Sランク冒険者
「それではさっそく始めようか。せっかくだし、騎士団の訓練場を使おうじゃないか」
「場所はどこでもいいですよ、魔法が使えるわけじゃないんで狭くてもオッケーです」
どんな冒険者と決闘するんだろうか? まさかルリよりも弱いってことはないよな? 俺たちのパーティにルリがいるってことくらいは調べているはずだし、Aランクの最上位の冒険者だろうか。
「俺が戦うっていう冒険者はいったい誰なんですか?」
「まだ言ってなかったか。冒険者だったら誰もが知ってるような有名人だから期待しておけ」
有名人とかどうでもいいんですけど………。それよりも相手のランクが知りたいんだよな。まさかこんな決闘ご時にSランク冒険者が出てくることは無いだろうが。
「それでは俺自ら案内してやろう。行くぞ」
国王はなんかすごい乗り気だ。これはどういうことだ? 先ほどの発言からして娘を冒険者にはしたくないように見えたんだが……と言うことは俺たちが絶対に勝てないような相手を用意している可能性が…………。
「なんだか妙にテンションが高くないですか? これはきっと何かありますよ」
「私も同感ね。娘が心配なら冒険者になんてさせるはずないわ」
ユウナとテリアも何か怪しんでいる。ルリはというと、何やら考え込んでいる様子だ。
「誰でも知っているような冒険者だとすると、AランクもしくはSランク冒険者のはずだよ。それにランクが高いからと言って有名とは限らないからね。かなり絞ることはできるけど、今の段階では断定できないかな」
一生懸命相手の冒険者の心当たりを思い出してくれてたんだな。こういうときは頼りになるな。
訓練場へはすぐに着いた。城を出てすぐに大きい建物があり、その建物自体が騎士のためにある建物らしい。その中に入って、すぐの部屋がそうで思ってたよりもかなり広い。学校の体育館と同じかそれ以上の広さだ。
「着いたぞ、さっそく決闘してもらうがいいか?」
「大丈夫ですよ。俺は武器も使わないんで」
これは本気で戦ったほうがいいんだよな。娘をパーティに入れたくないはずだし、手を抜いて負けたほうが空気読めてるかも。
「センヤ、本気でやっちゃっていいわよ。国王の娘あパーティにいるって色々都合よさそうだし」
「確かに。センヤさん軽くぼこぼこにしてあげてください。あんまり必死だとそこが知れるんで涼しい顔で頑張ってくださいね」
ユウナの言い分もわかるけど、このパーティに入れるのは少し不安だ。ユウナあたりが無礼を働かないか心配でずっとはらはらしてなくちゃいけなくなる。それに、テリアは結構無茶なこと言ってくるよな。国王があれだけ自信がある冒険者なんだぞ。ただ勝つだけじゃなく、余裕で勝てって…………。まあ、それなりに頑張るけどさ。
「センヤならまず負けることはないとは思うけど、やばい相手だったら私が止めてあげるから安心してていいよ」
ルリが心強い。戦闘じゃないとこうも頼れる子なのか。
「まあ、心配することないと思うけどな。どんな奴が相手でも軽くひねってやるよ」
「その意気よ。頑張りなさい」
「できる限り余裕そうにですよ」
なんなんだテリアは……。ユウナのほうがまともに応援してくれてるんですけど……。
「それでは俺が今回の決闘を任せる冒険者に登場してもらおうか。おい、出てきていいぞ」
国王が訓練場の奥の部屋に向かってそう呼びかけた。
「これだけ勿体ぶっておいて、更衣室から登場って恥ずかしいですね」
なんか真っ白の鎧で全身を固めたイケメンが出てきた。で、誰なんだこいつは?
「えーと、この人は誰ですか?」
「何? 私のことを知らないというのか? それは世間汁図すぎるのではないかな」
何様なんだこいつは? 何がお前を知らないと世間知らずだ。こっちの二人を見てみるよ、キョトンとしてるぞ。てかやっぱり二人とも知らないんだな。
「あの人はまずいよ、センヤ。まさかこんな大物連れてきてるなんて」
どうやらルリは知っているようだ。しかもこの発言からしてルリよりも上なのは確実だな。
「そんなにすごいのかあいつは? ただのナルシストだろ」
「Sランク冒険者だよ。最近なったばかりで格付けは一番下だけど確かに知名度なら一番かも」
まさかのSランク…………。どんだけ娘を冒険者にしたくないんだよ。これはガチだ。だめなパパだ。これなんか買っちゃたら逆にまずそうな気しかしない。ここは穏便に済ませるためにそれなりに戦ってから負けることにしよう。すまん二人とも、期待に応えるのは無理そうだ。
「世間知らずな君のために自己紹介をしてあげようじゃないか。私の名はジェラ・スカール。あのスカール家の正式な跡取りにしてSランクの冒険者さ」
あのスカール家とか言われても知らんがな。さては上流階級のお坊ちゃんか。なんか無駄に態度があれだと思ったんだよな。それでさらに知名度が高くなってるんだな。うざいな。なんかぼこぼこにしてやりたくなってきた。それにしてもなんで冒険者なんてやってるんだろうなこいつは?
「なんで貴族の私が冒険者をって顔をしているな君。その疑問に答えてあげようじゃないか。目立てるからさ、私は天才でね。私は神からすべてをもらっているんだよ。そんな私からすれば冒険者だってちょろいもんさ。Sランク冒険者になった私は今までよりもさらに有名になったよ。そこは素直に感謝かな」
やばい、ものすごくうざい。殴りたい。あの憎たらしい顔面に渾身のパンチをお見舞いしてやりたい。
バンッ!!
俺たちが入ってきたドアが勢いよく開け放たれた。
「なんで私に知らせてくれなかったの? この人が勝ったら私は冒険者二なってもいいのよね? パパ」
今度は娘が出てきたーー。しかもすげぇかわいい。国王は金髪なのにこの子は薄い緑だ。なんだか触れてはいけないにおいがする。まあ、母親の遺伝だろう。きっとそうだ。それにしてもかわいい。これは大事にしてしまう国王の気持ちもわからなくはないな。
「本当だとも、このセンヤが勝つことができたらお前をパーティに入れてもらうことになっている」
「やったー。これで私も冒険者になれるのね。絶対勝ってね」
うわー、抱き着いてきて上目遣いはずるいだろ。初対面の人にこんなことやったらだめだ。日頃から訓練している俺じゃなかったらこのまま連れて行かれるとこだったぞ。
「お前は死刑だ。…………あ、間違えた。ではそろそろ始めるぞ」
いきなり死刑宣告しておいて、なかったことにしたぞ。
「ほんとよ、負けたら死刑だから」
満面の笑みで何を言ってるんだよ。可愛いなまったく。発言はあれだけど…………。しょうがないこの子のためにあのナルシストを軽くボコるとするか。




