二十三、桃色の絨毯
「わぁっ!すごい…!」
私たちは今、春の山道を歩いていた。満開の時期を終えた桜の花びらが風で舞い散り、出来上がった桃色の絨毯にはしゃぎまくっている。
「はしゃぎ過ぎや。落ち着いとらんとまた転ぶで。」
「またって何ですか!いくらテンション上がっててもそう2度も3度も…ってうわっ!?」
スルンッという効果音が聞こえた気がした。案の定、花弁で足を滑らせて転んだ。因みに、これが本日6回目。
「あ〜ぁ…。言わんこっちゃない。」
恭士さんに、呆れた顔でため息をつかれた。
「痛ってて…。」
地面にぶつけたお尻をさする。
けど、そんな痛みがどうでも良くなるくらい桜の絨毯が綺麗なのも確かで、人の目が無く、衛生的に大丈夫なら横になってこの坂を転がってみたいかもなんて思ってしまう。
「いい加減学習せぇ。あほぅ。」
そう言いながら、尻もちをついた状態の私に恭士さんが手を差し伸べてきた。
「あっ…えっと…。ありがとう…ございます。」
「おう。」
気遣いが感じられる絶妙な力加減で私の腕を引き、立ち上がらせると、恭さんと私の目が一瞬目あった。でも、すぐにふいっとそらされてしまう。
なんか…ちょっと恥ずかしくなった。
お尻に付いた花弁を払いながら、私たち陰陽師の一行は比叡山へ続く道路を歩いていく。
「仙太郎さん!私どうしても聖地巡礼を成し遂げたいのでありますが、何かことが起こるまで観光してもよろしいでしょうか?」
仙太郎さんは一瞬、苛つきを隠しきれなかったらしく眉をピクリと動かした。
怒ってる怒ってる…。
「これだけの大人数で固まって歩いては、悪目立ちもする。行きたければ行け。」
「わっ!ありがとうございますです!」
「ただし!」
「へ?」
大はしゃぎして、比叡山にある寺院、延暦寺へ駆けて行こうとした若葉ちゃんは、仙太郎さんの珍しい大声にピタリと立ち止まった。
「陰陽戦術を会得済みの誰かを同伴させろ。何かあった時のために、1人ではうろつくな。」
「っ…はいっ!」
若葉ちゃんは、目をキラキラさせて元気よく返事をしたのだった。
なんだかんだ、仙太郎さんも寛容になってきたらしい。




