11/15
掴む手
あれは俺が大学生の仲間たちと肝試しに行こうとしてた時だった。山奥のトンネルが知る人ぞ知る心霊スポットらしく、リーダー格の奴の提案で5人で行く事になった。
俺は正直気乗りしなかった。怖いものは苦手だったし、仲間も地蔵に小便ふっかけるぐらいには素行不良だった。
しかしそれ以外につるむ人間もおらず大学生生活で孤立する事を恐れた俺は渋々行く事に同意した。
その当日の朝だった。俺は玄関で靴を履いた瞬間、その場から動けなくなった。驚いて足を見ると更に仰天した。
2本の手が俺の足首を強い力で掴んでいた。思わず甲高い叫び声を出して抵抗し、脱げだそうとしたが掴む力は一向に収まらず、仲間からの催促の着信にも出る事を忘れて必死に玄関で暴れた。
そして約束の時間を過ぎた辺りで手はフッと消え、俺は開放された。
翌日、その大学生仲間達は行方不明の1人を覗いて全員帰らぬ人となった。落石事故らしかった。
俺は時折思い出す。あの手は女手一つで俺を育てた母の手だったと。




