四十四、顔に出る
「ふぁあ…。」
仲間たちのほとんどが各々の自宅に帰った頃、陰陽神社の一室で私は布団に横になり、3cmほど開けた障子の隙間から夜半の月を眺めていた。
何かすごく懐かしい夢を見た気もするが、内容が全く思い出せない。考えている内に、すっかり眠気も覚めてしまった。
「夜って…こんなに明るかったっけ?…あっ。」
独り言を呟いた直後、急に視界が広がり、見慣れた坊主頭が顔を出した。
「おう。起きてたか。」
拳心さんは涼しい顔をしてずかずかと中に入ると、私の頭の方へ胡座をかいて座った。
女子が寝ている部屋にあまりにも堂々と、悪びれもせずに入ってくる辺りは相変わらずである。
「家に帰らなかったんですか?」
私がそう尋ねると、
「まぁな。結局お前は家に帰れない訳だし、誰かついていようぜって話になって。」
今日は俺が当番になったんだ、と言って拳心さんは障子を3cmほど残して閉めた。
こう言った細かな気遣いはできるのに、何故デリカシーにかける行動をちょいちょいするのだろう。謎である。
「なんか…皆さん過保護過ぎませんか?」
苦笑してそう言った。正直、心配してもらえることは嬉しいが、ぞろぞろといられても申し訳ない気持ちになるので、皆帰っていいと言っていたのだが。
「馬鹿かてめぇ。気がつかねぇとでも思ってんの?」
苦笑した私に、荒い言葉遣いの言葉がぐさりと刺さった。
「これでも、ここにいる連中の中じゃ1番長くお前と顔見知りしてる。ましてやすぐ顔に感情出るお前が、隠し事なんてできる訳ねぇだろ。」
「…。」
私はただ黙り込んだ。実を言うと、何故かは分からないが、火傷の痕が前日より一回り大きくなっていた。気のせいかもしれないと思い、他の場所も確認してみたが、全て同様に一回り大きくなっていた。痛みも徐々に増してくるので、とりあえず市販の痛み止めを飲んで誤魔化している。
あの状況で織雅が、万が一自分に逃げられた時の別プランとして、呪いをかけた線は十分にあった。調子に乗って、抜かりないと言った織雅の言葉を否定した自分にチョップをお見舞いしてやりたくなった。
「やっぱり…顔に出るんですかね。」
「バレバレだ。猿でも分かる。」
「ははは。」
「ついでに言うと、さっきまで生見さんと才賀さんも心配して外にいたぞ。」
「へっ?」
慌てて枕元にあったスマホの画面をつけると、2:06という表示が出ていた。
「こんな時間なのに…。」
何やら申し訳ないような嬉しいような、複雑な気持ちになった。




