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青藍のストライダー ~星々を駆ける冒険者たち~  作者: Omega Blue
第2話 帰還と旅立ち

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第2話 帰還と旅立ち 11

 そして翌朝、レヴァリスとサレナはクロムポート宇宙港の141番発着場を訪れた。

 発着場には既に地下格納庫から移動された<ペイルライダー>と、星間商人の<ヴェイメルローク>が並んで駐機していた。

「ようし、コンテナを中に運んでくれ。おいおい、ゆっくりと運べよ。頼むからゆっくりとだ」

 誘導員のアルトンが、レヴァリスのオートロイド達に<ペイルライダー>への積み込みの指示をしていた。

 そして積荷の運搬を担うリフトロイドである“フリンカー”、“スパーキー”、“シャイニー”が慣れた手つきでコンテナを積み込んでいた。

 3体はいずれも丸みを帯びた箱型の小型機ながら、強力なリパルサービーム装置を搭載していた。

 そのため自重をはるかに上回る物体を浮かせ、容易に運搬することができた。

 与えられた仕事にかなり熱中しているのか、甲高い機械音声を上げながら、機体側面の表示灯を忙しなく点滅させていた。

 アルトンはそんなテンションの高いリフトロイド達を見てヒヤヒヤとしていた。

「おっ、ようやく来たかレヴァリス」

「朝からうちの連中の相手をさせてすまないな。積み込みは順調そうか?」

「ああ、ギルドの貨物コンテナは手筈通りに今積み込んでいる。しかし、相変わらずこのチビ共はすごいな。ついさっきまで隣の商船の積み込みもやってたのに、疲れ知らずというか」

「機械にこう言うのも変な話だが、荷物を運ぶことが生理的欲求みたいなものだからな」

 嬉々として働く3体を見ていれば、妙な比喩ながら、それが一番しっくりきた。

 最後の貨物コンテナを船内に格納すると、リフトロイド達は歓声と共に一列縦隊で船内に戻っていった。

「そういえば、星間商人の方はどちらにいるのですか?」

「いや、今は船内にいるはずだ。確かそっちのオートロイドを1体連れて行ってたのを見たが……」

 サレナの問いにアルトンがそう言うと、ちょうど<ヴェイメルローク>の側面ハッチが開き、船主であるエルメティが浮遊するオートロイドを伴って現れた。

 姿を見せたエルメティはサレナよりは身長が低かったがガッチリとした体躯をしており、顔だけでなく腕や脚にも入れ墨を入れていた。

 細い瞳は鋭さこそ持っていたが表情は柔らかく、レヴァリスとサレナの前に臆さず堂々と近づいてきた。

「やあ、はじめまして。うちが商人のエルメティいいます。貴方が護衛をしてくれるレヴァリスさん? えっと、そっちの嬢ちゃんは……」

「私はサレナといいます。レヴァリスさんと同じ冒険者です」

「おーそっかそっか、今日はよろしくなあ」

 宇宙船から現れたエルメティはにこやかに2人に挨拶したが、その言葉には銀河標準語と星間商人達が主に使う商業語が混じっていた。

「いやあ助かりまんがな。最近はパイロット共が値段を釣り上げていて、このままじゃ商売があがったりで」

 どうやらエルメティがギルドに護衛を依頼したのは、費用を抑えるためでもあるらしい。

 グラ=ナヴァン大戦以降、艦艇不足によって警備艦隊の巡回範囲は縮小しており、治安の悪化した航路が増えていた。

 その結果として民間の護衛船に対する需要が高まり、護衛費も高騰しているのである。

「ああ、そうだ。おたくのオートロイドをちょっとばかし借りてね。いやあこの子のおかげで船内がピッカピカで、うちも1台欲しいですわ」

「何か粗相をしてなきゃいいんだが」

「とんでもない、お茶まで淹れてくれてほんま助かったわ」

 エルメティの周りを浮遊していたのはクリーニングロイドの“シンガー”であった。

 クリーニングロイドとは宇宙船の船内外の清掃業務用に作られた機種である。

 宇宙船の清掃作業は本来重労働だが、このオートロイドは単独で<ペイルライダー>の全ての清掃作業を担える性能を持っていた。

 どうやらレヴァリス達が来るまで、<ヴェイメルローク>の船内で清掃活動をしていたようだ。

 褒められたと思ったのか、シンガーは上機嫌に機械音声で鼻歌を歌っていた。

「こっちの発進準備は済ませたし、あとはそっちが準備できてればいつでも出発できるで」

「相乗りの冒険者が到着次第すぐに発つ予定だ。悪いがそれまでは待っていてくれ」

「あいよ。それじゃあ船内に戻りますわー」

 そう言ってエルメティは手を振って再び船内に戻って行った。

 シンガーも仕事が終わったのか、ふよふよと<ペイルライダー>の船内へと戻っていく。

 それからしばらくして、ルーゼルの言っていた下級冒険者4人組が発着場に到着した。

 現れたのは厚い白色の体毛を持つ狼を連想させる“アヴィゼル”の青年、黒い肌をした近人間種“アウロラン”の女性、大型の狙撃銃を背負った細身の昆虫型種族の“アルディマンティス”、冒険者街で出会ったコルマリアの4人だった。

「サレナ! また会ったね!」

「マリアちゃ——きゃっ!?」

 コルマリアはサレナの姿を見るや目を輝かせ、荷物をその場に下ろすなり勢い良く抱きついた。

 サレナはいきなり抱きつかれたせいであわや後ろに倒れるところであった。

「自分はアヴィゼルの“ヴェオル・フォカテ”っす。今日はよろしくお願いします、レヴァリスさん」

 4人組のリーダー格と思しきヴェオルという青年が、すぐにレヴァリスのもとへ挨拶に来た。

 初めて目にする種族だったこともあり、レヴァリスは興味を引かれてヴェオルを見つめた。

「ああ、客室は用意してある。ビープ、案内してやれ」

「ツイテコイ! ツイテコイ!」

 そう言うといつの間にか足元に来ていたビープが、冒険者4人組に向かって手招きした。

 4人は一瞬顔を見合わせてから、ビープの後についてぎこちなく<ペイルライダー>へと入っていった。

「マリアちゃんも来ていたのは意外でした」

「何かと縁があるものだな。よし、俺達も船に入るか」

「はい、行きましょう」

 2人もまた<ペイルライダー>の操縦室に移動し、いよいよ旅立ちの時を迎える。


 操縦席に着いたレヴァリスは、まずメインシステムを起動する。

 エンジンルームにいる“エレジャー”と呼ばれるオートロイドに通信を入れ、出発に備えて船内の機能をチェックするように伝える。

 エレジャーは、宇宙船の操縦補助やシステム管理を担う“シップロイド”に分類される機種であった。

 普段はエンジンルームからあまり動かず、<ペイルライダー>の各システムを常時モニタリングしていた。

 しかし、機体に故障が発生すると直接出向き、損傷箇所の修理を行うこともできた。

 このエレジャーのおかげでレヴァリスは煩わしいシステム管理をせずに済み、宇宙船の操縦や戦闘に集中することができた。

「船内のシステムは全て正常。燃料も満タン。武器システムも異常なしだな」

 エレジャーから点検結果を受け取ると、操縦席にある通信機でエルメティに出発の準備ができたと知らせた。

『あいよ了解、こっちも出発するで』

 エルメティはそう言うと通信を切った。

「141番発着場のレヴァリスより管制塔へ。こちらの<ペイルライダー>と<ヴェイメルローク>の発進を許可されたい。上昇経路の情報を送る」

『管制塔より冒険者レヴァリスへ。経路情報を受信した。これより空域と軌道上の安全確認を行う。誘導員アルトンの指示に従い順次離陸するように』

 そして各種システムの最終確認を行い、機体のリパルサーエンジンを起動する。

 低い振動が機体を通して伝わってくると、レヴァリスは通信機の設定を操作して船内放送に切り替える。

「これより<ペイルライダー>は[アルファーニア]に向けて出発する。重力圏を離脱するまでは座席で待機してくれ。到着まではおよそ8時間の予定だ」

 そう言ってから正面を向くとアルトンは既に機体の前方に移動していた。

 レヴァリスが手を振ると、アルトンは誘導灯を使って待機を命じる合図を返した。

 しばらく管制塔の方角を見ていたアルトンだったが、やがて管制から許可を受けたアルトンが誘導灯を振り、発進を促した。

 発進の合図を受けたレヴァリスは、<ペイルライダー>をゆっくりと浮上させ、地面から十分に離れたところで着陸脚を格納した。

 そして指定された上昇経路へ機首を向け、軌道上を目指して加速していく。

『良い旅路をレヴァリス』

「ああ、また会おう」

 地上のアルトンと別れの挨拶を交わすと、レヴァリスはエンジンの出力をさらに上げていく。

 後方には続いて離陸した<ヴェイメルローク>が、一定の距離を保ちながら航行していた。

 やがて<ペイルライダー>は大気圏上層を抜け、リパルサーエンジンから宇宙航行用のサブライトエンジンへと切り替えた。

 惑星の待機軌道に入り<ヴェイメルローク>と速度を合わせると、2隻の宇宙船に向かって別の宇宙船が近づいてくる。

 輝く黄金色の太陽帆を正面に掲げ、現れたのは優雅な姿をした“イファリア級ソーラーセイラー”だった。

 この太陽帆を備えた宇宙船はセレナール独自の船として知られている。

 宇宙航行に耐える特殊な処理を施した母星産の木材が使われており、船体の表面には加工後も残された独特の木目と艶が浮かんでいた。

 サレナは操縦室からその美しい造形に目を輝かせていた。

『やあレヴァリス、待っていたよ』

 この宇宙船の船主はエレフィエルであり、一足先にクロムポートを発進して待機軌道に入っていたらしい。

『いやーびっくりだわ。もう1人同行者がいるとは聞いてたけど、セレナールの方とはこりゃたまげたわ』

『僕はエレフィエル。今回の旅路に彼と同行させてもらうよ』

『うちはエルメティ・ライジャヌといいます。上級冒険者が2人も守ってくれるとか、こりゃお得ですなあ』

 上級冒険者がさらにもう1人付いてくることに、エルメティの声は先ほどよりも一段と弾んでいた。

 合流した3隻の宇宙船は編隊を組みながら、安全に超光速航法へ移行できる宙域へと移動する。

 超光速航法を行う際はなるべく惑星から離れるのがセオリーで、これは重力圏の影響を受けて到着地点の座標が狂わないようにするためだった。

「この辺でいいだろう。超光速航法の用意をしてくれ。向こうで会おう」

『了解、超光速航法に入るよ』

『あいよー、ほな向こうで』

 レヴァリスの合図と共に各船が超光速航法へ入る準備を始める。

 3隻は互いに十分な距離を取り、それぞれの進入座標を確認した。

 エレフィエルの宇宙船は前方に展開していた黄金色の太陽帆を畳み、船体内部へと収納した。

 <ヴェイメルローク>も大きな主翼を後方へ折り畳み、超光速航法に備える。

 <ペイルライダー>は4枚の翼を重ねるように閉じ、宇宙航行用のサブライトエンジンを停止した。

 ふと隣の席に目を向けると、サレナが緊張した面持ちで正面を見据えていた。

「どうかしたか?」

「あっ、いえ……新しい場所に行くのはワクワクもするけど少し不安で」

「そうか。緊張感も大事だがもう少し力を抜け。本番は向こうに着いてからだからな」

「は、はい」

 レヴァリスにそう言われるとサレナは深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

 [アルファーニア]までの航路座標を航法装置に入力し、ひと呼吸置いてからレヴァリスは超光速航法に入るためのレバーを力強く引いた。

 3隻の宇宙船はほぼ同時に超光速航法へ移行し、[アルファーニア]への旅が始まった。

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