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青藍のストライダー ~星々を駆ける冒険者たち~  作者: Omega Blue
第4話 荒野の向こう側

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第4話 荒野の向こう側 1

 翌日、発着場には西側の探索に向かう冒険者達が顔を揃えていた。

 レヴァリスは<ペイルライダー>の多目的室に全員を集め、今回の探索目標についてブリーフィングを行っている。

「というわけで、今回の目標地点はスキャン不能域だ。丘陵地帯までは車両で移動し、そこからは徒歩だ」

「何があるか分からないってのはワクワクするっすね」

「遺跡があるとしたらどんなだろう? お宝があるといいなぁ」

 ヴェオルとコルマリアは未知の空白地に大きく期待を寄せているようだ。

 何があるか分からないからこそ期待しているあたり、彼らもまた冒険者なのだとレヴァリスは感じた。

「レヴァリスさんとしてはどのような予測を立てているのですか?」

「経験者ノ直感ハ大事だ。聞クベきもノ」

 セレリーンとレルカの方はレヴァリスの予測を聞きたいようだ。

 過去の経験を思い出しながら考えをまとめると、レヴァリスは口を開いた。

「可能性としては遺跡、墜落した宇宙船、露出した何らかの資源帯——そんなところだ」

「もし古代の宇宙船だったら、貴重な発見になりそうです」

「資源帯ナら開拓地のタメになル」

「何にせよ、何かしらの発見はあるはずだ。とはいえ、今回は道中の発見物も記録しておきたい」

 今回の探索には西側の資源情報の収集も含まれている。

 北側を調査しているエレフィエルは家畜やペットにできそうな生物を持ち帰り、食用や薬用に適した植物のサンプルを採取している。

 丘陵地帯は上空から見る限り、その大部分が森に覆われていた。地上の様子はうかがえなかったが、開拓地で不足している原材料や資源の発見が大いに期待されていた。

「そういえば今日はどのくらい探索するのでしょうか?」

「サレナ、それなら今日は日帰りのつもりだ。本格的に着手する前に、野営地の候補だけは見つけないとな」

 ブリーフィングが終わるとレヴァリス達は<ペイルライダー>から降り立ち、荷物を持って発着場の近くに駐車されていた偵察車両に向かう。

 この車両は“ユーレロック”の名で知られる汎用偵察車両だ。その名はとある惑星に棲息する猪突猛進な原生生物に由来する。

 反重力車両が普及した現代では前時代的な四輪駆動車だが、耐久性と信頼性に優れており、多くの軍事組織で採用されている。

「ようし、皆荷物を入れろ。空いている座席にどんどん乗れ」

 ヴェオル達は手荷物を偵察車両のカーゴスペースに入れていき、それから順番に座席へと乗り込んでいく。

 最後にレヴァリスが運転席に乗り込むと、冒険者達を乗せたユーレロックは西の丘陵地帯を目指して出発した。


 街のすぐ外側にある穀倉地帯を抜けるとそこからはもう未知の領域であった。

 レヴァリスはハンドルを握りながら、大戦以来となるユーレロックの運転を楽しんでいた。

 久しぶりに運転してみると、地に足のついた走行も悪くなかった。

 一方、悪路を進むたびに車体は激しく揺れ、後部座席からは悲鳴や笑い声が上がっていた。

「四輪駆動車ってこんな荒っぽい乗り心地なんですか!?」

「あはは、何だか遊園地のアトラクションみたい」

「マリアちゃん、あんまり押さないで。ちょっと気持ち悪くて……」

「大丈夫ですかサレナさん、一応袋はありますが」

「故郷ノ荷を運ブ動物よリはマダ揺レないナ」

 後ろの喧騒を聞き流しながらレヴァリスはしばらく車を走らせていたが、やがて目的地である丘陵地帯が見えてきた。

 空から見た丘陵地帯は鬱蒼とした森という印象であったが、地上から見るとまた違った光景が見えてくる。

 赤や青の葉が舞い散り、草原地帯では見られないような動植物で満ちていた。

 木々が密集しているため車両ではこれ以上は進めないと判断し、レヴァリスは適当な場所でユーレロックを停車させた。

「ここからは徒歩で行くぞ。全員、装備を持って降りろ」

 レヴァリスがそう言うと後ろの座席にいた下級冒険者達は、それぞれの装備を持って車両から降り立った。

 敵対的な原生生物などがいる場合に備え、今回は全員が武装していた。

「帰り道も揺られるのは嫌だなぁ……」

 降車したサレナは車酔いからは回復したようだが、帰り道を考えてげんなりとした表情を見せた。

 レヴァリスは車を施錠してから位置ビーコンを起動し、車両の停車位置が分かるようにしておく。

「今日は随分と重装備なのですね」

「まあ念のためだ。一応な」

 サレナはレヴァリスがいつもより重武装なのを見て指摘する。

 いつものブラスターライフルとピストル、ナイフとフォトンブレードに加えて今回はショットガンまで携行していた。

 ショットガンを装甲服の背部にあるウェポンマグネットへ取り付けて背負うと、レヴァリスを先頭にして冒険者達は歩き始める。

「各自、歩きながら興味のあるものを見つけて記録しろ。持ち帰れそうな物があれば持って帰っても良い。ただし離れすぎるなよ」

 レヴァリスが後ろにいる全員へ指示を出すと、下級冒険者達は散らばってそれぞれが興味のありそうな方向へ進む。

 冒険者にとって、探索で得た発見を記録として残すことは重要な仕事だ。

 たとえ専門外の対象でも、映像や数値、自分なりの所感を添えてギルドへ提出すれば評価や報奨金につながる。

 銀河各地から集められた記録は[クロムネムシャ]の情報記録室《ストライダーライブラリ》に蓄積され、他の冒険者や研究者に提供される。そこで精査され、新たな技術や知識を生み出す礎となるのだ。

「レヴァリスさん、どういったものを記録すれば良いでしょうか?」

「些細なものでも構わん、気になったらとりあえず記録しておけ。手当たり次第でも構わない」

「そんな適当でいいんですか?」

「最初のうちはそんなものだ。だが、そのうちこれだと思うものが見えてくる」

 そう答えながら、近くに生えていた木へ携帯端末を向ける。

 木材として利用できそうなうえ、街路樹や観賞用としての需要も見込める。その所感を記録へ書き加えていく。

「別に専門的な知識はなくても思ったことを記録に書いていけばいい。高く売れそうだ、頑丈そうだ——とかな」

「うーん、例えばこの花だと綺麗ですけど、でもちょっと質感が悪いとかですか?」

「あとはどんな匂いがするとか、たくさん生えているのか、あるいはどういった場所に生えているのか。気づいたことや感じたことを、そのまま記録にすればいい」

「なるほど……あまり良い匂いはしないですね」

 レヴァリスはサレナに見つけたものに対する記録のやり方を教えていく。

 後方にいる他の4人の様子を見ると、それぞれが違ったものに目を向けていた。

「うーん、あの生き物は獲ったら美味しいだろうか」

「でっかい虫だぁ、足は何本生えてるんだろ?」

 ヴェオルは遠くにいる野生動物をじっと観察しており、コルマリアは大胆にも大型の虫を鷲掴みにして裏側を調べている。

「おいおい、素手で生物を掴むな。せめて防護手袋越しに掴め」

「えー、これは大丈夫だと思いますよ。見てください、毒もなさそうだし甲殻がつるつるしてるんです」

 レヴァリスは未知の生物を素手で触らないよう注意するが、コルマリアはあまり気に留めていないようだ。

「毒があるかどうかは見ただけでは分からん。次からは手袋を使え」

「はーい」

 レヴァリスに念を押され、コルマリアは大型の虫を草地へ戻した。

「ギギ……よく肥エタ土だ。味モ悪くナイ」

「ふむ、この植物は薬剤の原料に使えるかもしれませんね」

 レルカは土をひとつまみ口に含み、味や感触から状態を確かめていた。

 土壌に含まれる有機物まで食べるあたり、いかにもアルディマンティスらしい調査方法だとレヴァリスは思った。

 隣ではセレリーンが毒々しい色をした草花を眺めている。

 6人はそれぞれ目についたものを記録していきながら丘陵地帯を進んでいった。


 丘陵地帯に入ってから3時間近くが経過し、正午が近づいていた。

 休憩に適した場所を見つけ、レヴァリス達はそこで昼食をとることにした。

 下級冒険者達は近くの岩に座りこむと、携帯食を口にしたり水を飲んだりして一息ついた。

「野営をするにはあまり平坦な土地ではないな。休憩地点としては良さそうだが」

 そう呟くと自身も休憩を取るために下級冒険者達の近くに座る。

 携帯端末で現在地を確かめると、目標座標はこの先の丘の頂上付近を示していた。

「この分だともう少し登ることになるな。あの丘の上なら開拓地がよく見えるかもしれない」

「丘の頂上からなら、全体を見渡せそうですね」

「この辺は木々も豊富だ。材木や植物資源を採取するための拠点を築くべきかもな」

「こっちの方にもいつかソルティア・ナリスみたいな村ができるのも良いですね」

 レヴァリスは水筒の水を飲みながら、サレナと話をして一息ついた。

「ここから先は目標座標に近い。記録と採取は一旦中止しろ。隊列を詰めて、いつでも武器を使えるようにしておけ」

 休憩が終わると下級冒険者達に指示を出し、再び丘陵地帯を登りながら進んでいく。

 傾斜が次第に急になり、冒険者達の歩みも鈍くなっていた。

「足元に気をつけろ、この辺りはだいぶ滑りやすいぞ」

 先頭を歩くレヴァリスは後方の下級冒険者達にそう注意を促す。

 そしてようやく傾斜地を抜けると、木々がまばらに生えた広場のように開けた場所に出た。

 見上げてみると目的地である丘の頂上まではもう少しであった。

「あとちょっとで頂上に着きそうですね」

「そうだねー。あれ、あそこにあるのは何だろう?」

 サレナと話していたコルマリアが、数歩先の草地へ駆け寄り、何かを拾い上げた。

 拾い上げたのは高級そうなラベルが貼られたガラス製の瓶であった。

 奇妙なことにそれはまだ土汚れも苔も付着しておらず、捨てられてから間もないように見えた。

「お酒の瓶? 何でこんな場所に——」

 その言葉を聞いたレヴァリスは、疑問を頭に浮かべるよりも前にブラスターライフルを引き抜いて構える。

 同時に、背後でサレナの鋭い声が上がった。

「マリアちゃん、伏せて!」

「えっ?」

 その瞬間、コルマリアに赤いブラスター弾が直撃した。

今回から第4話となります、引き続きよろしくお願いします。


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