◆第四話『異様なレア種』
落ちついて話をしたい。
ということでマキナチームもログハウスで朝食をともにすることになった。
幾度かの拡張を経ていまや食堂は大広間と化している。
10人までならゆったりとした空間を維持できるほどだ。
「ごめんねルナたん、わたしたちまで~」
「気にしなくていいよ。うちは誰かさんのせいで大所帯だし備蓄はあるからね」
料理を運び終えたルナが隣に座ると、にこりと含みのある笑みを向けてきた。
……彼女らと過ごすようになってから決めたことがある。
こういうときは堂々と構えていよう、と。
「やっぱルナたんの料理は最高だよ」
「本当に。お嫁さんに欲しいぐらいだわ……!」
「わかる。うちも男だったら絶対ルナを狙ってただろうな~」
マキナに続いてレインとザーラが絶賛の声をあげる。
当のルナはというと素直に受け取りながらも困ったように笑っていた。
「褒めてもなにもでないよ。そもそも朝は簡単なものしか出してないから誰が作ってもそんなに変わらないと思うけどね」
「そんなことはないだろ。なぁ、ラピス」
アッシュはとくに意図せず逆隣のラピスに同意を求める。
と、不満そうな顔で迎えられてしまった。
「そこでわたしに振るのは悪意を感じるんだけど」
「たまたまだ」
「もう……まぁ、ルナが作るのが1番って点には同意ね」
うんうんとミルクを飲んでいたクララも頷いている。
もはや全会一致の意見だ。
さすがのルナも全員からとあっては逃れられなかったらしい。
居心地が悪そうにしつつも、嬉しそうに照れていた。
「まったくみんなして……とりあえず、ボクのことはもういいから先に食べちゃって」
「はーい!」
クララとマキナの元気な声を皮切りに朝食を再開。その美味さと賑やかな空気で朝食の時間はあっという間に過ぎた。
食器も片づけて一息ついたところで、アッシュは早速とばかりに話を切りだす。
「で、さっきの話だが……」
「見たこともないレア種だったかしら。具体的にはどんな感じだったの?」
ラピスも気になっていたらしい。
戦闘中に近い目つきでそう話を継いでくれた。
ユインが代表して説明をしはじめる。
「ちょうど成人男性のふたまわりほど大きな人型の魔術師なんですが……」
「それだけなら特段珍しくはなさそうだけどね」
ルナが首を傾げながら口にした。
実際、人型のレア種は幾度も見ているのでその疑問はおかしくない。
ユインが「はい」と頷いたのち、話を続ける。
「ただ、空気が異様と言いますか見るからに戦ってはいけない感じがしていたんです」
「漠然としてるな」
アッシュはそう思ったことを口にした。
責める意図はなかったが、そうとられたらしい。
ユインの後ろに立っていたマキナが、ユインに寄りかかる恰好で援護とばかりに口を挟んでくる。
「ユインちゃんが言ってるのは本当だよ。本能的にやばいって感じるぐらい!」
「ってことは大型か?」
「一応ミルマに訊いてみたんだけど中型だって。あ、あと名前も教えてもらったよ。ザルボアっていうみたい!」
中型でも強い存在感を放つレア種は存在する。
おそらくはその類のものに出くわしたのだろう。
とはいえ、マキナたちもいまや8等級の挑戦者たちだ。
その彼女らに〝やばい〟と感じさせるレア種となれば相当な強さであることは間違いないだろう。
「ああ、あと後ろに大きな像が3つあったかな」
「いかにも祀ってるって感じだったわ」
ザーラとレインがそう付け足してきた。
話を聞くなり、クララが難しそうな顔で「ん~っ」と唸りはじめる。
「なんとなくだけど、その像になにかあるのかも?」
「可能性はありそうだ。まぁ実際に見てみないと判断できないが……」
これ以上のことは対峙するほかない。
アッシュは改めてユインたちに確認する。
「話してくれたってことは俺たちも一緒に戦っていいのか?」
「はい、ここに来るまでに相談して決めていました」
ユインに続いて彼女らのチーム全員が頷いていた。
その後、マキナがあははと乾いた笑みを浮かべる。
「たぶんだけど、うちらの手に負える相手じゃなさそうだからね。あ、でも戦利品については半々で……」
「そこは平等でいいぜ。むしろレア準備は発見者の取り分が多めでもいいぐらいだしな」
「さすがアシュたん話がわかるぅっ!」
飛び切りの笑顔にウインクと投げキッスも飛ばしくるマキナ。その調子の良い姿に皆が苦笑する中、アッシュはラピスとルナ、クララに目線を向ける。
「みんなもいいか?」
「わたしは構わないわ」
「彼女たちにはお世話になってるからね。力になれるなら喜んで」
「はいはーい、あたしも!」
「レオは……まぁ二つ返事で賛成してくれるだろ。ってことで俺たちのほうは問題ない」
雑な扱いかもしれないが、レオのことだ。
信頼していたの一言でむしろ喜んでくれるに違いない。
「ありがとうございます、みなさん」
「一応ヴァネッサには話を通しておいてくれるか? ユインたちは純粋なソレイユのチームだからな」
「わかりました」
「ま、利益が想像以上ならこっちもなにかしら返すつもりだ」
「お気遣いありがとうございます」
ジュラル島においてレア種の情報は貴重な財産だ。
チーム外に漏らして反感を買うなんてことは珍しくない。
ユインたちは大事な友人だ。
揉め事に発展しないよう配慮するのは当然だった。
「ひとまず……そうだな。そっちも帰ったばかりだろうし、決行は明後日ぐらいで問題ないか?」
「こちらはそれで問題ありません」
ユインたちの同意を得て、正式に合同討伐が決定した。
直後、マキナが力強く拳を突き上げながら声を張り上げる。
「じゃあ当日はよろしくお願いしまーすっ」





