ある町の少女の決意
「マチルダちゃん、シチュー2皿上がったよ」
「はい、すぐ!」
カウンターの皿を受け取り急いで注文を運ぶ。
今日も炭鉱近くの食堂は忙しい。
あの日捕まり死を覚悟していたが、減刑され今は炭鉱近くの町で働いている。
父と兄は炭鉱へ朝も夜もなく働き、私は朝は炭鉱の事務を夕方は近くの食堂で働いている。
三人合わせても賠償金の月々返済を差し引いて、残るお金でやっと生活ができるくらい。
改めて罪の重さを感じている。
食堂の客がまばらになる頃、父と兄が仕事終わりに迎えにきてくれた。
女将さんがいつも三人分の食事をくれる。
それに甘えて三人で仲良く食事する。
お金もないしドレスもないし、お風呂は毎日入れない。
朝から晩まで働いていてきついはずなのに、私は今生きてると楽しいと思っている。
父や兄に迷惑以上の迷惑をかけておいて何をと言われるだろう。
ただロベルト様を追いかけていた頃より、ディアナ様に言われた一言を考える時の方が満たされている。
「貴女は何故ここにいらっしゃるの?」
私は何故ここにいるか。
自分にも家族にも他人にも向き合わず、考えなしにフラフラしていた。
そんな私に答えなどなかったのだ。
「貴女は何故ここにいらっしゃるの?」
ディアナ様、今なら何故ってちゃんと言えます。
最初は意味がわからなかったけど、本当は意味なんてないのかもだけど。
苛立ちの中にあった心配した声色を今なら分かります。
私が欲しかったものちゃんと分かりましたよ。
家に帰りさぁ寝るぞとなった時、覚悟を決め父と兄を呼び止める。
わがままで迷惑をかけておいてまた迷惑をかけるのは忍びないが、でもそれ以上に心が動いてしまった。
「お父様、私今日これを頂きました」
「これは魔力欠乏予防剤だな。
私たちも頂く。魔力石と魔欠石は採掘場所が一緒だからな。
それでこれがなんだ?」
「これはディアナ様が作られたお薬です」
ディアナ様という名前に二人が反応したがそのまま続ける。
大丈夫です。恨んでません。むしろディアナ様に感謝しているんです。
「私も人の役に立ちたいのです。
ディアナ様みたいにとはおこがましいですけど、知識はないけど魔力はあります。
ここにきて違和感を覚えたのはのは炭鉱は怪我も病気も日常茶飯事で誰もが軽視していることでした。
でも怪我も病気も辛いはずです。
どうにかしたいのです。
前の私だったらどうにかしたいと思うだけで他人任せでした。
今度こそ私変わりたいんです。
私、頭良くないけど、魔術苦手だけどそんなの関係ないくらい頑張りますから、治癒術師の資格を受けさせてください」
頭を下げる。
「いいよマチルダ。
頭を上げて、しっかり自分で考えられるようになったんだね」
「ああ、頑張りなさい」
頭を上げると三人ともなんだか涙目でちょっと笑えた。
まぁだからと言って仕事がなくなるわけではない。
女将さんにも許可を取って、お客のいないときなど合間合間に今は勉強している。
今日も今日とて働いたなーって達成感を感じながら家へとついた。
ポストに入りきらなくて玄関前にまぁまぁ大きな荷物が届いていた。
父と兄に運んでもらう。
宛先は私だった。
特に親しい知人もいないので頭にいっぱい?を思い浮かべながら包みを開ける。
中からは癒術師試験に関する本、調合の関する本、病気に関する本と高そうな本が何冊もあり目を丸くする。
それだけでなく、薬草を調合するための道具一式と乾燥した薬草数種が入っていた。
驚きながら何かないかと箱を探っていると小さなカードが出てきた。
『これから進む道に幸多からんことを』
名前は書いてなかったけど、わかっちゃいました。
あの日と同じ匂いがしましたものディアナ様。
涙が溢れてくる。
「貴女は何故ここにいらっしゃるの?」
ディアナ様、私ちゃんと自分の足で立ってます。
これからは自分の意思で自分の足で歩いていきます。
マチルダの憧れで初恋(無自覚)はディアナで
ロベルトはアイドルみたいな存在だったと思う




