十九、勘繰り
「こっちや。」
私は恭士さんと女性に連れられて、神社から少し離れた場所に建っている彼の実家へ招き入れられた。
恭士さんのことを、お兄ちゃん《・・・・・》と呼んだ女性は、生見風香さん。恭士さんと3つ歳の離れた妹であり、恭士さんが実家を留守にしている間、宮司の代理をしていたらしい。
恭士さんの実家の外観は、趣きのある古民家といった雰囲気で、名のある陰陽師の家系なだけあるなぁと私に感じさせるには十分過ぎるくらいとても大きな家だった。
「そんな緊張せんといて!」
とりあえず客間に通され、家のあまりの豪華さに、座布団の上でガチガチに緊張していた私の前に、緑茶の入った湯飲みが置かれた。
「あ…ありがとうございます。」
「はははっ。だから緊張せんでええって。」
準備をするからお茶でも飲んで待っててやと恭士さんに言われ、初対面の風香さんと2人きりにされてしまった私は、いったい何を話せばいいのかと焦りながら、「頂きます。」と一言言って緑茶に口をつけた。
「あ、そうや。私一個聞きたいことあんねんけど…。」
怪しむような、値踏みする様な、期待する様な目で風香さんが私を見てきた。
「な…なんでしょうか?」
「あんたお兄ちゃんの何ー?」
聞かれるのではないかと思っていた言葉をそのまま言われ、危うく湯飲みを落としそうになった。
「わ…私はその…恭士さんの陰陽師仲間と言いますか!一度命を救われたと言いますか!」
「ふーん。」
変に慌ててしまい、まるで嘘をついているかの様になってしまった。いや…でも…ね?本当のことしか言っていないですから。うん。ホント。
目の奥が若干笑っていない風香さんの威圧感に恐怖していると、部屋の引き戸が開く音が聞こえた。
「千晶ー。準備できたで。」
「あ、はい。じゃ…じゃあ風香さん、失礼しますっ。」
逃げるように客間を後にし、恭士さんはその様子を不思議そうに見ていた。




