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三十五、心当たり
「茉恋さん。私のこと、陰陽神社に連れてって貰えませんか?」
「え?」
恭士さんがいなくなった宿の一室、布団の上で上半身を起こしたままの状態で、私はぽつりとそう呟いた。
茉恋さんが、私の顔を心配そうにそっと覗き込む。
「千晶ちゃん。別に皆と同じ場所にいるのまでだめと言われた訳じゃないんだ。恭士君の言い方も悪かったし、そんな気にしなくても…。」
「そんなんじゃ無いです。」
私はやや強い口調でそう言い、布団の端をギュッと握った。
「恭士さん、あんな言い方でしたけど、私の体調気遣ってくれてのことだと思うんです。つい、大丈夫って言って前線復帰しようとしたから…正直あのくらいはっきり『来るな』って言って貰えて安心しました。だから…。」
ぐっと顔を上げて茉恋に視線を向けた。
「私は、今の私にできることをしたいんです!」
「…どういうこと?」
私の表情を見て何かを察した茉恋さんは、真剣な表情でそう尋ねてきた。
「延暦寺で会った…織雅の言っていた陰陽師団体『沙羅双樹。…私、その名前に心当たりがあります。」
茉恋さんの息を呑む音が、静かな部屋の中で聞こえた。




