イタズラ(殿下とスピカのその後)
イタズラして困らせるのって、いい大人の男性はしないはずだ。
それも婚約者に子供じみたことしないと思う。
今日も殿下にしてやられた。
プレゼントを開けたらびっくり箱で、驚いて椅子から転げるのを、たいそう愉快そうに笑っておられた。
ノクスでさえ、女の子にはしないのに。
いい大人の男性のくせにと思ってしまった。
揶揄うのが面白いがただそれだけ、私のこと女性と思ってないのではないだろうか。
なんかそれは面白くない。
こんだけ殿下に時間を使っているのだから、いい加減振り向いて欲しい。
お姉様達と話して、殿下の良いところを見つけられたのだ。
それを見るようになる何となくだが、少しずつ愛おしいと思いようになってきた。
時折見せる、優しげな表情だとか、仕草や視線が、私を好きなのでは?っと思う時がある。
でもそう言う時、必ず殿下はイタズラして台無しにするのだ。
本当は私のこと嫌いで、弄んでるだけじゃないかなと時々考えるようになってきた。
数日後、また殿下のお茶会に呼ばれる。
もう、今日こそははっきりさせよう。
私も時間が惜しいのだ。
誰だって弄ばれて捨てられる未来を選ぶものか。
今日は殿下の応接室でのお茶会だった。
殿下が座っている反対の一人がけソファーの前に立つ。
「やぁスピカ、今日は一段と勇ましいな。
まぁそうカリカリしないで座ったらどうだ」
素直に腰掛けると、クッションから音が鳴りびっくりして立ち上がる。
またしてもやられた。
殿下は愉快そうに笑い、音が鳴るクッションを片付けさせていた。
「殿下、毎回毎回これは何ですか?」
「何ってイタズラだが」
それはわかってる。
またイタズラする前の顔になったので、テーブルを叩く。
「殿下が私のことお嫌いなのよくわかりました。
今日はこれで下がらせていただきます。
これからのことについては後日兄からお伝えすると思います」
婚約なんて解消だ!
っと意気込む私の袖を殿下が引っ張って止める。
「悪かった。今日のは気に入らなかったのだろう」
「そう言うことではありません!
婚約者ならもっと私に甘くあるはずです」
「それは竜の血の者のことだろう。
余は竜の血も多少あるだろうがどちらかと言うと妖精の先祖返りだからな。
竜の血の濃いお前の父や兄と比べられても困る」
妖精の先祖返りってなんだ?
精霊は聞いたことあるけど。
初耳の単語に驚いて椅子に座ってしまった。
「?どうした?
疑問でいっぱいという顔をしているぞ」
「竜の血はよく聞きますが、妖精は聞きません。
またご冗談なのではないですか?」
そういうと、殿下は悲しそうな顔をした。
あ、これ言ってはいけないやつだ。
「そうかまだ16歳だったな。
ではまだ血のことは詳しくは教えてもらっていないのか。
本来は偏見や差別をうまないために詳細は成人後なのだが、外交のこともあるし、今から少し繰り上げて学習するとしよう。
そこのもの、血のことについて書いてある書物をもってこい」
一人の従者が急いで部屋を出た。
「ではまず口頭で簡単に説明しよう。
身近なのは竜の血だろう。
この国の祖もこの血の先祖返りなのも有名だろう。
竜の血は一途と強固の血、固執な血と言っても良いな。
竜の血の先祖返りは何故か他と違い髪に出る。
白髪がこの血の先祖返りの特徴だ。
まぁ特徴はお前の父や兄、この国の大半の男がこの血なので説明しなくてもわかるだろう。
これと思ったら周りなど無視して自分の意見を通すのがこの血でもある。
ここまではいいか?」
「はい」
「では次にスピカの身近で言うと神の血だな。
これの先祖返りは金の目をしている。
お前の兄がそうだ。
今となっては神になってしまったがな。
神も同じ金の目をしているが、濃さが違う。
その濃さで階級がわかるとされているが、人間にはわからん。
それこそ神のみぞ知るってやつだな。
まぁ話がそれたが、この血のものは孤独と情熱の血だ。
一つのものに執着するのもこの血だ。
知り終わると次を求める探究の血と言ってもいい。
何か質問は?」
「竜の血の固執と神の血の執着は同じように思えますが」
「そうだな、同じと言えるし違うとも言える。
竜は個に死ぬまで固執するし、神は知り終えるまで執着する。
簡単に言えば竜の血は振られたら死ぬが、神の血は振られたら次を探すんだ。
熱量はどちらもかわらないからどっちも重いやつなんだけどな」
殿下が最後軽く言ったが、うちのお兄様誰よりも重たい愛の持ち主かもしれない。
いい具合に、相殺されてないだろうか。
じゃないと受け止めるミネルバ様が可哀想だ。
「では次は、今回のスピカが疑問に思っている妖精の先祖返りのことだ。
精霊の先祖返りは聞いたことあるだろう」
私は小さく頷く。
「精霊もしくは妖精の先祖返り。
二つは大まかに言えば一緒だ。
自然に近ければ精霊、人間に近ければ妖精だ。
この二つに優劣はないよ。
どちらも他より魔力量が多いのが特徴だ。
先祖返りは眼の色が紫だからわかりやすいだろう。
濃ければ精霊、薄ければ妖精だ。
まぁただ精霊は疑い深く、心を開けば相手に染まりやすい純真さがある。
逆に妖精は誰とでも気軽に話しかけるが、距離を縮めたい相手にイタズラで相手との距離を図りなお頑なに心を見せない臆病さがある。
言っても神の血や竜の血ほど強烈な個性がないので、存外忘れられることの方が多いな。
竜の血のように相手にさせないからと病んだり、神の血のように孤独感から病んだりもない。
至って魔力量が多い普通の人だ。
ああ君の兄の婚約者も精霊の先祖返りだったな。
魔力も並外れてるとか、それはもう精霊だな。
だからあいつ神になったのか。
優しいと言うか何と言うか。
まぁ総じて血の特徴が出やくはあるが一つの個性と捉えていいだろう。
血の特徴が濃いから絶対というわけではない。
おまえの兄のように両方の血が濃ゆくても、穏やかなやつもいる。
特徴が出なくても過激なやつもいるということだ」
殿下は兄のことを勝手に納得したようで、笑いながら紅茶を飲んでいた。
ふと思ったので聞いてみる。
「殿下は私が好きだからイタズラするのですか?」
「…まぁそうなるな」
殿下はカップから口を離さず、誤魔化している。
「いつまでイタズラするのですか?
距離を測るばかりでは進まないではありませんか。
私、殿下に肝心なこと言われておりません」
「今日はいつも以上に勇ましいな」
「殿下誤魔化さない。はっきり仰ってください。
私も乙女ですから、殿下から言っていただければと思っております。
ここで逃げるようなら、婚約解消も視野に入れていきます」
殿下をじっとみると、目線を外しながら顔を真っ赤にしている。
これはちょっとお姉様達が言っていた男の人可愛いと思う瞬間に似ている気がした。
殿下が目を右往左往させながら、モゴモゴしているなと思ったら、バッと両手で顔を隠し、小さな声で
「好きだよ」
と呟いた。
何だか、今までのイタズラが可愛く思えるほど、この人を愛おしいと思えた。
タイミングがいいことに従者が本を持ってきた。
殿下は真っ赤になってそっぽを向きながらも、本を差し出してきた。
ありがたく受け取る。
それは血について細かに書かれてる本だった。
ざっと見たが、ほとんど竜の血の対処法ばかり。
妖精の血はあるにはあるが、ほとんど殿下が行った内容と変わらない。
それでも読み進めていく。
”妖精の先祖返りは恥ずかしがり屋な血と言ってもいい。
好意がバレそうになるとイタズラしたり別の話にすり替えたりして隠すくらい臆病者。
これは受け入れて貰えない時のために自己を守る手段ともとれる。
なお本音を言うのは二人きりの時ぐらいで、それにも時間がかかる。“
まるっきり殿下じゃないか。
なるほど恥ずかしいから誤魔化すためにイタズラするのか。
にまにまにしているところを殿下が怪訝そうにこちらを見ている。
「何が面白い?」
「いえただ、殿下は恥ずかしがり屋さんなんですね」
「……あ!バカっ!返せ!」
一瞬眉間に皺がよるが、書いてあることを思い出したようで、真っ赤になりながら私から本を取り上げてしまった。
本のタイトルは憶えているので、帰って家を探そう。
多分そこには恥ずかしがり屋さんの殿下のことが書かれてるから。
血の説明回に殿下とスピカを添えて。
考えたけど長い説明だったから本編の出せず。
殿下がお兄様にスピカのこと気持ち悪く聞くのも直接は恥ずかしいので茶化してじゃないと聞けないから。
ポマルム王国は代々の王族も精霊か妖精の先祖返り、貴族にも多いので軍事力が強いのはそのせいもある。
本人達は紫の目などいっぱいいるので先祖返りってあんまり思ってない




