↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界一醜いS級冒険者がタイプです。~美醜逆転世界の受付嬢は今日も全力で口説きます~  作者: ぽぺっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

変な子(先輩目線)

私はしがないギルド受付嬢。最近、変な新人が来た。名前はリリア、仕事もできるしとってもかわいい.愛嬌もある。…少しばかり、いやかなり男の好みが変であること以外は優秀な子である。


 リリアが働き始めてからというもの、ギルドには一つ、新しい名物ができた。


 毎朝、S級冒険者アシュレイへ告白する受付嬢。


 その日も、ギルドの扉が開くなり元気な声が響いた。


「おはようございます、アシュレイさん!」


 


帳簿をつけていた私は、思わず手を止める。


 視線の先では、銀髪の青年が露骨に眉をしかめていた。


 彼はリリアを一瞥すると、何も言わず受付を通り過ぎる。


 それでもリリアは懲りない。


 にこにこと後ろをついて歩き、「今日も好きです!」と満面の笑みを向ける。


 対するアシュレイは、煩わしそうに舌打ちを一つ。


 そのまま別の受付へ向かっていった。


 周囲では、それを見ていた冒険者たちが小さく笑っている。


「また始まったな。」


「今日で四日目か?」


「よく心折れねぇよ。」


 誰も止めない。


 止める必要もない。


 どうせ今日も、リリアが振られて終わるだけなのだから。


 私はため息をつきながら、書類へ視線を戻した。


 正直、最初は私も罰ゲームか何かだと思っていた。


 リリアは由緒ある商会のお嬢様だ。


 礼儀正しく、愛想もよく、仕事も覚えが早い。


 そんな子が、よりにもよってアシュレイ様に一目惚れするなんて、誰が信じるだろう。


 けれど、数日間見ていて分かった。


 あの子は本気だ。


 本気だからこそ、私は少しだけ心配になる。


 相手が、アシュレイ様だから。


 この国で彼を知らない者はいない。


 二十代という若さでS級に昇格した天才冒険者。


 一人で古竜を討伐し、王都を襲った魔物の大群を退けた英雄。


 数え切れないほどの功績を持ちながら、人々が彼を語るとき、真っ先に口にするのは実力ではなかった。


 ――世界一の醜男。


 それが、彼につけられた呼び名だ。


 この世界では、小柄で華奢な体つきに、一重で重たい瞼、小ぶりな鼻、丸い輪郭に分厚い唇の左右非対称な顔立ちが美しいとされる。


 王族貴族も、人気役者も、街の女性たちが黄色い声を上げる男性は皆、どこか丸みを帯びた可愛らしさのある容姿をしていた。


 反対に、ぱっちりとした二重に、高い鼻筋、シャープな輪郭に薄い唇、そして左右対称な顔。長身で鍛えられた大きな身体は、威圧的で恐ろしく、醜いものとされる。


 アシュレイ様は、その特徴をすべて持って生まれた。


 だから子どもの頃から、化け物だ、不吉だと囁かれて育ったという。


 本人から聞いた話ではない。


 けれど、長くギルドで働いていれば嫌でも耳に入る。


 容姿を笑うためだけに近づく者。


 好意があるふりをして、本気にさせて笑う者。


 そんな悪趣味な人間が、一人や二人ではなかったことも。


 だからアシュレイ様は、人を信じない。


 とくに、自分へ好意を向ける人間など。


 信じられるはずがないのだ。


 昼休みになり、私は食堂で向かいに座るリリアを眺めた。


 美味しそうにスープを飲む姿は、朝あれだけ振られた人とは思えないほど明るい。


 私は思い切って口を開いた。


「ねえ、リリア。」


 返事と一緒に、丸い瞳がこちらを向く。


「どうして、アシュレイ様なの?」


 しばらく考え込むように視線を泳がせたリリアは、やがて照れくさそうに笑った。


「だって、すごくかっこいいじゃないですか。」


 私は思わず苦笑する。


 やっぱり、この子だけは違う。


 世界中が醜いと言う男を、誰よりも美しいと言う。


 世界中が恐れる男へ、真っ直ぐ笑いかける。


 そんな人間を、私は今まで一人も見たことがなかった。


 だからだろうか。


 今朝、アシュレイ様がリリアを睨んだあの一瞬。


 あれは怒りだけではなく、どこか怯えているようにも見えた。


 ……もっとも、本人は絶対に認めないだろうけれど。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。