2度目のデート
小山梨沙:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な大学3年生。天真爛漫でとても優しいが、考え込みやすい性格。「ダジャレ、ビール、相撲」の3つが好きで中身がおっさんだと言われることも。すぐに彼氏ができてしまう。(ENFJ)
大森和也:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な男子大学生。淡々とした性格で人によって態度を変えず、正直に物事を言う。クールに見えるが、実はあまりクールではない。梨沙に好意を持つ。(ISTP)
笹岡明音:小学校から大学まで一緒の梨沙の親友。常に冷静で落ち着いている。すぐに彼氏ができる梨沙のことを心配している。(INTJ)
倉本七海:梨沙と明音と大学時代に出会い、仲良くなった。ムードメーカーで明るい性格。すぐに彼氏ができる梨沙のことを羨ましく思っている。(ESFP)
川越雄太:和也の友達。梨沙とは高校が同じで、高校時代に片思いをしていた。盛り上げ役だが、周囲への気遣いができる性格。梨沙への気持ちがまだ残っている。(ESFJ)
松田有希:梨沙と同じクラスの友達。気が利くお姉さん体質で、サバサバしている性格。和也と小中学校が同じだった。(ISTJ)
私は今、絵画の前に立っている。そして、隣には高身長でイケメン”寄り”の男子がいる。非常に静かな空間だ。
私たちは結局、美術館に来た。大学生だと無料で見れる上に、最近新しく展示が変わったという情報を得たからだ。私が提案すると、彼はいつも通り「いいね。行こう。」と即答した。
だがしかし、あまりにも静かで逆に気まずくなっていないだろうか…?私がちらっと和也くんを見ると、彼は真剣な眼差しで絵画と向き合っている。私も慌てて前を向く。
「梨沙。」
急に名前を呼ばれ、私は目を丸くした。
「梨沙は何色が好きなの?」
「色…そうだな、私はオレンジ色が好き。」
「へえ。」
和也くんのリアクションは相変わらず軽い。私は目を細めて彼に聞いた。
「和也くんは何色?」
「俺は青だね。」
「あーなんか納得だわ。」
私が何度も頷くと、彼は「なんで?」とキョトンとした。
「落ち着きがあるから。いつでも冷静って感じ。」
「いつでもは違うよ。」
「え?動揺する時もあるの?」
目をパチクリさせる私に彼は苦笑した。
「そりゃあね。たまにはあるよ。すぐに冷静になるけど。」
「なーんだ、一瞬だけね。」
それから私たちはたまに会話をしながら丁寧に絵画を見て行った。ようやく全てを見終わると、私たちは足が限界を迎えているのに気付く。エントランスにあったベンチに腰を降ろし、少し休憩をした。
「久しぶりに来たけど、やっぱり美術館は良いね。」
私が言うと、和也くんはニコッと笑った。
「来たのめっちゃ昔だったから楽しかったよ。梨沙のおかげで来れて良かった。」
「私も…来れて良かった。」
すると和也くんは私の手を取って優しく握った。体温が急上昇するのを感じながら私も彼の手を握り返す。それから私たちは外に出て、散歩することにした。
「ねえ、和也くん。」
私が呼ぶと、彼はこちらを向いて首を傾げた。
「和也くんは他人に興味ないって言ってたよね?なんで…私には興味持ったの?気になってたんだよね。」
思い切って聞いてみると、彼は「うーん…。」と長い時間悩んでいた。
「分かんない。感覚だね。明確な理由はないよ。」
「感覚…?」
私が目を丸くすると、彼は大きく頷いた。
「なんか気になるなって感じだね。でも、強いて言うならアレだな。」
「アレ…?何?教えて!」
彼の答えに期待してしまう。ニコニコしていると、彼から意外な発言が飛び出した。
「中身がおっさんなところ。」
「はあ?」
「だって、いないでしょ。中身がおっさんの女子大生。面白いじゃん。」
追い打ちをかけるような言葉に私は口を尖らせる。
「バカにしてるだけじゃん。何なんだよ。」
「梨沙、本当のことを言っただけだよ。」
「うわーそういうところ。思ったことをそのまま言っちゃうところね。」
「俺はそういう人だから仕方がない。」
「あー!開き直ってる!良くない、良くない。」
こうして私と和也くんのくだらない言い争いは続くのだった。
「また…公園?」
私がキョトンとしていると、和也くんは無表情のまま頷いた。
「前とは違うところだよ。ここはね、花壇が綺麗なんだよ。」
和也くんの言葉に私は思わず吹き出した。
「和也くんってもしかして…公園マニア!?」
「そんなんじゃないよ。」
即答する彼にも私は笑いが止まらない。彼は相変わらず何が面白いんだと言わんばかりの表情をしている。
「じゃあ、ただ単に公園が好きなの?」
「うん。時の流れがゆっくりだから好きだね。」
「時の流れが…ゆっくり?」
首を傾げる私に彼はニコッと微笑んだ。
「ボケーっとできるじゃん。頭の中を空っぽにできる。」
「頭を空っぽに?そんなことできるのかな…。」
私が難しい表情をすると、彼は「できるよ。」と呟いた。
「何も考えない時間も必要でしょ。ずっと何か考えてたら、すごいストレス溜まるじゃん。」
「たしかに…だから私はストレス多いのか。」
ベンチに腰を掛けて私たちは話を続ける。和也くんは目を丸くして尋ねた。
「梨沙って、ストレス多いの?」
「自分的にはそう思うんだよね。いつも周りを気にしちゃうし、他の人のことも考えやすい性格だから。」
「それはストレス多いわ。俺、全然気にしないもん。」
和也くんの言葉に私は大きく頷いた。
「和也くんは本当にそうだよ。周りのことであんまり悩まないもんね。」
「まあね、悩みがない訳ではないけど。」
彼はそう言ってバックから水筒を取り出して水分補給する。
「どの会社で働くかも悩むよ。」
「そう言えば、ずっと気になってたことがあったんだ!」
私がいきなり大声を出すと、和也くんは「何?突然。」と苦笑した。
「和也くん、なんで福祉系に興味あるの?」
「親が社会福祉士やってるからじゃないかな。」
彼はいつも通り即答する。予想外の発言に私は目を丸くした。
「え、そうなの!?ご両親どっちも?」
「いや、父親だけ。母親は保育士。」
「すごい…。」
私が感心すると、和也くんは「そうかな。」と肩をすくめた。
「梨沙はなんでなの?」
「私は…その…。」
言葉に詰まってしまった。私が福祉業界に興味を持った理由…。自分でもよく分からない。和也くんみたいに明確な理由が見当たらなかった。
「無理して言わなくていいよ。人それぞれ事情もあるだろうし。」
和也くんは優しい言葉を掛けてくれた。それなのに、私は黙って俯いたままだ。
「梨沙は悲観的になりやすいよね。」
私は思わず彼の方を見る。私の顔を見て、彼はニコッと笑った。
「図星って顔してるわ。可愛い。」
不本意にも彼のド直球ワードを食らい、私は顔を赤らめた。
「そういうこと、急に言わないでよ。反応に困るじゃん。」
「思ってるから言ってるだけだよ。梨沙は照れちゃうんだね。」
彼はいたずらっぽく笑った。私の胸の鼓動が一気に早まるのが彼にバレないように私はそっぽを向いた。
「そうやってからかって…楽しそうで何よりだわ。」
「梨沙、からかってないって。本当に可愛いから言ってるんだよ。」
「それをはっきり言わないでよ…!」
私は思わず立ち上がって歩き出した。和也くんも後に続いてきたが、私は早歩きで進んでいく。
「梨沙、どこに向かってるの?」
彼の言葉に私はハッとして足を止めた。
「え…どこにも向かおうとしてないよ。」
すると和也くんは声を出して笑い出した。
「じゃあ、なんでそんなに必死になって歩いてるんだよ。」
私も彼につられて笑ってしまった。お腹が痛くなるくらいの大笑いだった。私たちはしばらく笑い続けて、それからようやく肩を揃えて歩き出すのだった。
日も暮れてきて、私と和也くんは帰りの電車に乗り込んだ。車窓からは雲一つない美しい夕暮れの空が見える。
「梨沙。今日楽しかった?」
ずっと無言だった和也くんがいきなり聞いてきた。私は彼を見て何度も首を縦に振った。
「すごく楽しかったよ!公園って、結構楽しめるよね。また行こうよ。」
「良かったよ。俺も楽しかった。」
私が安堵の表情をすると、彼はニコッと微笑んだ。
「梨沙と一緒にいれたからね。」
恥ずかしさのあまり思わず俯くと、和也くんは私の左手に右手を重ねてきた。私の心臓の鼓動が一気に高まる。
「梨沙の顔、真っ赤だよ。」
「え?そう?多分…暑いからじゃ…ないかな。」
私が片手で顔を仰ぐと、和也くんはいたずらっぽい笑顔を作った。そんな彼を横目で睨みつけると、彼は嬉しそうな表情をした。
「俺、梨沙を怒らせるの好きかもしれない。最近気付いたんだよね。」
「えーなんじゃそりゃ。それって良くないじゃん。」
私が頬を膨らませると、和也くんは目を丸くして黙り込んだ。
「…え?和也くん、どうしたの?」
「い…いや、その…何て言うか…。」
彼の頬が一気に赤くなる。心なしか、耳まで赤くなっているように見えた。
「怒らせるのは悪いことだって気付いた顔?」
「いや、そうじゃなくて。」
さっきまであんなに自信を持って話していたのに、だんだん彼の声が小さくなっている。
「もう一回…言ってくれない?」
ようやく和也くんが目を合わせてくれた。私は驚いて一瞬固まってしまう。
「な…何を言うの?」
「なんじゃそりゃって…言ってほしい。」
彼からの予想外の発言に私の頭の整理が追い付かない。
「ええ!?なんでそれをもう一回?」
「だって、めっちゃ可愛かったから。」
またまた和也くんからのド直球発言。私は大きく首を横に振った。
「嫌だよ~!言わないもんね!」
「そっか…じゃあ、また今度よろしく。」
「また今度!?」
私たちはいつも通り訳の分からない言い合いを始めた。和也くんのストレートな言葉に毎回翻弄されてしまう私なのであった。
つづく




