チームゆかりの紅葉狩り
小山梨沙:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な大学3年生。天真爛漫でとても優しいが、考え込みやすい性格。「ダジャレ、ビール、相撲」の3つが好きで中身がおっさんだと言われることも。すぐに彼氏ができてしまう。(ENFJ)
大森和也:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な男子大学生。淡々とした性格で人によって態度を変えず、正直に物事を言う。クールに見えるが、実はあまりクールではない。梨沙に好意を持つ。(ISTP)
笹岡明音:小学校から大学まで一緒の梨沙の親友。常に冷静で落ち着いている。すぐに彼氏ができる梨沙のことを心配している。(INTJ)
倉本七海くらもとななみ:梨沙と明音と大学時代に出会い、仲良くなった。ムードメーカーで明るい性格。すぐに彼氏ができる梨沙のことを羨ましく思っている。(ESFP)
川越雄太:和也の友達。梨沙とは高校が同じで、高校時代に片思いをしていた。盛り上げ役だが、周囲への気遣いができる性格。梨沙への気持ちがまだ残っている。(ESFJ)
松田有希:梨沙と同じクラスの友達。気が利くお姉さん体質で、サバサバしている性格。和也と小中学校が同じだった。(ISTJ)
「七海、それって本当!?」
私が叫ぶ横で明音はポカーンと口を開けたままにしている。そんな私たちをお構いなしに七海は目を輝かせて何度も頷いた。私たちはいつも通り昼休みに近況報告をしているのだ。
「うん!私、告白されたの!だから1週間前から付き合い始めた!」
「そ…それはどこぞの男?」
明音がいつもと違う口調になっている。相当衝撃を受けているのだろう。
「うーんとね、インターンシップとか研究室で一緒じゃない人!」
「一緒じゃないんかい!」
明音がテンポよく突っ込むので、私は思わず吹き出した。七海はニコニコしながら話を続ける。
「飲み会で行った居酒屋でバイトしてる男の子!すごく優しくていい子なの。顔もイケメンだし。」
「梨沙よりも七海の方が心配かもしれない…。」
顔を手で覆っている明音を横目で見ながら、私は興味津々だった。
「めっちゃ素敵な人だね。同い年なの?」
「ううん、1つ上。でも、幼稚だから年下みたいで面白いんだよね。」
「自分の彼氏を幼稚って…。」
明音が苦笑する。話を聞けば聞くほど、私も七海のことが心配になってきた。
「明後日は彼の家でたこパするんだー!彼ね、昔たこ焼き屋さんでバイトしてて上手なんだって!」
「い…家!?」
私と明音が声を揃えると、七海はキョトンとした。
「ゆうちゃん、一人暮らしなの。あ、名前言っちゃった。まあいっか!」
「待って待って。ちょっと待って。七海、本気で言ってるの?」
明音がいつも以上に真剣な表情をする。当の本人は笑顔で首を縦に振ってるだけだ。
「七海…気を付けてね。楽しんでほしいけど、まだあんまりお互いのこと知らないのに急に家なんて…。」
私が眉を八の字になると、七海は「心配ご無用!」と笑った。
「その日はゆうちゃんのお母さんも一緒なの!お母さんが来ること決まってたんだって!」
私と明音はしばらく顔を見合わせて、それから「ええー!?」と叫んだ。
「それを先に言ってよね。2人きりだと思ったじゃん。」
「もう!重要なところを言わないんだから。」
七海は舌をペロッと出して「2人な訳ないじゃん!」と言った。私はホッとして、彼女の手を取った。
「七海、おめでとう!嬉しそうで何よりだよ。」
すると、明音は肩をすくめた。
「七海も梨沙もスピード恋愛すぎるけど…末永く幸せにね。」
私と明音の言葉に七海は満面の笑みを浮かべた。
「2人とも、ありがとー!私、ゆうちゃんと幸せになる!」
それから数日後。ついに『チームゆかり』で紅葉を見に行く日がやってきた。
「チームゆかり…紅葉狩りにレッツゴー!!!」
雄太のテンションがいつも以上に高い気がする。私が彼に合わせて「ゴー!」と拳を突き上げると、助手席に座っている有希ちゃんが苦笑した。
「梨沙ちゃん、そういうの無理にやらなくていいよ。雄太くんがおかしいだけだから。」
「おい!おかしいって何だよ!有希さんの言葉、たまにグサグサくるんだよな…。」
雄太がハンドルを握りながら口を尖らせる。私が声を殺して笑っていると、隣にいる和也くんが口を開いた。
「雄太、ありがとね。車出してくれて。運転もめっちゃ助かるわ。」
彼からの意外な発言に私たち3人は一瞬固まってしまった。
「え?和也、いきなりどうした?どういう風の吹き回し?」
雄太が笑いを堪えながら言うと、和也くんは首を傾げた。
「いや、別に?お礼を言いたくなったから伝えただけだよ。」
「なんか…言うタイミングが変だったよね。」
有希ちゃんが笑いを我慢できないまま呟いたので、私もつられて爆笑した。
「いきなり真面目な顔して言うから、逆に面白くて…。待って、笑いすぎてお腹痛いんだけど。」
「そんなに笑う?変だったかな。よく分からないわ。」
和也くんだけは納得のいかない様子だったが、私たち3人はしばらくツボにハマっていた。
30分程経ってようやく目的地に到着した。人はそこそこいたが、初秋の涼しい風が気持ち良かった。あたり一面には真っ赤なモミジと黄金のイチョウが輝いていた。
「すごく綺麗…!紅葉ってこんなに素敵なんだね!」
私がはしゃいでいると、和也くんが「転ばないようにね。」と目を細めてきた。私が彼を睨みつけると、彼はすぐに優しい笑顔を浮かべた。
「子どもみたいで可愛いよ。」
また不意打ちを食らって黙り込むと、有希ちゃんがニヤニヤしながら近づいてきた。
「付き合いたてホヤホヤって感じで良いですね。初々しい。」
「ちょっと、有希ちゃん!」
私が彼女の肩をパシッと叩くと、遠くの方まで歩いていた雄太が手を振ってきた。
「おーい、みんな!こっちもめっちゃ綺麗だぞ!」
「そうなの!今行く!」
私たちは走って雄太の元に向かった。雄太の言った通り、そこには美しい景色が広がっていた。真ん中には小さな滝があって、周りには色づいた葉っぱの樹木が何本も生えていた。木漏れ日が美しく、幻想的で神々しい空間だった。私たちはその美しさに思わず言葉を失う。
「俺、良かったわ。ここに来れて。」
雄太が独り言のように呟く。ハッとして彼を見て驚いた。彼の目に光るものがあったのだ。
「4人で来れて…本当に良かったよ。」
「え…雄太、泣いてるの?」
私が目を丸くすると、雄太は慌てて顔を伏せた。
「間違いなく泣いてるね。」
和也くんがはっきり言うので、私は彼の腕を強く叩いた。彼は顔をしかめて私を見る。ちらっと有希ちゃんを見ると、彼女は今まで見たことのない表情をしていた。切なさと嬉しさが混じったような複雑な顔だった。
「泣いてもいいんじゃない。」
有希ちゃんは声までいつもと違っていた。優しすぎるくらい柔らかい声だった。彼女の言葉に雄太が驚いたように彼女を見る。
「有希さん…。」
「泣きたい時は泣けばいいってこと。ただそれだけ。」
急にいつもの有希ちゃんに戻って私は思わずズッコケそうになる。雄太も目を充血させながら声を出して笑い出した。
「優しくなったと思ったら、やっぱり有希さんは有希さんだな。」
「人はそう簡単に変わらないよ。」
和也くんが余計なことを言うので、私はまた彼の腕を叩いた。彼は「いった…。」と睨みつけてくる。
「やっぱりって…どういうことだし。」
有希ちゃんが小声で囁いたのに雄太は気付いていなかった。恐らく私だけが彼女の心の声を耳にしただろう。おまけにその時の有希ちゃんの頬はピンク色に染まっていた。
「あ…あのさ、私と和也くんはさっきのところに行ってるね、じゃあ…和也くん、行こう!」
私はすぐに和也くんの腕を引っ張った。「おい、待てよ!」と雄太の声が聞こえたが、聞こえないフリをした。早足で歩く私を和也くんが怪訝そうな顔で見ている。
「梨沙、急にどうしたの?そんなに雄太が泣いたのに驚いた?」
「違う…そうじゃなくて。」
私が言葉を詰まらせると、和也くんは余計に顔をしかめる。
「悪いけど…俺、察するとか無理なんだよね。」
「察する…?」
キョトンとしている私に彼は何度も頷いた。
「そう。はっきり言葉にしてもらわないと分からないんだ。だから、ちゃんと言ってほしい。」
彼の真面目な眼差しに私の胸の鼓動が速くなる。私は慌てて目を反らしてゆっくり口を開いた。
「好きなんだよ、有希ちゃんは。」
「誰のことが?」
やっぱり和也くんはすぐに質問してくる。私は大きく深呼吸してそれからまた口を開いた。
「雄太のことがだよ!」
「へえ、そうなんだ。」
「え…?何その反応!知ってたの?」
私が大きな声を出すと、周りの人たちがちらちら見てくる。和也くんは苦笑しながら首を横に振った。
「そんな訳ないじゃん。察せない人間だって数秒前に言ったばっかり。」
「そっか…和也くんはいつもそういう反応だった。」
私の言葉に彼はまた頷いた。有希ちゃんが雄太を好きなことをようやく他の人と分かち合えることに私は安堵している自分に気付いた。
「雄太、なんで泣いてたんだろうね。」
和也くんがボソッと呟いた。私は我に返って考え込む。
「そうだよね。感情が動きやすい雄太だとしても…紅葉の景色を見ただけで泣くとは思えないし。何か悩んでたりして…。」
「誰にだって、大なり小なり悩みはあるだろうから。」
和也くんは真っ赤に染まったモミジの葉を見上げながら呟いた。私は彼の横顔を眺めて、彼の綺麗な鼻筋に自然と目が行ってしまう。
「和也くん…私には言ってね。悩んでることとか辛いこととか。」
とその時、そよ風が吹いてきてモミジの葉が舞い落ちてきた。よそ見をすると、私はいつの間にか和也くんの腕の中にいた。ハッとして顔を上げると、そこには優しく微笑む和也くんがいた。
「ありがとう。梨沙もそうしてね。俺には何でも言ってよ。」
彼の優しい言葉に胸が一気に温まる。私はニコッと笑って「ありがとう。」とお礼を言った。和也くんはゆっくりと私から離れた。
「おーい!和也!梨沙!何だよ、そこにいたのかよ!」
遠くの方から聞き馴染みのある声が聞こえる。私と和也くんが顔を見合わせて、すぐに声のする方に歩いて行った。
「最初にいたところにもいないし、探し回ったんだぜ?どこまで歩かせるつもりだよ。」
「ごめんごめん。ここ、すごく綺麗でつい歩いてきちゃった。」
私が慌てて言い訳をすると、有希ちゃんが私のことをじっと見つめているのに気づいた。私が首を傾げると、彼女は口パクで何かを言った。何とか口の動きを読み取って私はハッとした。
「ありがとう…!?」
「何が?」
和也くんに聞かれ、私はハッとした。有希ちゃんを見ると、彼女は何もなかったかのような顔をしている。
「いやあ、別に!雄太と有希ちゃん、私たちのこと見つけてくれて感謝だよ!」
「随分大げさだね、梨沙ちゃん。もうはぐれないようにしないと。」
有希ちゃんはいつもの落ち着いた口調で話している。私は「そうだね。」と頷きながら彼女から目を離せない。
「よっしゃ、4人揃ったし飯でも食いに行くか!」
雄太の提案に私たちはみんな頷いたが、私は「ちょっと待って!」と声を上げた。
「4人で写真撮ろうよ!記念に!」
「いいじゃん。そういえば一回も撮ったことないし。」
和也くんがすぐに賛同してくれた。雄太も有希ちゃんも嬉しそうな顔をした。私はスマホを内カメにしてみんなの顔がしっかり入る角度を探る。ようやく良い感じに4人の顔が入った。
「いい感じ!撮るよ!はい、チーズ!」
つづく
ご一読ありがとうございました!次回も乞うご期待です!




