第3話 星路に潜む影 3
3隻の宇宙船が横並びに銀色の超空間から飛び出す。
それまで視界を満たしていた輝きが消え、無数の星々が瞬く漆黒の宇宙へと景色が切り替わった。
到着したアルカナリス星域の“サン・アルファーラ星系”は、星雲に取り囲まれた星域の入口にあたる星系だ。
この星系では恒星[サン・アルファーラ]を中心に6個の惑星が公転しており、その中で[アルファーニア]は内側から3番目の惑星であった。
レヴァリスは周囲の状況を警戒しながら、サブライトエンジンを起動して宇宙空間での航行を開始する。
「レーダーとスキャナーには特に反応がない。ひとまずは安全といったところだ」
『ほな、それなら[アルファーニア]に行きましょか』
『そうだね。陣形はいつものかい?』
「ああ、お前が先頭で俺が後ろに着く」
『了解、それじゃあ僕が先導するよ』
そう言うとエレフィエルの<ハーヴェリア>を先頭に、その後ろをエルメティの<ヴェイメルローク>が続き、後衛をレヴァリスの<ペイルライダー>が担った。
ここからは通常航行なら1時間ほどで[アルファーニア]に辿り着く予定であった。
「サレナ、念のため両側面を見張れ。特に小惑星帯が浮かんでいる方向を注意深く見るんだ」
「は、はい。両側面ですね」
レヴァリスの指示を受けて、サレナは砲塔を操作しながら機体の両側面を見るようにする。
<ペイルライダー>のセンサーは高性能だが、無数の岩塊が反射源となる小惑星帯では、自動識別にも限界がある。
小惑星の表面で動力を落として待機する船は背景に紛れやすく、見落とすことがあった。
不意の接近に備え、機首を向けずに迎撃できる旋回砲塔を活用する必要があった。
『ところでこの星系は随分と小惑星帯が多いね。通常航行じゃ迷路の中を進んでいるみたいだ』
『そうなんよ。そのせいで宇宙海賊がいないか、毎度ひやひやしながら[アルファーニア]に向かってたんや。今回は護衛がいてくれてえらい安心やで』
左右には大小無数の岩塊が連なり、遠方では小惑星同士が重なるように視界を埋めていた。待ち伏せする側にとっては、これ以上ない地形である。
銀河航路の関係上、アルカナリス星域の別の星系に行くにはこのサン・アルファーラ星系へ1度は出る形となっている。
レヴァリスは2ヶ月という短期間で6隻もの商船が消息を絶った理由として、やはりこの小惑星帯の存在が要因だと考えていた。
しばらく2つの小惑星帯の間を抜けるように進んでいたレヴァリス達だったが、襲撃者の気配はせず順調に[アルファーニア]に近づきつつあった。
ところがレーダーから何かを捕捉した電子音が鳴ると操縦室に緊張が走る。
「何かを見つけたのでしょうか?」
「さて、この反応は……中型の宇宙船だな」
船舶の認識信号も出ており、“商船<イオンライナーⅢ>”と表示されている。
『商船が近くを通っているようだがどう思う?』
「認識信号が偽物の可能性がある。ただ、向こうの進路は俺達とは反対側で距離も遠い」
『もう少し様子を見る?』
「そうだな、とりあえずは様子見といこう」
今回の目的は宇宙海賊と戦うことではなく、大事な積荷と商船を守ることが最優先事項である。
「エルメティ、<イオンライナーⅢ>は何度かすれ違ったことはあるか?」
『いやーこの船は知らんなぁ。そもそも中型貨物船やったら、この辺で向かう先は一番大きな開拓地のある[アルファーニア]のはずや。それとも帰路の最中?』
エルメティにも反応のあった船舶の情報を聞いたが当人も知らない宇宙船のようだ。
ただ、宇宙海賊などではなく[アルファーニア]と交易をしに来た普通の商船の可能性は捨てきれなかった。
レヴァリスは通信機を起動すると船内放送を行う。
「ヴェオル、すまないが操縦室に来てくれ。残りの3人は引き続き客室で待機するように」
船内放送をすると、すぐに後ろの方からドタドタとヴェオルが慌てて操縦室にやってくる。
「呼びましたかレヴァリスさん!」
「悪いが観測手の席に座って、レーダーを見張ってほしい。表示されている<イオンライナーⅢ>を監視してくれ」
「了解っす」
すぐにヴェオルは指示された通りに観測手の座席に着き、食い入るような目でレーダーを見つめ始める。
ひとまずヴェオルに監視を任せ、一行は[アルファーニア]への進路を維持する。
杞憂に終わればそれで良しだが、まだ向こう側がこちらを捕捉していないだけの可能性もあった。
しばらくは順調に進んでいたものの、突然ヴェオルの目つきが変わった。
「<イオンライナーⅢ>がこちらに回頭しました、こっちに来ます!」
その報告を聞いたレヴァリスは思わず悪態を吐こうとしたが、下級冒険者達の手前であるためひとまず飲み込んだ。
商船がこちらの存在に気づいたのは間違いなかった。
「まだ判断を下すには早いな。もしかしたら取引しようと近づいてくるだけかもしれん」
そう言ってから通信機を取り出してオープンチャンネルに設定する。
「接近中の船舶へ告ぐ。こちらは<ペイルライダー>、こちらに接近する目的を言え」
だが、こちらの問いかけに対して向こう側からの返答は来なかった。
もう1度通信を試みたが無駄に終わり、襲撃者である可能性がさらに高まった。
「相手は宇宙海賊と見ていいだろう。総員戦闘用意。ただし、こちらからは撃つな」
通信機に向けてそう言うと、場の空気は一気に張り詰める。
『あわわ、マジで商船じゃないんか!?』
「こちらの通信を無視したうえに近づいてくる以上、少なくとも友好的な商船とは考えにくい」
『ううっ[アルファーニア]まであともうちょいやのに……』
「ハイパードライブの冷却にかかる時間は?」
『まだ1時間ちょいかかるで。なあ、どうにかならへんのか?』
「小惑星帯のどれかに隠れていろ。どのみち迎撃するしかないようだ」
『わ、わかった。気ぃつけてな』
そう言うとエルメティを乗せた<ヴェイメルローク>は縦隊を離れ、ひとまず小惑星帯の中へと退避した。
小惑星の陰に入り、動力を必要最低限まで落とせばセンサーには捕捉されにくい。少なくとも戦場の真ん中にいるよりは安全だった。
「それから残りの3人は万が一の状況に備えてくれ。船体が損傷したり、怪我人が出たりしたらすぐ動けるようにしてくれ」
船内放送で客室の下級冒険者達に追加の指示を出すと、レヴァリスは迫りくる戦闘に備えた。
<ペイルライダー>は重なっていた主翼を展開して4枚の翼を広げ、<ハーヴェリア>も太陽帆を展開して表面にシールドを張って戦闘状態となった。
「レヴァリスさん、向こう側に動きがありました」
「どんな動きだ?」
「何か小さな機体が6機——いえ、12機現れました」
「やはり戦闘機を展開してきたか。母船をやる前にまずはそれから片付けるぞ」
レヴァリスはそう言うと<ペイルライダー>の航行速度を上げていく。
<ハーヴェリア>も並んで航行し、2隻は迫りくる敵戦闘機部隊に向けて直進する。
「サレナ、悪いがいきなりの本番だ。まずは落ち着いて相手の動きを観察しろ」
「は、はい。頑張ります」
そう言われたサレナは両肩をこわばらせて操作レバーを握り、敵戦闘機との会敵に備えた。
「エレフィエル、半分は任せたぞ」
『了解、そっちも頼んだよ』
互いの宇宙船はその言葉を合図に並走状態から、二手に分かれて独立した動きに移る。
「敵戦闘機が二手に分かれました。間もなく接触します!」
「結構なことだ。よし、始めるとしよう」
ヴェオルからの報告を聞いて敵が予想通り分かれたと知ると、操縦桿を握り締めてさらに機体を加速させていく。
前方から現れたのは6機の戦闘機であり、<ペイルライダー>を確認するや一斉に攻撃を開始した。
正面から放たれる弾幕を潜り抜け、まずは敵戦闘機の1機の背後を取って狙いを絞る。
しかし、機動性では向こうが上らしく、敵機は鋭く機首を切り返して照準から逃れた。
「やはり“ジャンクファイター”か。機動性ではあっちが上だな」
敵戦闘機の姿を目視したレヴァリスは忌々しそうに呟く。
ジャンクファイターは廃船から剥ぎ取った部品を継ぎ合わせた宇宙海賊御用達の戦闘機だ。
防御シールドはおろか生命維持装置さえ持たない粗悪品で、肝心の操縦者の生命維持は宇宙服頼みである。
しかし、それだけに機体は軽量でその速度と機動性だけは侮れなかった。
そのため宇宙海賊は多数の機体を一斉に投入し、その手数で敵を翻弄する戦術を好んだ。
「レヴァリスさん、相手の動きが速すぎて攻撃が当たりません!」
「無駄に弾を撃つな。相手の動きを予測してから撃て」
サレナが焦りながらそう叫ぶと、レヴァリスは落ち着いた声音でアドバイスを行う。
とはいえ、いきなりの実戦では流石に慌てるのは無理もないことであった。
<ペイルライダー>に纏わりつくように敵戦闘機部隊は攻撃を仕掛けてくるが、強力なシールドに阻まれ今のところは致命的な一撃をもらっていない。
エンジンルームのエレジャーから、シールドの状況を知らせる電子音が届く。着弾が予測される箇所へ優先的にエネルギーを配分してくれるおかげで、防御は持ちこたえていた。
とはいえ、このまま攻撃を受け続ければいずれ船の防御シールドエネルギーも尽きてしまう。
そこで急減速と同時に姿勢制御をかけ、機首を一気に180度反転させる。
追ってくる戦闘機を目掛けて主砲である4門のヘヴィレーザーキャノンを撃ち放った。
4機は直前で回避したが2機はそのまま放たれたヘヴィレーザーの餌食となり、バラバラになって爆発四散した。
「まずは2機だ」
そのまま機体を再加速すると、散開した敵機がまた集まる前に切り込んでいく。
僚機が撃墜されて敵戦闘機部隊もかなり慌てているようだ。何とか集合しようとしているようだが、それを阻止して敵の機体をなるべく孤立させる。
敵戦闘機の1機が焦って離脱しようとして隙を見せると、レヴァリスは容赦なくヘヴィレーザーを撃ち込んで仕留めた。
残る3機はその隙に編隊を組み直し、<ペイルライダー>の側面を突こうと回り込む動きを見せる。
「サレナ、やつらの編隊に向けて弾幕を張れ。無理に当てなくていい」
「わ、わかりました!」
レヴァリスの指示を受けると、サレナは敵編隊の進路を塞ぐように副砲で弾幕を張った。
飛んでくる弾幕を回避しようと編隊が乱れるのを狙い、レヴァリスは機体前部に取り付けられたビームレーザー砲を照射する。
本来は着陸地点の掃討や、地上目標への近接攻撃用の武装であるがレヴァリスはこの武装を宇宙船相手にも用いていた。
薙ぎ払うような一撃によって2機の戦闘機は真っ二つに引き裂かれた。
最後の1機は逃げ出そうとしたが、それはサレナの放った副砲の攻撃に巻き込まれ火花を散らしながらやがて爆発した。
「よし、こっちは片付いたな。サレナも1機撃墜とは幸先が良いな」
「偶然当たった感じです。やっぱり訓練と実戦じゃ全然違います」
「最初のうちはそんなものだ。俺だって宇宙海賊との初戦はひどい有様だった。とにかく1機は落とせたんだ、自信を持て」
そう言った後に通信機を操作し、エレフィエルに繋ぐ。
「エレフィエル、こっちは片付いた。そっちはどうだ?」
『あと半分ってところだよ。流石に君の方が早いね』
「そっちに行くか?」
『いや、大丈夫だ。それより敵の母船がそろそろ来るんじゃないか?』
「それじゃあ俺は先にそっちの相手をしてくる」
通信を切るとすぐにヴェオルの方を振り向く。
「敵船の動きはどうだ?」
「こっちに向かってきています。いや、待ったこれは——」
ヴェオルがレーダーを見て目を見開き口をぽかんと開けた。
「どうした?」
「さ、さらに敵戦闘機が出現しました、数は12機もいます!?」
その報告を聞いたサレナも驚いた様子を見せたが、一方でレヴァリスは冷静に思考を巡らせる。
数のうえでは明らかにこちらが不利であるが、それよりも24機もの戦闘機を積んでいた母船の方が気になっていた。
おそらく<イオンライナーⅢ>は鹵獲された商船で、それを無理やりジャンクファイターの母艦として改造したものと思われる。
また12機の全てがこちらに向かうとも限らず、かといってエレフィエルの方に敵の増援を向かわせるのもまずいと考えた。
「狙いは決まったな」
そのまま機体を加速させると、敵戦闘機の群れへ機首を向ける。
敵戦闘機が、突っ込んできた<ペイルライダー>目掛けて一斉に砲火を浴びせる。レヴァリスはその弾幕を潜り抜けると、後方の母船へと突き進んだ。
レヴァリスの狙いは敵戦闘機ではなく、後方からやってくる母船の方であった。
狙いが母船だと向こう側も認識したらしく、全ての機体が一斉に進路を変えて<ペイルライダー>の追跡に入る。
「あいつらは付いてきているか?」
「はっ、はいっ。全部こっちに来てるっす」
ヴェオルの報告を聞くと、そのまま機体の速度をさらに上げて母船を目指す。
旋回性能でこそ劣るが、直線加速では<ペイルライダー>に分があった。後を追う敵戦闘機部隊はあっという間に引き剥がされてしまい見えなくなった。
そして前方に見えてきた宇宙海賊の母船は、まるで蜂の巣のような歪な形に改造が施された商船であった。
<イオンライナーⅢ>の原型は、銀河系でも最も普及している“CRホークランナー”と呼ばれる中型貨物船であったようだ。
戦闘機を多数収容する空母化に伴い、船首部分を見なければ原型すら分からない有様だった。
「まったくとんだ醜女を作ったものだ」
その母船を目視したレヴァリスは侮蔑を込めて呟く。
そして中距離まで接近すると4門のヘヴィレーザーキャノンによる攻撃を開始する。
母船側もすぐに反撃を開始してきたが、その大きさの割に砲塔の数は少なく<ペイルライダー>には掠りもしなかった。
「サレナ、お前も攻撃を加えろ。的はでかいから撃てば当たる」
「はっ、はい!」
サレナも副砲を連射し、敵船へ砲火を浴びせる。
まずは船体を保護する防御シールドを剥がすことが先決であり、<ペイルライダー>は接近しながらヘヴィレーザーによる集中砲火を叩き込む。
「敵戦闘機部隊が追いついてきます!」
「母船にさらに近寄るぞ」
引き剥がした戦闘機部隊が追いついたことを知ると、レヴァリスは母船への近距離攻撃に切り替える。
ビームレーザー砲を一点へ集中照射し、防御シールドへの負荷をさらに高めていく。
一方で戦闘機部隊は母船への接近を許してしまい、無秩序な動きで<ペイルライダー>の後を追う。
しかし、迂闊に攻撃すれば母船に攻撃を当ててしまうため、戦闘機部隊はまともに攻撃できない有様であった。
やがて観測装置に表示されていたシールド反応が消失する。次の瞬間、ビームレーザーが船体を直接焼き、着弾箇所からは爆発が上がった。
「表面のシールドを引き剥がしたぞ。このまま落としたいところだが……」
さすがに防御シールドが消失したとなると敵戦闘機部隊もなりふり構わなくなり、一斉に<ペイルライダー>への攻撃を開始した。
一旦距離をとろうとしたが、機体の上方から突然3機のジャンクファイターが攻撃を仕掛けてくる。
サレナは慌てて副砲を旋回させ、突撃してくる3機に向けて砲火を集中させた。
2機は副砲の直撃を受けて爆散し、残る1機も翼部分に直撃を受けたが、火を噴き上げながら錐揉み状態で<ペイルライダー>に突っ込んできた。
直撃すると同時に大きな衝撃が船体を揺らし、レヴァリスは直ちに機体のダメージを船体のモニタリング画面で確認する。
「やれやれ、最後まで厄介な奴だ。だが、損傷は軽微だ」
幸いにも直撃した箇所は軽度の損傷を受けたようだが、それでも応急修理程度はすべきと判断した。
「ビープ、船内からできるだけの応急修理を頼む」
『了解! 了解!』
レヴァリスは待機していたビープに連絡して、機体の損傷箇所の修理に当たらせる。
ビープの役割はこのような場合の応急修理であり、また非常時には船外に直接出て修理を行うことさえあった。
防御シールドはエネルギー兵器には強い反面、実体物の衝突までは完全には防ぐことができない。
当たりどころが悪ければ<ペイルライダー>とて無事では済まなかった。
「ごめんなさい、私のせいで……」
「気にするな、3機も叩き落とせれば上出来だ。今は目の前の敵に集中しろ」
そう言うと<ペイルライダー>は再び母船への接近を開始する。
ところがすぐに操縦席の端末から電子音による警報が鳴り響く。
「これって何の音っすか!?」
「機体がロックオンされた時の音だな」
驚くヴェオルにそう答えると機体を反転させ、すぐに加速して距離を取ろうとする。
しかし、母船は後部に取り付けられたミサイル発射管から、数十発のシーカーミサイルを<ペイルライダー>目掛けて発射した。
「どうやら蜂の巣を突きすぎたらしい」
「そ、そんな冷静に言っている場合じゃないですよ!」
レヴァリスの言葉にサレナは思わず悲鳴を上げるように言う。
<ペイルライダー>の後方からはシーカーミサイルだけでなく戦闘機部隊までが追ってきていた。
だが、最大船速を維持しながら弧を描くように母船へと再び進路を取る。
「このままじゃミサイルに追いつかれます!」
「問題ない」
レヴァリスがサレナにそう言うと母船目掛けて直進し、激突するとばかりの距離まで<ペイルライダー>を近づける。
衝突寸前まで接近したところで機首を上げると同時に、レヴァリスは操縦席にあるスイッチを叩き込むように押す。
次の瞬間、<ペイルライダー>の姿と熱源反応が消失する。
そのまま母船の上方へ抜け、一気に距離を取った。
標的を見失ったシーカーミサイルは、直前までの軌道を維持したまま飛翔を続ける。
その進路上にあったのは宇宙海賊の母船であった。
「押し売りは返品するだけのことだ」
レヴァリスがそう言った直後に、母船には自ら放ったシーカーミサイルが殺到する。
大半のシーカーミサイルが外付けの格納区画へ着弾し、内部に積まれていた弾薬や戦闘機用燃料が連鎖的に誘爆を起こす。
船体各所から炎と破片を噴き上げ、やがて誘爆が動力炉区画にまで達するとついには爆沈した。
後方から追っていた戦闘機部隊も突然広がった火球と大量の残骸を避けきれず、次々と機体を引き裂かれていった。
あれだけいた戦闘機のうち、残ったのは僅かに3機だけであった。
そこへ、自分を追っていた残りの敵機を片付けた<ハーヴェリア>が駆けつけてくる。
『おいおい、僕の分はこれだけかい?』
そのジャンクファイター達も、エレフィエルによってあっけなく撃墜された。
レーダー上からも戦闘可能な敵性反応がすべて消失し、襲いかかってきた宇宙海賊は全滅したのであった。
敵の反応が消失するとレヴァリスはクローキング装置を停止させた。
「レヴァリスさん、今のは一体?」
「クローキング装置だ、サレナ。1年前にブラックマーケットで買ったものだ。どこかの企業の試作品でな」
「そんなものをこの宇宙船は積んでたんですね。あれ、ブラックマーケットで買ったって……それって安全なんですよね?」
「まあ少し曰く付きの代物ではあるが——」
そうレヴァリスが言った途端、突然船内中に火災警報が鳴り響いた。
「エンジンルームから出火っす!」
ヴェオルが宇宙船のステータスが表示された画面を見て叫んだ。
監視カメラを見るとエレジャーが消火剤を撒きながら、まるで悲鳴のような甲高い電子音を上げていた。
「悪いが誰かエンジンルームに行って消火作業に当たってくれ」
船内放送を流すと客室に待機していた3人が直ちにエンジンルームへ向かった。
監視カメラには備え付けの消火器を手に、消火作業へ加わる3人の姿が映し出される。
エレジャーが出火の段階で対応していたために消火はすぐに完了した。
その後にシンガーもやってきたがエンジンルームは消火剤まみれになっており、監視カメラに向かって抗議するかのような動きを見せた。
エレジャーも少し焦げたアームを動かして明らかに不服そうな態度をとった。
「やはりこうなったか……」
「こうなったって、もしかして出火の原因ってそのクローキング装置なんですか?」
「何せ試作品だからな。高出力で使うと冷却系が過熱する。だからこそ普段は使わないようにしている」
「そんな危ないものをよく使えますね……」
「今回はミサイルを食らうよりマシだと判断した」
<ペイルライダー>に搭載された試作型のクローキング装置は、機体の姿だけでなく、推進部を含む熱源反応も隠してしまう。
熱を追うシーカーミサイルは、そのため標的を見失ったのだ。
「次に使う時までには追加の消火装置を取り付けるとしよう」
「そもそも使わないほうが良いのでは?」
「こいつはかなり高い買い物だったんだ、元は取らないとな」
サレナが呆れるように言うが、レヴァリスは笑いながらそう返した。
『どうやら敵の反応はもうないみたいだ』
「ああ、残敵はいなさそうだ。それならエルメティを呼び戻すとしようか」
レヴァリスは通信機を操作すると<ヴェイメルローク>へと回線を繋ぐ。
「宇宙海賊を全滅させた。こっちと合流してくれ」
『了解、そっちに合流するわー』
連絡を入れてからしばらくして<ヴェイメルローク>は、隠れていた小惑星帯からレヴァリス達の元へと合流する。
『何や随分ドンパチやったんやな』
「宇宙海賊の母船1隻と、戦闘機が24機ってところだ。道理で消息を絶った商船が多いわけだ」
『ひえーおっかないなあ。でも、これなら当面は安全ってことやな!』
襲撃してきた宇宙海賊を全滅させた報告を受けると、エルメティは上機嫌に声を弾ませる。
それから3隻は縦隊を組んで再び[アルファーニア]へと進路をとった。
今回で文字数が10万文字を超えました。
ちょっとした単行本並になりましたが、これだけ書くのはやっぱり大変ですね。
あとタイトルがシンプル過ぎたので、これを機にサブタイトルを付けました
感想、レビュー、ブクマ、評価をお待ちしてます( ・3・)b




