またね
実際に見た夢です
どうしてそこへ行ったのかは覚えていない
気がつけば僕は三十階建ての建物にいた
エレベーターに乗り十五階で降りる
扉の先には子供が四人ほどいる
小さなワンルームの部屋があった
部屋の中には大人が二人
見知らぬ僕を訝しげな目で見つめている
その中に一人だけやたらと
部屋に入った僕に僕に絡んでくる女の子がいた
年は15.6歳ほどで色白で黒い髪はボブくらいの長髪
子供がよく着ているようなセーターに毛糸の帽子
腕にはウサギのぬいぐるみを抱えていた
女の子は僕に何かを話しかけ続けていたが
僕はほとんど相手にしなかった
その子はどうやら目が見えないらしかった
それから僕は再びエレベーターに乗った
次に目を覚ましたとき
僕は高校のような場所で授業を受けていた
家に帰りテレビをつける
するとある番組が目に留まった
盲目の女の子が夢であった誰かに
再び会いたいと話していた
彼女の話す内容にはどこか覚えがあった
そうだ、これは僕も見た夢だ
僕は彼女に会いに行くことにした
そこにいたのはあのときの女の子だった
色白で、華奢な体。
ボブくらいの黒髪にぬいぐるみの代わりに白杖
彼女の周りには僕と同じように
夢を見たという人たちが集まっていた
けれど彼女は僕と会った瞬間
すぐにわかったようだった
僕があの人なのだと
この子があの子なのだと
それから僕たちは何度か会う約束をした。
何度も、何度も、何度も。
いろいろな場所へ出かけた
たくさん話をして一緒に笑った
気がつけば僕たちは恋人になっていた
やがて結婚し子供が生まれた
二人で子供を育て気づけば白髪が増えていた
あんなに長かった人生も
振り返ればあっという間だった
とてもいい人生だった
本当にいい人生だったと思う
そんなことを考えていたとき
ふと彼女が僕に話しかけた
「こんな夢みたいなことが体験できてよかった」
彼女は笑っていた
「もしこの先どちらか一人が死んでも。この夢が覚めてしまってもまた会いましょう」
そう言って彼女は笑った
その笑顔がとても綺麗だった
僕は泣いた
どうして泣いているのか自分でもわからなかった
ただ泣いていた
泣いて、泣いて、泣いて
涙が枯れてしまってなお、ずっと泣いていた
何かを失うことが悲しかったのか
それとも何かを与えてもらったことが嬉しかったのか
今となってはもうわからない
ただ夢が終わる直前に
彼女が「またね」と言った気がした。
そして目が覚めた
そこにはいつもの天井があった
彼女はいなかった
子供たちも僕たちが暮らした家も
そんなものはもうどこにもなかった
すべて夢だった
途方もなく長い長い人生を
一晩の夢で見ただけだった
それなのに僕の胸には
言葉にできない何かが残っていた
僕は布団の中でしばらく天井を見つめていた
そして小さく呟いた
「おはよう」
誰に向けた言葉なのか自分でもわからなかった
僕は目を閉じてもう一度眠ることにした
また会える気がしたから




