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玉の輿に乗った派遣施工管理と、眩しすぎる彼女  作者: 伊織


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第三十四話:苦渋の唸り声

「綾香ちゃん、化粧品は一通りある?」


 服屋を転々としながら、七海がふいに口を開く。


「え、っと……」


 その反応は「持ってない。でも言ったら七海が買うって言い出しそう」って顔で、俺もつい苦笑いする。


「プチプラでも一式そろえると一万近いよ~。進学するにしろ就職するにしろ、高校出てからメイク覚えると、周りとの格差に悶絶するぜお嬢さん」


 悶絶してきたであろう七海の顔が浮かんで、思わず笑いそうになる。


「自分と他の子が、絵の具塗ってんのか泥塗ってんのかの違いくらい悶絶したわよ。おばさんは……」


 そういえば出会った頃の七海って、化粧してるのかしてないのかよく分からなかったな、と思い出す。ナチュラルメイクとか、そんな次元じゃない。世の中の女性を敵に回しそうで怖いけど、あえて言うなら――寝起きすっぴん(笑)みたいな感じだ。察してくれ。


「アイシャドウとリップ以外はプチプラだけど、ごめんねー」


 七海の言葉に、そんなにやばいのかと素直に頷く綾香ちゃん。ま、七海サンがご機嫌で奢ってくれる時は、奢ってもらいな。金欠になると俺に土下座して「貯金おろしていい?」って聞き始めるから。ほとんど自分で稼いだ金なんだから、使えばいいのに。


「ぐっ……!」


 プチプラコスメとやらを見に行く道中、七海がいつも使ってる化粧品の店が視界に入る。七海は店の前で足を止め、苦渋みたいに声を漏らした。


「下地、コンシーラー、チーク、パウダーケース、パウダー……全部買ったら余裕で五千円以上が飛ぶ」


「オルビス信者なんだよ、クソッ!」と呻くその姿が、二十九歳にはとても見えない。恥ずかしくて俺は一瞬、他人のふりをした。


「おい、七海。キャンメイクとかでいいんじゃないのか? パケかわいいらしいし、綾香ちゃんの好みドンピシャだろ?」


 かれこれ五分は立ったまま格闘してる七海に呆れて、声を掛ける。


「え、いっちゃん……浮気? クズだけど浮気だけはしない男って評価してたのに……。あと浮気相手にキャンメイクはやめな。Diorのリップくらい買ってやれ」


 俺から聞かないようなメーカー名が飛んできて、しかも浮気を疑われた。冤罪すぎて、眉間を小突いて手を引く。


「綾香ちゃん行こ。ごめんね。こういうおばさんなんだよ。許してあげて……」


「は、はい」


 自分で言うのはいいのか、俺に「おばさん」って言われたのは不服なのか、七海はむっとした顔をする。


 言えないだろうな。さっきちらっと見えたオルビスですら千円超えが当たり前の世界で、「パケがかわいい」という理由だけで七海にキャンメイクを贈ろうとしてたなんて。たぶん喜んではくれただろうけど、飾って使われない気もする。


 ――オルビス信者、なんてのも初めて聞いたし。なおさら。

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