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青藍のストライダー ~星々を駆ける冒険者たち~  作者: Omega Blue
第1話 10年目の縁

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第1話 10年目の縁 3

 ヘルメットのライトだけが、明かりのない通路を細く照らしている。

 通路の壁は腐食によってあちこち崩れており、損傷の激しい部分は調査隊が補強していったようだ。

 しばらく進むと長い階段とそれに併設されたスロープが現れた。その先には稼働中の重力リフトを備えた部屋があった。

 レヴァリスが制御盤を確認すると行き先は銀河共通文字で“第41工房街”と表示されていた。

 制御盤を操作すると重力リフトの外枠が変形し、それから目的地に向かって徐々に加速しながら降り始めた。

 3分ほどで重力リフトは第41工房街を貫く吹き抜けの大通路の一角に到着した。

 3分ものあいだ降下し続けたことで、レヴァリスはかなり地下深くまで下りたことを認識した。見上げれば吹き抜けは5階層分ほどの高さがあった。

「支部長、こちらは第41工房街に到着した。大広間の位置は?」

『よし、そこから北の方角に向かって真っ直ぐ通路を進んでくれ。聖堂のような外観をした立派な入口がある』

 現在地を報告してヴァリネクから目的地への指示を受けると、HUDに表示された方位を確認してから北側に向かって進み始めた。

 第41工房街には照明が灯っていて見通しが良い。レヴァリスはヘルメットのライトを消すと、警戒を保ったまま周囲の部屋に目を配った。

 各部屋の扉や窓には隔壁が下りているため中の様子こそ見えないが、看板などには“工房”や“オーダーメイド”といった文字がよく見られる。

「職人達の街……か」

 それを見たレヴァリスは今ではすっかり寂れてしまったこの場所が、職人達や訪れた人々で賑わっていた時代もあったのだろうと感じた。

 通路を足早に進んで行くと、やがてヴァリネクの言ったとおり精緻な装飾を施した大きな入口が現れた。

 壁の装飾は何らかの金属で形作られており、幾何学的でありながら見る角度によって花にも人の手にも見えた。

 入口をくぐり一本道を進むと、最初の目的地である大広間に出た。

「何かいるな」

 大広間に入るとレヴァリスは反射的に近くの柱に身を隠す。柱から大広間を覗くとそこにはかなりの数のオートロイド達がうろついていた。

 まず目に付いたのはクラゲ型のオートロイドである“クリーナー”だ。浮遊しながら先端に器具を取り付けた無数の触手を使って床の血や戦闘の跡を拭いている。

 大広間内にはクリーナーが噴霧した消毒液の独特な臭いが鼻を突くほど充満している。その濃い臭いは、それだけ多くの血がこの場所で流されたことを物語っていた。

 損傷の激しい箇所では羽虫に似た小型オートロイド“リペアバグ”が群れをなしていた。耳障りな羽音を出しながら大広間のあちこちで青い火花を散らしている。

 リペアバグは小さな頭部の先端から青いレーザーを損傷した箇所に照射して修復作業を行っていた。

 この2種類は銀河帝国時代の建物の維持や清掃を担い、施設に何らかの損傷や汚染が発生すると何処からともなく現れる。

 5万年以上も昔に滅んだ銀河帝国の遺跡が現代でも稼働しているのはこのオートロイド達のおかげであった。

 また冒険者に対して敵対的でもないため遺跡保全の観点から冒険者ギルドの規定で故意に破壊することは禁止されていた。

 大広間を改めて見渡すとこの2種類しかいないらしく、レヴァリスは柱に隠れるのを止めてひとまずヴァリネクに連絡を入れることにした。

「こちらレヴァリス。大広間に到着したが既に後(・)片(・)付(・)け(・)が始まっている」

『調査隊の痕跡は?』

「見たところ死体や遺品の類はない。真っ先に片付けられたようだ」

『そうか……未知の敵を引き付けたパーティの足取りは追えそうか?』

「難しそうだが探すしかなさそうだな」

 通信を終えると、大広間に残る痕跡を探し始めた。

 全体の構造を見ると大広間には数本の柱が並び、中央には演壇のようなものが設けられていた。

 そのことから元々は催事か集会のような場に使われていたらしい。

 出入り口は5つあり、レヴァリスが入ってきた南側に1つ、東西に2つずつ通路が延びていた。

 だが、東西の通路の入口は頑丈な扉によって固く閉ざされていた。レヴァリスがそれぞれ近づいて調べると激しい戦闘の痕跡が見られた。

 扉近くの開閉端末を見ると“強制封鎖”、その下には“上位権限により実行”と表示されていた。

 また冒険者がどうにか開けようとした形跡が生々しく残っていた。

「確か、ここから分かれて行動する手筈だったな」

 宇宙ステーションでヴァリネクから聞いた、ここから複数のパーティに分かれるという段取りを思い出した。

 各パーティが別々の通路へ入った直後に、扉が封鎖されたのではないか。

 40人の調査隊を分断し、各個撃破する。ただの工業用オートロイドにそのような戦術を駆使できるとは考えづらい。

 レヴァリスは背筋に薄ら寒いものを覚えた。事態は思っていた以上に深刻でありおそらく悪い方向へ進みつつあると直感が告げている。

「支部長、未知のオートロイドを引き付けた冒険者達はどの方向に向かった?」

『生存者の証言では最後にパーティを見た時は入口とは反対側に向かったらしい。いや待てよ、先行偵察隊の記録にはそこに道はなかったはずだが……』

 ヴァリネクは生存者の証言を伝えながら、すぐにその内容へ疑問を抱いたようだ。

 混乱の最中だったため生存者の証言が必ずしも正確とは限らない。それでも現状ではそれが唯一の手がかりであった。

「何か見落としているのかもしれない。調べてみる」

 そう告げて入口の反対側へ向かったが、そこにはただの壁しかなかった。

 壁にはプラズマ弾の弾痕が数多く残っていた。ここで冒険者達が攻撃を受けたことは確かなようだ。

 レヴァリスは壁の表面を注意深く観察し、周囲との違いを探った。

「これは……この壁だけ早く修復されている」

 目を凝らすとプラズマ弾で損傷した壁のうち、その一角だけ修復が不自然に進んでいることに気づいた。

 叩いてみると周囲とはわずかに違う、空洞を思わせる音が返ってきた。

 さらに細い溝を見つけて指をかけて引くと、隠されていた開閉端末が現れた。

 開閉端末を操作すると壁の一部が変形し、隠されていた通路が現れた。中を覗くと非常灯だけが点灯しておりその先に何があるのかは見通せなかった。

「道を見つけた。どうやらそのパーティはこの隠し通路を通ったようだ」

『隠し通路だと? パーティはそれを戦闘中に見つけたのか?』

「状況を見るに流れ弾で端末を隠していた部分が壊れて露出したってところだろう。ひとまずこの隠し通路に入る」

『了解、気をつけろよ』

 通信を終えると、ヘルメットのライトを再び点灯させて銃を構え、暗い通路の中へ入っていった。

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