夏の海と私たち
小山梨沙:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な大学3年生。天真爛漫でとても優しいが、考え込みやすい性格。「ダジャレ、ビール、相撲」の3つが好きで中身がおっさんだと言われることも。すぐに彼氏ができてしまう。(ENFJ)
大森和也:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な男子大学生。淡々とした性格で人によって態度を変えず、正直に物事を言う。クールに見えるが、実はあまりクールではない。梨沙に好意を持つ。(ISTP)
笹岡明音:小学校から大学まで一緒の梨沙の親友。常に冷静で落ち着いている。すぐに彼氏ができる梨沙のことを心配している。(INTJ)
倉本七海:梨沙と明音と大学時代に出会い、仲良くなった。ムードメーカーで明るい性格。すぐに彼氏ができる梨沙のことを羨ましく思っている。(ESFP)
川越雄太:和也の友達。梨沙とは高校が同じで、高校時代に片思いをしていた。盛り上げ役だが、周囲への気遣いができる性格。梨沙への気持ちがまだ残っている。(ESFJ)
松田有希:梨沙と同じクラスの友達。気が利くお姉さん体質で、サバサバしている性格。和也と小中学校が同じだった。(ISTJ)
「おおー!ついに来たぞ!海だー!!!」
太陽の日差しが照り付けてキラキラ光る海。これまでかと思うほどに青い空。まるで漫画の主人公のように空に拳を突き上げている雄太。私たちはそんな彼の後ろに立って苦笑しながら海を眺めている…という状況だ。
「今年の夏もあっついな…。」
隣に立っている和也くんはそう言いながらうちわを仰いでいる。
「久しぶりに海見た。天気もいいから、オーシャンブルーがよく映えるね。」
そう話す有希ちゃんは、つばの広い麦わら帽子とサングラスをかけて腕には日焼け防止の腕カバーを付けている。日焼け対策万端だ。
「よし、チームゆかりの諸君!今から今日の計画、伝えるぜ。」
雄太は後ろを振り返るやいなや、私たちに一切れの紙を見せた。
「海を1日エンジョイプラン…!?」
私が読み上げると、雄太は大きく頷いて話を続ける。
「やることその1、ビーチバレーボール!やることその2、海で泳ぐ!やることその3、バーベキュー!」
「私、泳ぐのはパス。だけど…他の2つは最高!」
有希ちゃんが意外にも目を輝かせている。和也くんをちらっと見ると、彼の嬉しそうな横顔が目に入った。
「俺も泳ぐのは疲れるからいいかな。ビーチバレーとバーベキューだけで良いんじゃない?」
「うん、2つで良いと思うよ!楽しそう!」
私も賛成すると、雄太が私を見つめてニコッと笑った。
「何だよ、梨沙がそんなに言うなら2つにするしかないな。」
「…は?」
キョトンとしている私を有希ちゃんがまた肘で突いてくる。すると和也くんが小さく咳払いをした。
「バレーボール…借りてこようか。俺行ってくるよ。」
「待って、かずくん。私も行く。2人はここで待ってて、ね?」
有希ちゃんが和也くんの後に付いていく。私はお礼を言って、それから雄太のことを睨んだ。
「ちょっと!何さっきの発言。高校の時からだけど、たまーに変なこと言ってくるのやめてよね。」
「変?何が変なんだよ。」
雄太が口を尖らせたので、私は手を腰に当てた。
「梨沙が言うなら…とか、梨沙のことなら…とか。そういう発言のことだよ。」
「良いじゃん、別に。だって、俺…。」
そこまで言って彼は突然口をつぐんだ。私が首を傾げると、「おーい!こっち来て!」と有希ちゃんの声が聞こえてきた。下を向くと、バレーボールを持っている和也くんと両手を広げている有希ちゃんの姿が見える。
「お…おう!今行くからちょっと待ってろよ!」
雄太が光の速さで下に降りたので、私も慌てて後に続いた。
ビーチバレーはチーム戦で行われた。私と雄太、有希ちゃんと和也くん。今度は私と有希ちゃん、和也くんと雄太。そして最後は…有希ちゃんと雄太、私と和也くんのチームになった。
「はあはあ…結構疲れるね。休憩挟んでもすごい体力消耗する…。」
私が肩で息をしていると、和也くんが額の汗を腕で拭った。
「いいよ、休んでても。俺がレシーブするから。」
「いやでも…。」
「よっしゃ、行くぞ!よーいスタート!」
雄太の声が聞こえたと思いきや、すぐにボールが飛んできた。和也くんはすぐに落下点に入り、綺麗にレシーブをする。有希ちゃんの動きも俊敏でボールを淡々と返してくる。
「スマッシュ、行っちゃうぞ!」
雄太が華奢な身体を軽々しく浮かばせ、ボールを強く叩いた。私が慌てて走り出すと、いつの間にか和也くんが腕を伸ばしてボールを拾った。
「うわ!和也、すげえな!さっきまでと動きが全然違うじゃないか!」
「ほんとね。かずくん、バレーボール得意だったっけ?」
ネット越しに雄大と有希ちゃんが目を丸くしてる。私も驚いて和也くんを見ると、彼は身体について砂を軽くほろって無表情のまま。ただ彼の横顔がいつもよりも真剣な表情に見えてならなかった。
それからビーチバレーを続けて30分。結局、和也くんの勢いは止まらず私たちのチームが勝利した。雄太は砂浜に両膝をついて「くっそー!」と悔しがっている。
「和也くん…ありがとね。なんか、私は何にもしてなかった気がする。8割くらいは和也くんが返してたし。」
「いいよ。楽しかったから。」
和也くんはそう言いながらも肩で息をしている。
「さあさあ、疲労も溜まってお腹も減ったことだし、バーベキューしに行こうよ。雄太くん、場所分かる?」
有希ちゃんがペットボトルのスポーツ飲料を一気に飲み干す。すると雄太は力強く頷いた。
「もちろん!すぐ近くだからもう行こうぜ!俺についてこい。」
「おー雄太くん。かっこいいこと言うじゃん。」
からかう有希ちゃんを雄太が軽く睨んだ。私が2人のやり取りを見て笑うと、有希ちゃんがいきなり私の腕を引っ張った。
「ほら梨沙ちゃん、雄太くんと一緒に歩きなよ。私がかずくんの相手するから。」
「え、ちょっとなんで…。」
その時だった。和也くんが突然有希ちゃんの手を掴んだ。彼はゆっくりと彼女の手を私の腕から離した。
「な…何?どうした、かずくん。」
「梨沙と俺で行くのはダメなの?」
直球な言葉を投げかける彼に有希ちゃんは口をつぐんだ。
「おーい!3人で何コソコソ話してんだよ。もう行くぞ!」
遠くの方から雄太が叫んでいる。私は有希ちゃんと和也くんを交互に見ることしかできない。
「いや、そういうわけじゃないけど。私なりに空気読んでもいいかなって思っただけ。」
有希ちゃんはそう言うと、雄太に手を振って走って行った。
「空気…読む?」
私が首を傾げていると、和也くんが小さくため息をついた。
「相変わらず有希はお節介だな…まあいいや。行こう。」
「そう…なんだ。有希ちゃんはお姉さんって感じだもんね。」
有希ちゃんの後ろ姿を見ながら私は話を続ける。
「有希ちゃんはさ、チームに欠かせない存在だよね。割とサバサバしてるけど、勘が鋭くて周りがよく見れてるし、物事をうまく回せる人だと思う。あとはとにかく…美人で目の保養になるし!」
思わず1人で語ってしまい、ハッとして和也くんを見る。彼は真顔で「なるほどね。」と呟いた。
「梨沙は上手いよ。人の良いところ、見つけるの。」
「え…そうかな?」
私が目を丸くすると、彼はいつものようにそんな驚くかと言わんばかりの表情をしている。
「そうだよ。前も俺の良いところ言ったじゃん。副リーダー決める時に。」
「あー!あの時か。なんかもう懐かしく感じちゃう。」
「俺、普通に嬉しかったよ。他の人から自分の良いところ聞くなんてなかったし。」
和也くんが優しく微笑みかけている。私の心臓の鼓動がまた速くなるのを感じてしまう。私が目を反らすと、彼は話を続けた。
「それが梨沙の長所なんじゃない?人の良いところを見つけること。」
「私の…長所?」
彼は頷きながら大きなあくびをした。それを見て、私は苦笑する。
「もう!あくびするタイミングじゃないでしょ。せっかく良いムードだったのに。」
「良いムード?そうだった?」
やっぱり和也くんは和也くんだ。惚れ直したと思った自分が馬鹿だったかもしれない。私が少し歩くスピードを速めると、「ちょっと急に何?」と彼は少し慌てた。
ようやくバーベキュー会場に到着。人で賑わっていたが、奇跡的に1つのテーブルが空いた。
「美味そう!がっつり肉食べようぜ!もう注文していいか?」
「うん。雄太に任せるわ。」
和也くんが安定に快諾したので、私は慌てて間に入る。
「ちょっと待った!雄太に注文させたらメニューの端から端まで全部頼んじゃうよ。高校の同窓会の時もそうだったんだから。」
「それはダメだ、私が決める。」
有希ちゃんが雄太からメニューを取り上げ、まるで全てをスキャンするようにじーっと眺める。
「何だよ梨沙。やっぱり俺のことはお見通しなんだな。」
雄太がなぜか嬉しそうにしているので、私は彼の足を軽く蹴った。有希ちゃんが手を挙げて「すみません、
注文お願いしまーす!」と店員さんを呼ぶ。
「梨沙はピーマン苦手じゃなかったっけ?修学旅行の時にさ、ピーマンの肉詰め残してて、俺に全部流れてきたよな。」
「えーなんでそんなこと覚えてるの?まあ…ピーマンは未だに苦手だけどね。」
雄太と私が話していると、有希ちゃんが注文を済まして私たちを眺めていた。
「なんか2人、めっちゃ仲いいね。」
「高校からの知り合いだからじゃない?」
和也くんがようやく会話に入ってきた。ちらっと彼を見ても、いつも通りのポーカーフェイスだ。
「俺たち3年間同じクラスだったし、席も近くになること多かったし、よく話してたからな。」
「よくって言うか…そこそこ話してたって感じだって。」
私が雄太の言葉を訂正すると、有希ちゃんがニヤニヤながらこっちを見ているのに気付いた。私が眉間にシワを寄せると、彼女はすぐに私から目を離す。するとその時、店員さんがやって来た。
「お待たせしました!こちら、野菜とお肉もりもりセットです!」
「うわーすげえ!早速焼いちゃうぞ!」
雄太がトングを持って、豪快に肉を敷き詰めていく。
「待って。野菜もちゃんと入れないと。」
有希ちゃんもトングを持って野菜を放り込む。肉が焼けるいい音と肉が焼けるいい匂い。私たちは目を輝かせて網に乗っている肉を眺めていた。
「よーし、いい焼き加減だわ!みんな食べようぜ!」
雄太がみんなの皿に食材を分けてくれた。私たちは「いただきます!」と分厚い肉を口に頬張る。その瞬間、全員が同時に叫んだ。
「うーん!美味い!!!」
それから2時間ほど食べては飲んで、飲んでは話して時間があっという間に過ぎた。意外にも有希ちゃんがお酒を飲み過ぎてテンションが高くなってしまった。
「3人とも、今日はありがとね!私がフランス行くって言ったら、雄太くんが4人で遊びたいって言ってくれてすっごい嬉しかったよ。はあ~幸せな1日だった。」
「有希がこんなに羽目外すの珍しいな。」
雄太と並んで歩いている有希ちゃんの後ろ姿を見ながら和也くんが呟いた。私が「そうなの?」と聞くと、彼は大きく頷いた。
「昔から冷静で落ち着いてる人だからね。ああいう姿は初めて見たよ。」
「そうなんだ。2人は小中が一緒だったんだもんね。幼馴染ってやつ。」
「まあね、そこまで話してたわけではないけど。」
和也くんは頭を掻いてそれから両腕を上に伸ばした。
「俺、基本的に他人に興味ないからね。」
「他人に…興味がない?」
私がキョトンとすると、彼は私を見て頷いた。
「そこまで深く知りたいとか関わりたいとか思わないんだよね。割と無関心かも。」
「たしかに…和也くんはそんな感じするよ。」
納得した表情をする私に彼は「なんで?」とツッコんだ。その反応に私は目を丸くした。
「和也くん、もしかして自覚ないの?自分がどれだけあっさりした人間か。」
「あー自覚はしてるよ。でも、もう梨沙にバレてるとは思ってなかったね。」
彼の発言に私は吹き出した。
「何言ってんの、バレバレだって。和也くんは塩対応多いよ。例えば、私がダジャレ言った時とか。」
「それは仕方がないよ。あの状況ではああいう反応しかできないもん。」
和也くんは本当にバカ正直男子だと再認識してしまう。私は彼を横目で睨みつけた。
「和也くんはオブラートに言えないところあるよね。良くも悪くも直球すぎるっていうか。」
私が不満げに言うと、彼は納得したように何度も頷いた。
「思ったことはそのまま言っちゃうね。あとは、良い嘘も悪い嘘もつけない。」
「何だ…ちゃんと自分のこと分かってるじゃん。本当にその通りだよ。」
するとその時、雄太が後ろを振り向いて「和也!有希さんの介抱、交代してくれ!」と叫んだ。和也くんはすぐに走って雄太の元に向かって行った。
思ったことはそのまま言っちゃう…。私は不意に彼から言われた『可愛い』を思い出した。あれがお世辞でもなく、ノリでもなく、本心からだったとしたら?彼は女慣れしていて色んな女の子に甘い言葉を言うのだろうか?
「でも…和也くんがそんな人にはどうしても思えない…。」
私は3人の後ろ姿を眺めながら、独り言を呟く。彼に期待していいのか、期待しない方がいいのか。心地よい海風を感じながら、気づけば私の頭の中は和也くんでいっぱいになっていた。
つづく
和也くんの性格がはっきりしてきましたね(笑)
ご一読ありがとうございました!




