二十五、ラーメン
「千晶と若葉からまだ何も連絡来てへんか?」
現在、午後6時30分。『子』の手がかりが見つからず、とりあえず夕食を食べようということで立ち寄ったラーメン店で、俺は3度目の同じ質問をした。
「さっきから言ってんじゃないすか。何も来てないっすよ。」
拳心が半ば呆れて、俺にそう答える。
目の前にある麺を啜るが、正直味がどうとか考える余裕がない。
「大方、若葉の聖地巡礼とやらに振り回されているのだろう。そんなに心配ならば、こちら側から迎えにでも行けばいい。」
「拝観時間はもう終わってるよね。一応あたしらがいる場所はLINEで伝えてたんだけど、既読だけで反応がないんだよ。あんまり長い間ほっといたら、補導されかねないし、迎えに行く?」
「あぁ。若葉は年相応やからしゃーないとしても、千晶もチビやからなぁ。そろそろ、大人が探しに行かんと…。」
ーーガチャンッ。
会計に向かおうとテーブルから離れようとしたその時、厨房の奥で陶器が割れる様な音がした。
「うわあっ!ご…ごめんなさい!」
「またお前かよ!一体何杯パァにすれば気が済むんだ!」
「ご…ごめん…なさい。」
店員と客の間を隔てている暖簾の隙間からは、アルバイトの人間と思しき若い男が、中年の店員に叱られている様子が見え隠れしていた。
中年の店員はどこか諦めたような表情で、目の前で頭を下げている男を見ている。
「…ドジっ子なのかな?彼。」
「どうでもええやろ。他人の事情に下手に手ェ出さんと、とっとと出るで。」
紡さんのその言葉で、他のメンバーも止まっていた足を再び動かし、会計を済ませてラーメン店を後にしようとしたその時、店の引き戸が音を立てた乱暴に開けられた。
店にいた全ての人間が一体何事かと音の方を振り返ると、ツインテールの小学生、若葉が息を荒げて立っていた。
ただしいつもと違い、その童顔に眼鏡はかけられていない。
「っ…ま…まずいことになった!」
「若葉!?どないした?一旦落ち着き…って、千晶は?一緒にいたんとちゃうんか?」
「マスターが…!」
「!」
落ち着かせようと若葉の背をさすると、青ざめた顔で息も絶え絶えになりながら、眼鏡を外した時特有の言葉遣いで、続きを口にした。
「マスターが…敵の手に落ちた!」




