モヤモヤとトキメキ
小山梨沙:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な大学3年生。天真爛漫でとても優しいが、考え込みやすい性格。「ダジャレ、ビール、相撲」の3つが好きで中身がおっさんだと言われることも。すぐに彼氏ができてしまう。(ENFJ)
大森和也:ルックスがまあまあ良くて、成績もそこそこ優秀な男子大学生。淡々とした性格で人によって態度を変えず、正直に物事を言う。クールに見えるが、実はあまりクールではない。梨沙に好意を持つ。(ISTP)
笹岡明音:小学校から大学まで一緒の梨沙の親友。常に冷静で落ち着いている。すぐに彼氏ができる梨沙のことを心配している。(INTJ)
倉本七海:梨沙と明音と大学時代に出会い、仲良くなった。ムードメーカーで明るい性格。すぐに彼氏ができる梨沙のことを羨ましく思っている。(ESFP)
川越雄太:和也の友達。梨沙とは高校が同じで、高校時代に片思いをしていた。盛り上げ役だが、周囲への気遣いができる性格。梨沙への気持ちがまだ残っている。(ESFJ)
松田有希:梨沙と同じクラスの友達。気が利くお姉さん体質で、サバサバしている性格。和也と小中学校が同じだった。(ISTJ)
1週間後。『チームゆかり』はまた授業で集まることになった。
「結局俺たち、これからも一緒に活動できるんだな!リーダーとしてまた頑張るぜ。」
雄太が嬉しそうに叫んだ。有希ちゃんも和也くんもニコッと笑って頷いている。
「今日はみんなでそれぞれの会社に書くエントリーシートを作成するんだよね。サクサクやらないとすごく時間かかっちゃいそう。」
私が資料を見ながら呟くと、みんなも苦い表情をする。3社ともエントリーシートを書かないといけないなんて、あまりにも大変だ。すると、雄太が手を叩いて提案した。
「じゃあこうしよう!これ書き終わったらまた遊びに行く計画立てようぜ!楽しみがないとやってられない!」
「いいじゃん。もう始めよう。」
和也くんの言葉で私たちは集中モードに入った。紙に書く鉛筆の音だけが聞こえてくる。
それから黙々と作業すること30分が経過した。和也くんと有希ちゃんはもう終わった様子だ。私はまだ1社残っている。雄太を見ると、彼は何かに悩んでいるようだった。
「雄太くん、どうしたの?」
有希ちゃんも気付いたらしく、彼に声をかける。私はホッとして自分の作業を続けた。
「自己PRって、受ける会社によって変えていいんだよな?」
「うん。会社の仕事内容によって、求める人材が違うからね。」
「たしかに。じゃあ…ちょっとこれ変えてみるぜ。」
「でも、雄太くんの強みはどの会社でも通用すると思うよ。リーダーシップね。」
有希ちゃんの言葉に雄太は感銘を受けた様子だ。彼はいきなり彼女の手を握ってお辞儀をした。
「ありがとう、有希さん!めっちゃ嬉しい!」
「い…いや、大げさだって。」
ちらっと有希ちゃんを見ると、予想通り頬が赤く染まっていた。私はニヤニヤするのを必死に抑えながら、文章を書き続ける。
「梨沙は大丈夫?」
後ろに座っている和也くんが突然話しかけてきた。私は振り向いて何度も頷いた。
「大丈夫だよ。書くのに時間かかってるだけ。」
「そう。なら良かった。」
和也くんはそう言って大きなあくびをした。私はそんな彼を軽く睨んだ。
「書くのが遅くて悪かったですね、和也くんと違って。」
「丁寧でいいんじゃない?俺はテキトーに書いたから。」
私は何も言わずに肩をすくめる。「どうした?」とキョトンとしている彼から視線を外し、前を向いた。
それから10分ほどで私も雄太も完成させることができた。
「よっしゃ!計画立てるぞ。紅葉見に行くなら2週間後だと見頃らしいぜ。」
雄太がスマホで調べながら言った。私たちはみんな賛同する。
「日程はどうする?再来週の土曜日とか?」
「私は空いてるよ。」
有希ちゃんの言葉に続いて、私も頷いた。すると、和也くんだけは眉間にシワを寄せた。
「その日は…無理だな。」
「あー!和也、研究室で合宿あるんだっけ?」
「そう。3泊4日ね。」
私は思わず目を丸くした。そんな話は一切聞かされていなかった。付き合っているのに、私は何も知らなかったんだ。胸の奥が、少しだけ重くなる。
「じゃあ、その次の週がいいか?」
「次の週だと私が厳しいな。」
雄太の提案に有希ちゃんが苦笑する。
「あ、待って。間違えたわ。」
「え…?」
和也くんの言葉にみんなキョトンとする。彼は無表情のまま話を続けた。
「再来週は大丈夫だった。合宿はその前の週だったよ。」
「和也、何だよ!ウソついたのか!」
「かずくんはそういうのも多いよね。」
雄太と有希ちゃんが彼を冷やかすと、彼は「凡ミスした。」と笑った。
「それじゃあ、再来週の土曜日にしよう!今から楽しみだぜ。」
ルンルン気分の雄太とは裏腹に私の心は沈んでいくのだった。
「梨沙、帰ろう。」
「…うん。」
授業後、私と和也くんは2人で帰ることになっていた。私はモヤモヤした感情のまま、彼の隣を歩いている。
「俺、梨沙と2人でまたどこか行きたいんだよね。」
和也くんが話題を振ってくる。私は彼をちらっと見て、小さく頷いた。
「そうだね。どこか行きたいところあるの?」
「前は俺に付き合ってもらったから、今度は梨沙の行きたいところに行くよ。」
私はしばらく考えた。それでも全然思い浮かばない。さっきのことが引っかかって考えられないみたいだった。
「もう少し考えてみる。また連絡するね。」
「梨沙。」
彼ははっきりした声で私の名前を呼んだ。ちょうど赤信号で私たちは足を止めた。
「何かあった?元気なくない?」
「そう…かな。別に何もないけど。」
私は真っ赤な嘘をついている。和也くんはそれでも諦めなかった。
「ちゃんと言ってほしいな。俺も気になるし、梨沙もスッキリしないし、良いことないじゃん?」
思わず黙り込んでしまうと、信号が青に変わった。私たちはまた歩き出す。
「合宿のこと…。」
しばらく歩いてから私は口を開いた。和也くんは足を止めて、「何て言った?」と首を傾げる。
「合宿のこと!」
今度は大きな声で言ってみた。彼は目を見張って私を見る。
「合宿がどうしたの?」
「私に教えてくれなかったのが嫌だった。」
思い切って言うと、彼は一瞬固まってそれから首を傾げた。
「俺、梨沙に言ってなかったっけ?」
「言ってない!そうやってとぼけるのも嫌なんだけど。」
私が彼を睨みつけると、彼は「また勘違いか…。」と肩を落とした。
「ごめん、梨沙。これからは気を付けるよ。ちゃんと言うから。」
彼は眉を八の字にして謝った。私は何も言わずに歩き始める。彼も私に付いてくる。
「いいよ、別に。これから気を付けてくれれば。」
私の中のモヤモヤも少しずつ溶けていった。 私がニコッと微笑むと、彼はホッとしたような表情をした。駅まで着いて、私と和也くんは別れなければいけなかった。
「またね、和也くん。バイバイ!」
私が行こうとすると、彼は「梨沙。」とまた名前を呼んだ。振り向くと、彼は優しい笑顔を作っていた。
「2人で会えるの楽しみにしてる。大好きだよ。」
「うん…私も大好き。」
高鳴る鼓動を抑えつつ、私も思いを伝えることができた。いつも見ている夕焼けの空がいつもよりも綺麗に感じられるのだった。
「これはもう『梨沙のデートを成功させちゃうぞ大作戦パート2』発令しちゃいますよ~!」
「発令って…熱中症アラートみたいに言わないの。」
数日後の昼休み。明音の切れ味抜群なツッコミに私は腹を抱えて笑った。そんな私に「笑いすぎだよ。」と呟く明音を気にせず、七海は相変わらず目を輝かせて話を続ける。
「梨沙はないの?バカ正直男子と行きたい場所とか、やりたいこととか!」
「うーん…何だろうな。ない訳じゃないんだけど、パッと思いつかなくて。」
私が渋い顔をすると、明音は肩をすくめた。
「思いつかないってことは、ないんじゃない?」
「違うってば!あるよ、あるもんね。」
意地を張る私に、明音は何も言わずに苦笑する。
「水族館、動物園、博物館、美術館、遊園地、カラオケ、ドライブ、山、海…。」
七海がずらっと並べて言ったので、私と明音は顔を見合わせて笑った。
「デートと言えばって場所!じゃあ…水族館、行きなよ!」
「水族館ね…そういえば最近行ってない!」
私が顔を明るくすると、七海は万歳し始めた。
「はい、決まりー!今、バカ正直男子に言ってみて。絶対に賛成してくれるから!」
「水族館も七海が行きたいだけなんじゃ…。」
明音が苦笑すると、七海は図星だったのか目を泳がせた。私が思わず吹き出すと、明音は肩をすくめた。
「梨沙が本当に行きたいところにしなよ。そんな焦って決めなくてもいいだろうし。」
「うん、そうするよ。」
私が微笑んだその時、後ろから「梨沙!」と名前を呼ばれた。驚いて後ろを振り向くと、そこには雄太と和也くんが立っていた。私が固まっていると、雄太が七海と明音を見てニコッと笑った。
「いつも梨沙がお世話になってます。悪いな、突然話しかけちゃって。」
「ちょっと何言ってるの!なんで雄太が保護者みたいになってるんだよ!」
私が頬を膨らませると、七海が小さく咳払いして笑顔を作った。
「初めまして!私、梨沙の友達の倉本七海です!よろしくね、雄太くん。それと、バカ正直…。」
明音が慌てて七海の腕を叩く。私も人差し指を口に当てて首を大きく横に振った。七海はすぐに口を閉じて苦笑する。
「バカ正直?誰が?」
和也くんが首を傾げる。動揺のあまり、私は勢いよく立ち上がった。
「2人はなんでここに来たのかな?ご要件をお伝えください!」
「何だそれ。留守電の自動音声かよ。」
雄太のツッコミに七海が手を叩いて笑い出す。私もつられて笑いそうになるが、何とか持ち応える。
「再来週の紅葉狩りの話なんだけど、俺の家の車で行けることになったんだ。あと、場所の候補をグルチャに送っておいたから、ちゃんと見ろよ。」
雄太が分かりやすく説明する。私は「了解、ありがとう。」と笑った。ちらっと和也くんを見ると、思わず目が合ってしまった。私は慌てて目を反らした。
「それじゃあ、またな。」
雄太がそう言うと、和也くんも彼に付いて行ってしまった。一瞬の出来事で、何が何だか頭が混乱している。
「七海ったら…バカ正直男子って本人に言っちゃダメなのに。」
明音が頭を抱えると、七海は舌を出した。
「まさか本人に会えると思ってなかったんだもん!高身長で整った顔してるじゃん!イケメン寄りだよ!」
「イケメン寄りっていうのも、かなり失礼だけどね。」
私は苦笑しながらも、自分の体温が上昇しているのを感じる。不意に和也くんと会った時の胸のトキメキが私の心に確かに残っていたのだ。
つづく
ご一読ありがとうございました❀




