三十七、ずいずいずっころばし
「どういうこと…?これは…!?」
延暦寺に着いた時、僕は驚きで目を丸くしていた。
何故なら、普段こっそり通っていたこの山のシンボルとも言うべき寺が、全壊していたからだ。
あまりのショックに言葉を失っていると、瓦礫から少し離れた藪から、ゆらゆらと青白い火の玉が現れた。
「っ…!?うわぁぁぁ!え…えっ!?でででででたーっ!!!おばけ!?」
突然目の前に現れた存在にパニックを起こし、慌てて逃げる。
しかし、走っても走っても距離が縮まらない。不安定な飛び方をしているのに、むしろどんどん近づいている気がする。
それどころか、幻聴まで聴こえてきた。
♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜
幼い頃、お婆ちゃんが歌っているのを良く聴いた気がする。
♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪〜♪〜
走っている間、ずっと聴こえてくるこの歌は…一体なんだっけ?
♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜
焦って走り出した割には、意外と考えごとをする余裕があることに内心驚きつつ、草木をかき分けていく。
♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪♪〜♪
「うわっ!」
少しひらけた場所にでた瞬間、小石につまづいて地面に顔を強打した。
「いったたた…。?」
鼻の頭を押さえて顔を上げると、視線の先に何かが見えた。目を凝らして見えた何か。それは、青白い顔をした人間と、それに群がるネズミの群れだった。
「ひっ…!」
恐怖で後ずさると、それに気がついたらしい蒼い目の鼠がギョロリとこちらを向いた。
『だ〜あ〜れ?』
先ほど聴こえていた幻聴の最後のフレーズと、鼠の言葉が重なった。




