第五十三話:買い物帰りのひとコマ
ドライブスルーでマックを受け取り、食べながら帰った。
その道中、ずっと冷蔵庫で鍋の材料を寝かせておくわけにもいかず、綾香ちゃんも食べられそうな辛くない鍋の素を買うことにした。ついでに日曜日の昼飯と晩飯、月曜日の弁当の具材まで。
「おかしいねー」
七海の言葉に賛同するように、俺もため息をつく。家に帰ったのは十七時。移動が長かったとはいえ、道中のスーパーでだいぶ時間を使ったし仕方ない。というか、脱線理由のほとんどは七海なんだけど。
「ほら、七海。荷物持って」
さすがに買いすぎだ。絶対にいらないものまで買って、節約じゃない自炊。俺は止めたものの、次から次へと七海から商品がカゴに放り込まれるから防ぎきれなかった……。
「あーい」
適当な返事をしながらも、七海は見えた一番重い袋を持った。昔、母親と買い物に行ってた頃の名残らしい。
「ほれ。軽いの持ちな。俺、現場仕事で鍛えてるし」
施工管理は事務仕事や見てるだけの作業が多くて、体はあまり使わない。ぶっちゃけ資料作成でデスクに張りついて腰も痛いし、重いのなんて持ちたくもない。
……けど、それじゃ七海の休日が休日にならない気がして、俺が率先して持った。
「ぷよ腹のくせにー。やーい、デブー」
照れ隠しなのか、ただふざけたい気分だったのか。軽い荷物に持ち替えて玄関まで走っていく七海に、暴言を吐かれた。失礼な。BMIは問題ないし。塩分とコレステロール値は病院で言われたけど……。
「うるせー。最近ちょっと痩せたからって調子のんなー!塩分は七海も病院で注意されてただろ!」
ムッとした顔で言い返すと、七海はぐっと押し黙ったような顔でドアの鍵を開けた。これは勝った。
「とっても素敵ですね」
どや顔で残りの荷物を持って車の鍵を閉める。すると、横にいた綾香ちゃんにそう言われ、肩がビクリと跳ねた。
「そんないいもんじゃないよー?綾香ちゃんも男には気をつけなー」
そんなことを言う七海の顔を、俺と綾香ちゃんは見て固まった。純粋な笑顔に、幸せそうな雰囲気をまとっている。
もしかして、俺……いや、俺たち、やり直せるだろうか。
その笑顔が、いい兆しに見えた。今までよりもっと、ずっと頑張ろうと思えた。勝手に落ち込んで懺悔する日々に、大きな希望が差し込んだ気がした。
「なに二人とも。お化けでも見た?重いよー」
軽い荷物を重そうに見せながら、七海が俺たちを急かす。
「分かってるよ。綾香ちゃんも早く入ろ」
「そうですね」
控えめに笑う綾香ちゃんを促して、自分も軽い足取りでドアを目指した。




