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四十七、整理
「…まだいたんすか?」
拝殿から少し離れた場所の外にある廊下に腰掛け、夜空をぼんやりと眺めていると、拳心がそう声をかけて来た。
「あぁ。なんちゅうか…家帰っても寝れる気せぇへんねん。帰んのやめたわ。」
「千晶が俺に聞いてきたっすよ。」
拳心の口から出た名前に、肩がビクリと反応する。
「恭士さん、怒ってましたかって。こっち戻って来てからあんた、千晶と口きいてないっしょ。」
そう言われて、俺は押し黙った。
怒っているのか。
正直、分からない。
最近感じているこのもやもやは、一体何なのか。
怒っているのだとしたら、一体誰に、何に怒っているのか。
「俺がとやかく言うことじゃ無いかもしんないっすけど、もう一回ちゃんと気持ちの整理した方がいいと思うっすよ。あんたも、あいつも。」
冷たい風が、ひゅうひゅうと音をたてて通り抜けて行く。
「…せやな。」
"もう一回"という拳心の言葉が、やけにしっくりきた。拳心は俺のその言葉を聞くと、“おやすみなさい"と首だけで軽く会釈して、いつものガニ股で部屋へ帰っていった。




