↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お兄様、過保護過ぎるのでは?  作者: 蜂蜜
蝶は光を求めた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/48

1 ねぇジリー

アドニス様の執務室で一緒に仕事をしていると、ふと思いついたかのように


「ねぇジリー」


そう俺を呼ぶ。

この言い方でオニイサマが呼ぶ時はたいてい良いことはない。

身構えながら次を待つ。


「エリーもさー、もう18でしょ。

そろそろ婚約者いるよねー。どうかな?」


え?婚約者?エレーナに?

食べるの大好きでいまだにお兄様に黙って裸足で野原駆け回ってるやつに?

つまみ食いしてディアナ様に諭されてたのに?

この前いかに授業サボって遊ぶかを考えてる奴が?

婚約者?


「まだ早いのではないでしょうか」

「いや、早くないよ。むしろスタートにもだいぶ遅れてるんだよ。ディーは16で結婚したし、妹のスーはもう婚約してるよ」

「うちはウチ、よそは他所です」

「いや三人ともウチの妹だから」


膝をつき、拳で床を叩く。


「無理です!!」

「そこまで?」

「はい!野原駆け回ってるんですよ、むしろ庭も駆け回って虫追いかけ回してるんですよ。

犬に待てって教える方がどれだけ楽か」

「ジリー、ポロッと失礼なこと言ってるからね。

でもさ、婚約者いたら、落ち着くと思うんだけどな」

「エレーナ様にはまだ早いです」

「じゃあもう何歳ならいいの?」


立ち上がり思案する。


「6…50…いややっぱり70で」

「ろくな縁談こないよ」

「でもまだ早いです」

「わかったわかった」


わかってもらえて一安心する。

アドニス様がクッキーを食べながら書類をさばいていく。

その書類を用件ごとにまとめていく。


「じゃあさ、どんなやつなら婚約者任せられる?」


それは…手が止まる。


「正直に良いですか」

「いいよー」

「剣の腕が世界一で魔術も世界一で、星が降ろうものならぶっ飛ばし、魔獣の群れがこようものなら薙ぎ払い、背はこの部屋の天井に届くぐらいで、筋肉はあればあるだけ。

社交的で全世界の語源喋れて、マナーをしっかりとされ

エスコートはもちろん」

「ちょっと待って、待って。

何その化け物。そんなのが義理の弟とか嫌なんだけど」

「エレーナ様を守るにはそれくらいないと」

「エリー何と戦ってんのさ。

もうさー、何がそんなに嫌なの、エリーとは仲良いでしょ」


それはもちろんはいと胸を張って言える。

俺が一番仲良い。そんなのは決まってる。


もう一つの質問について考える。

何が嫌?

俺は何が嫌なんだろう。

エレーナは貴族だ。

貴族は結婚し血を残すのが義務だ。

それは避けられない。


でもそれが嫌だ。エレーナとそのへんのチンケな男が喋るだけでは嫌悪感を抱くし、肌に触ろうものなら殺したくなる。

エレーナの横に男置くことを頭が拒否する。


「エレーナ様は自由に駆け回っていて欲しいです」

「大丈夫だよ結婚しても時々走り回るよ」

「嫌です!」


俺の大きい声に珍しくアドニス様がびっくりされクッキーを落としかけた。


「嫌なんです。恐れ多いとは思っております。

身分違いもわかっております。

どんな罰でも受けますから。

エレーナ様を連れていかないでください。

お願いしますなんでも言うこと聞きますからどうか、俺の光なんです」


再び膝をつき頭を地面に擦り付ける。

お願いしますお願いしますなんでも聞きますから。


「え、ちょっと待って。頭あげて」

「お願いします」

「わかったから落ち着いて」


本当に?

恐る恐る顔を上げると、アドニス様が困った顔をされていた。

わかってる。俺のような乞食がここにいること自体奇跡なのだ。

お願いしかも侯爵令嬢のエレーナをくださいなんて図々しいどころの話ではない。


「とりあえず座って、落ち着いたらもう一回最初から話をしよう」


深呼吸をし、椅子に座りなおす。

冷めた紅茶で喉を潤す。


「落ち着きました」

「えーもうなんかさ、最初から話噛み合ってなかった気がする。

ちゃんと聞くから落ち着いて答えてね」

「はい」

「なんかその返事まだ怖いんだけど…」


アドニス様も深呼吸を繰り返す。よしと言うと俺の目をじっくりと見て声をかけた。


「うちの次女エレーナ・リリーフロストの婚約者になってくれないか」

「嫌…え?誰と誰がですか?」

「だからウチのエレーナ・リリーフロストとギルバートがだよ」

「ギルバート…おれ!?」

「そう俺」


とお行儀悪く俺の方に指をさしてこくりと頷かれた。


え?俺?

え?身分は?俺貴族どころか出生もあやふやで。

親なんて見たことない、名前もなかった男だぞ。


「それが一番なしです」

「ジリーなんでそんな拗れてるのかな」

「でも、俺、何もなくて、名前すら持ってなかったんです」

「知ってるよ、ああーもうめんどくさいなー

わかった今日はとことん付き合ってあげる」


そういうとアドニス様は俺の正面に座られた。

ジャラジャラと魔力石がゆれる。


「まず一つ身分を気にしてるみたいだけど、僕クラスになれば身分なんて買える」

「ミブンカウ」

「そう、買える。だからあってもなくても関係ない。

もう一つ、これ以上の身分あるものは親戚にもいらない」

「ミブンイラナイ」

「そう、いらない。権力がうちに集まりすぎてるからね。

これ以上は周りとの不仲や亀裂をうむだけだ。

ここまでは良いね。他に何が不安なの?」

「俺は学もないしたいして強くもないです」

「学はあるよ。そこらの貴族よりいい家庭教師つけてたんだから」

「え!?いつのまにか」

「最初からだよ、エリーと一緒に学んだでしょう。

あれうちの国の最強家庭教師軍団。

それでも不安ならいくらでも学ぶと良い。

ジリーは賢いから大丈夫」


褒められてなんかくすぐったい気分でいると、「あと」と深刻そうな顔をされる。


「強さまぁ、武力ってことだと思うけど。

これはエリーと一緒にうちの母にしごかれたでしょ。

…あれついていけるだけでもそこらの騎士より強い。

たぶん小型のドラゴンとかなら倒せる」


え、ドラゴンって、え?

俺いつの間にそんな人間やめてた?

一緒に行動してるエレーナもまさか?


「そう、気づいたようだね。

エリーもジリーも人間ではないのだよ」

「え、え?じゃあ俺たちなんなんですか?」

「人間もどきだね」

「人間もどき…」

「特にあの人間もどきの妹を制御できるのはジリーだけなんだよ。

頼むから結婚して特別なことはいらない普通で良いから、いやむしろ普通の生活を送ってほしい」

「アドニス様…なんか俺でも良いような気がしてきました」

「ジリー!俺なんかじゃないよジリーじゃあないと無理だよ。あれもう。

だからさ、ね、とりあえず婚約しよ。

嫌になる前に話聞くからねーお願い」

「わかりました、よろしくお願いします」


アドニス様は良かったーと心底安心されたようだ。

エレーナを誰にも渡さなくて良いんだ。

本当に良かった。

ふと思ったことを聞く。


「エレーナ様いつの間に納得されたんですか?」


アドニス様が困ったように笑った。


「…まだ話してない」

「それは、その…俺断られることもあるってことですよね。

…やっぱりやめます、保留がいいです。

エレーナ様が50歳になるまで待ってください」

「大丈夫だから落ち着いて、ね、ね。

ああー君ほんと拗れてるんだから」


お兄様はクッキー好き

エレーナは執務が嫌で逃げ出し、ギルバートは捕まった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。