二十七、生きる屍
「まず、一つ目の質問について。僕が何者なのか…。それは…。」
端正な顔立ちの男が、相変わらずの無表情で私の顎をつかんだまま、グッと自分の顔を近づけた。
「…っ!…え?」
距離の余りの近さに身が強張り、思わず息を止める。
しかし数秒後、ある違和感に気がつく。
細菌でも無い限り、命あるものならば当たり前のように行っている活動。これだけ顔を近づけられているのに、頬に擦りもしない呼気。
この人…息してない…!?
「っ…!?あなた…何で…!?」
驚愕の色に染まる私の顔が、冷え切った男の目に反射して映る。
「気がついたかな?そう、僕は生きた人間じゃあない。」
無表情の男の瞳の中で、行燈の火の赤色がゆらゆらと揺れる。
「陰陽師集団、沙羅双樹の1人、朝烏織雅。」
男は私からすっと己の顔と手を離し、凍るような冷たい瞳で見下ろした。
「呪術で命を繋ぎ止めている、本来、既にこの世にあるはずのない存在。」
織雅と名乗るその男は俯き、己の胸元に左手をゆっくりと移動させ、祈るように拳を握りしめた。
「探しているんだ。」
織雅は白魚のような、透き通る白さの指で、己が着ている水色のストライプ柄が入ったワイシャツのボタンに手をかける。
一つ一つ、丁寧にボタンが外されていくその奥。
薄暗いこの部屋の中でも、はっきりと分かる。
「誰かに奪われてしまった…僕の心臓をね。」
彼が自らの手で晒した左胸には、握り拳大の歪な空洞が、ポッカリと口を開けていたのだった。




