自由な女
風になる
今日の昼前、世界に終わりが来るって
そんな与太話がテレビから流れてきた
そんな与太話を真に受けて
あたしは今日、会社を無断で休んだ
最後なら好きに生きるかーと思ったんだ
最後にしたいことはなんだろうと
そう考えて一つだけ思い当たった
愛車のバイクで海岸沿いをぶっ飛ばしてみたい
そして一番高い海辺の崖で最後を見る
そうと決まれば話は早かった
お気に入りの服に着替えて愛車に乗り込み
エンジンを始動する
目的地へ向かう途中
病院服を着た女の子がヨタヨタと
歩いているのを見かけた
気になってバイクを止める
「どこに行きたいの?私が連れてってやるよ」
「海に、行きたいです」
弱々しい言葉とは裏腹に
その目には確かな光が灯っていた
「そりゃ奇遇だな」
そう答えた私はその子を海まで連れていった
降ろしてやる時に
「最後くらい、好きに生きなよ」
と柄にもないことを言った
そのまま走り出したけど
なんだかすごく恥ずかしくなった
海岸沿いに入りアクセルを吹かした
もちろん速度はマックスで海岸線をぶち抜いていく
あたしは今風になってる
そんなことを思いながら崖へ向かった
ギリギリで辿り着いた海沿いの崖には
帽子を被り、椅子に座っている先客がいた
帽子を目深に被った初老の男性だった
彼の座る椅子の隣に、椅子がもう一脚あった
二人分あるように見えたが座っているのは一人だ
「あんたも最後を見に来たの?」
「これは驚いたな」
老人はビクッと肩を跳ねさせた後、私を見て笑った
「わしにも最後の迎えが来たのかと思ったよ」
「迎えは私にも来るよ。いや私たちか」
「最後が君みたいな綺麗な子と一緒だと知られたら、あの世で婆さんに叱られてしまうな」
「席、外そうか?」
「いやいいさ。最後なんだから、椅子に座りなさい」
そう促されあたしは椅子に座った
二人で空を見上げる
遠くから大きな隕石が近づいてくる
「君は今日楽しく過ごせたかい?」
老人が尋ねた
あたしは少しだけ考えて笑った
「あたしは最後に人助けしたんだ」
そして空を覆い尽くす隕石を見上げる
「あの世で天国にでも連れてってもらうさ」




