十、夢現
「っ…う…。」
陰陽神社の一室で横になっていた私は、痛みに顔を歪めながら、ゆっくりと寝返りをうった。
火傷の範囲が昨晩より広がっており、額に冷や汗が滲む。
拳心さんたち3人は修行のため、神社の建物から離れたところに行っており、恭士さんと仙太郎さんも新入りたちへの陰陽術指導のため、外に出ていた。
このまま溶けて、無くなってしまうんじゃないか。
朦朧とする頭でそんなことを考えていると、目の前の障子がすっと開いた。
「っ…!千晶、お前!」
視界に入ってきたのは、寝ている若葉ちゃんを抱えた拳心さんと茉恋さんだった。
拳心さんは慌てて若葉ちゃんを隣の部屋へ運び、茉恋さんが私の額に手を当てた。
「っ…。」
「っ…、ひどい熱…。拳心君、そっちにある私のバックにタオルと水分入ってるから、頼める?」
「うっす。」
茉恋さんは持ってきて貰ったタオルで私の汗を拭き、声をかけた。
「千晶ちゃん、意識ある?きついだろうけど、起きてこれ飲めないかな?」
「う…は…い。」
茉恋さんに上半身を起こして貰い、スポーツドリンクを喉の奥へ流し込む。
「っ…はぁ。ありがとう…ございます。」
力なく笑う。
そのタイミングで、再び障子がすっと開かれた。
「千晶、具合はどう…や…って、お前!」
障子を開いた人物、恭士さんは目を見開いた。
「恭士君。来てすぐのとこ悪いけど、千晶ちゃんの側についててあげて。」
茉恋さんが有無を言わせない強い口調で言った。
「っ…分かった。」
「とりあえず最初はあたしが氷水持ってくるから、戻ってきたら定期的に千晶ちゃんのタオル変えてあげて。仙太郎さんにはあたしから事情説明しておくから。」
茉恋さんはそう言って立ち上がった。
「茉恋さんと拳心は…。」
恭士さんが部屋を出ようとする茉恋さんに確認しようとすると、彼女は障子の前で一瞬立ち止まった。
「決まってるさ。あたしたちは、陰陽戦術を完成させてくる。千晶ちゃんを、早く救える可能性があるなら。」
茉恋さんは振り返ることなくそう告げ、部屋の外へと走り出した。




