夢
アイリは少年たちと触れあううちに、ささやかな幸せを知っていった。
彼女はいつの間にか、朝になると教会へと足を運んだ。
今まで、神の存在に疑問を持っていたのが嘘のようだった。
日々が過ぎるうちに、アイリは教会の孤児院で働くようになっていた。
それは彼女にとって自然なことだった。
毎日のように神に祈りを捧げ、子供たちのお世話をしていた。
「アイリお姉ちゃん、讃美歌を歌って」
「いいわよ」
「お姉ちゃん、僕は時々思うんだ。神さまは本当にいるのかな」
「どうして、そう思うの」
「だって、僕はお母さんもお父さんも……」
「大丈夫よ。お父さん、お母さんもいなくても、神さまは見ているのよ」
「本当」
「うん」
アイリの神への信仰心は日々強くなっていった。
一方、クランはルージェの屋敷を出て、行くところもなく、さまよっていた。
気づくと教会へと足を運んでいた。
神父から、パンをもらっていた時のことだった。
教会の扉が開いた。
そこにはアイリの姿があった。
彼は気づいた。
タピオが心を打たれている相手であることに。
しかし、クランはアイリを見て不思議な気持ちになった。
まるで、暖かな日差しが胸に差し込むように思えた。
アイリがクランに声をかけた。
「旅の方ですか?」
「はい」
「ゆっくりしていってください」
クランは、思わずアイリに声をかけた。
「どこか泊まるところはないでしょうか」
神父がそっと言った。
「よければ、教会に泊まりなさい。アイリ、寝床を準備してあげなさい」
「わかりました」
外から、フクロウの声が静かに響いていた。
その夜、クランは夢を見た。
白夜祭で伴奏をしていた時の夢であった。
するとアイリの姿が目に映り、気づくと彼女は蝶になっていった。
その蝶は、クランの腕にそっととまった。
クランははっと目が覚めて、再び、眠りについた。
一方、タピオはルージェの屋敷で歌を披露していた。
ルージェはタピオのやさしさに惹かれ、
タピオも情熱的なルージェにどことなく魅力を感じていた。
その日、タピオは夢を見た。
それは、白夜祭でアイリと出会った時の夢であった。
アイリの花柄模様の白いドレスと、彼女の笑顔がひとつに重なって見えた。
タピオはアイリを求めて、追いかけていった。
気づくとアイリが一匹の蝶になった。
すると、蝶は逃げていった。
タピオははっと目が覚めた。
不思議な夢でその後は眠ることができなかった。
フクロウの鳴き声が静かに響いていた。




