三十、二つに一つ
「そんな…こと…。」
「グズグズしている暇は無いよ。君がここで決断しないと、自動的に後者の選択肢を選ぶことになる。さっきの女の子が君の仲間を連れてやってくるだろうからね。」
左頬を冷や汗が伝う。
どうやら自分の目の前にいる人物は、相当な切れ者らしい。
「あなた…たち悪いね。」
思わず苦笑した。
「抜かりが無いと言って欲しいね。」
この状況をどうやって脱するか思考を巡らせていた、その時だった。
ーーバリバリッ。
「ん?」
突然、部屋のどこかで何かが壊れる音がした。
「おかしいな。こんなに早く来るとは思えないんだけど…。」
織雅が不思議そうに首を傾げ、音のした方へ振り向いた。
その方向からは、何かが削れるようなカリカリという音がしていた。
この音…もしかして…。
自分がいる場所に1つ心当たりができた。
「っ…ははっ。」
「…何がおかしいの。」
小さく笑い声をあげた私を、織雅はちらりと睨みつけた。
「いや、確かにあなた頭いいんだろうけど、抜かりなくは無いなって思って。」
ーーバリバリバリッ!
先ほどより大きな音が、同じ箇所から聞こえた。
「私たちを止めるつもりなら、私たちが祓って周ってるもののことも、もう少し調べた方が良かったんじゃない?」
そう言った直後、一段と大きな音をたてて、部屋の端から床が崩れ始めた。
「なっ…!?」
崩れた床の下から現れたのは、目をギラつかせた鼠の大群。
「どうします?」
床が崩れた箇所から、広がるように部屋が崩壊していく。入り口と思しき場所が瓦礫で塞がり、部屋からの脱出が困難になる。
「いくらあなたでも、この鼠を止めることはできませんよ。」
何故なら、この鼠たちが怨霊の取り憑いた式神と融合しているならば、それは『子』を式神とする選ばれた陰陽師にしか祓うことができないのだから。
「君なら止められるっていうの?」
「止められはしないですけど…、自由にしてくれたらここから脱出するくらいはできると思いますよ。」
話ている間にも部屋の崩壊と鼠の強襲は続いており、倒れた行灯の火が畳に燃え移る。
「考えてる暇なんか無い。私と脱出するか、心中するか。2つに1つです。」
私は得意げに、にやりと笑みを浮かべた。




