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お兄様、過保護過ぎるのでは?  作者: 蜂蜜
薔薇は初恋を月に捧げる

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3 魔欠石と魔力石

屋敷に戻ると天使が二人戯れていた。

目を擦り再度確認しても天使だった。

男の子が金髪で女の子が銀髪。

目は二人ともディアナ様の瞳をもう少し明るくした色をしていた。

天使の周りの騎士や侍女がこちらを警戒している。

別に危害をくわえるつもりはない。そんなことしない。


「ごきげんよう」


勇気を持って声をかけると、二人は私に今気付いたのかびっくりしながら少し頭を下げた。


「何をして遊んでいたの」

「…別に遊んでない」


男の子の方がお兄ちゃんなのか女の子を庇いながら答えた。

警戒してる仔猫みたいで可愛い。


「では、探し物?」

「…まぁそう」

「…おかあさまがげんきになるようプレゼントをさがしているの」


元気になる…そうですわよね。無理矢理結婚させられそうなら誰でも気が沈みますよね。

少し考えてポケットの存在を思い出す。


「プレゼント…あ!いいのありますわ。

お二人、魔力はあります?」


二人は顔を見合わせて、無言のやり取りをしていた。

答えが出たのかこちらを向き二人同時に小さく頷いた。

少し握って貰えばいい。

そしたら魔欠石が色付いて宝石みたいになる。

それは世界に二つとない贈り物になる。

私だったらこんな可愛い子達が作ってくれたと知ると嬉しくて飛び上がるだろう。


三つ買ったから一つは私用、二人に一つずつ渡せばちょうどいい。


「手を出してください」


二人は素直に小さな手を出した。

そこに一個ずつ石をのせる。


「では」

「やめて!!」


悲鳴に近い声でそう言うのと同時にディアナ様が魔欠石を叩き落とした。

びっくりして固まっていると、子どもをご自分の背に隠されてしまった。


「貴女、何なさってるか分かってらっしゃらないの?」

「え、あのプレゼントをお探しでしたので魔力石をと」

「これは魔欠石ですわよね」

「はい、でも魔力を込めると魔力石になると」


何がいけなかったのだろう。頭には疑問符しか浮かばず、何と返すのがいいかわからない。


ディアナ様はふーと深く呼吸され目頭を揉まれた。

そしてこちらに強い意志が宿る瞳を向けられる。


「最近流行っている病についてお聞きになってはいらっしゃるかしら?」

「はい。気力がおち寝たきりになると。あのでもこれは原因不明の病とも」

「私達はこの病を突き止めるためにやって来ましたの。

数ヶ月に及ぶ調査のすえ、原因は魔欠石にあるとつきとめました。

10歳以下及び魔力を持たないものが長時間持つと魔力欠乏により生命活動に影響がでるとも。

何故止めたかおわかり頂けたでしょうか」

「あの…私…その知らなくて…知ってたら絶対してません!」

「ええ、その言葉信じます。

まだ周知されていませんから。知らないのは当然よね。

ごめんなさい、頭に血がのぼっていたとはいえ乱暴なことをしたわ。

ですが今日はもうさがらせていただきます

ごきげんよう」


去られる後ろ姿を見ながら小さく謝罪する。

そんな危険だと本当に知らなかった。

露店の店主もそんなこと言ってなかった。

ポケットに入っていた石も捨て、肩を落としながら部屋に戻る。

どうしてこう私がすることは空回ってしまうのだろう。


顔を合わせづらく食事も一人でとるようにし、読書や刺繍などをし部屋から出ないように過ごした。


一週間が経った頃ディアナ様からお茶に呼ばれた。

気まずいながらも断りを入れる方がもっと気まずくなると思い、頭をさげながら呼ばれたサンルームに入る。

紅茶と花のいい匂いがした。


「どうぞおかけになって」

「この度はすみませんでした」


椅子に座ってまず一番に謝罪する。


「顔をおあげになって。

私も急に詰め寄るような真似をしてしまってごめんなさいね。

子供のことになるとダメね」

「いえ、私も知らなかったとは言え考えなしでした」

「知らないのに魔欠石を購入されたの?」

「街の露店で見かけて。魔力を込めれば魔力石にかわる石だと言われて」

「そう、だったら安くない買い物だったでしょうに」

「…そのロベルト様にお渡ししたら喜んでくださると思って」

「私の子どもたちには何故渡そうと?」

「ディアナ様がお元気ないと聞いて少しでも力になれればと。

す、好きな方と一緒になれないのは悲しい事なので」


いまだに目を合わせられずにいるとフッと小さな笑い声が聞こえた。

顔を上げると困ったようにまた微笑まれている。


「こんな形で会わなければお友達になっていたかもしれないわね」

「そ、それは今からでも遅くないような気がします」

「ごめんなさい。もう遅いわ。

私もう行くわね。病のことでまだやることがあるの。

貴女はせっかくだからゆっくりなさって」


そう言われるとどこかに向かわれた。

私はまた後ろ姿をぼんやりと眺めるしかなかった。


「マリー、私遅かったのかな」


いつも以上に無口な侍女は横にただ寄り添うだけだった。


「マリー、紅茶淹れてくれる」

「かしこまりました」


熱い紅茶にミルクと砂糖をたっぷり入れゆっくり飲んだ。

次から次に出そうになる言葉がでないようにないまぜにしてゆっくりゆっくり飲み込むことしかできなかった。



それから私は邪魔にならないよう極力部屋で過ごした。


ディアナ様はすごい方だ。

原因不明の病も解明され、あっという間に特効薬までお作りになられた。

ドラコニス領は回復に向かっているはずだ。

この功績でアドニスも納得するはずだ。

ディアナ様には幸せになって頂きたい。


窓から外を眺めているとたまに親子で楽しそうに遊ばれている姿を見かける。

時々アドニスも混じっているのを見るので別段嫌ってる訳ではなさそうだ。

なのに何故、結婚を強いるのだろうか。

やはり貴族のしがらみのせいなのだろうか。

そんなことを考えながら楽しそうに遊ぶ親子を眺めている。






数日が過ぎた頃、階段をおりようとした時にディアナ様とすれ違った。

頭をさげて通り過ぎようとしたところ呼び止められる。


「マチルダさん」

「はい?」

「もう直球にもうしますわ。

貴女は何故ここにいらっしゃるの?」


質問の意図がよくわからない。

何故ってロベルト様から求婚されて…でも全然お会いできてない。

それどころかまだちゃんとした顔合わせもしてない。

おかしいとは思ってた。気づかないふりして逃げてた。

だって、気づいてしまうと私には価値がないと言われているような気がした。


「意地悪ですねディアナ様」

「ええ、貴女が最初に喧嘩をお売りになったので」

「私が?ですか?」


身に覚えのないことだ。

やはり侯爵令嬢とは相性が悪いのかもしれない。

ディアナ様はそんな陰湿なことしないと思ってたのにな。

失望したのと、うまくいかない苛立ちからついつい声が刺々しくなる。


「はっきりおっしゃってはいかが?」

「では、遠慮なく。

ロベルト様に愛されているのは私です」


カッと頭に血がのぼった。

無意識のうちに手がディアナ様の細い肩を力一杯押していた。

ゆっくりとした一瞬。

その間にディアナ様が階段から落ちていくのを見た。





「ルル!!」


ロベルト様の声で正気に戻る。

ディアナ様はロベルト様が受け止め抱きかかえられていた。

ああ、この場面5年前にも見たことがある。

あの時ロベルト様はなんと言ったっけ。そして私は何と返したのだろう。



「おまえ何をしたかわかっているのか!?」

「私のせいではございません。

私はただ躾のなっていない猫を追い払っただけですわ。

ディアナ様が勝手に落ちたのでしょう」

「貴様!!」

「ロッティ、落ち着いて。

まずはディーの容態だ。大丈夫かい。ゆっくりでいいよ呼吸して。怪我がないか魔法でみるよ」

「その者を捕らえよ」


ドラコニス辺境伯の動令が響く。

私はおとなしく二人の騎士に捕まった。

その間もアドニスがディアナ様の容態を見ている。

あんな魔法もあるんだ。

私は他人事のようにその様子を見ていた。



「大丈夫、怪我はない。上手に受け止めたなロッティ。褒めてやろう。ディー落ち着いたかい?

なのがあったか話せるかい?」

「何があったなど明白だろう。二度目だ!

あの女がわたしのルルをまた階段から突き落としたのだぞ!

もう、子どもだからと言う言い訳が通用はしない!」

「わかったから落ち着けロッティ、僕はディーに聞いている」

「旦那様大丈夫ですわ。

私が彼女をイラつかせてしまいましたの」

「そうよ」


私は泣きたいのか笑いたいのか悔しいのか安堵したのかわからない気分でやっと一言返した。


「マチルダ」

「お兄様、お父様まで」


何故二人がいるのだろう。余計に頭が混乱してきた。

私が呼んだとドラコニス辺境伯が答えた。


「お前たちもう終わりにしなさい。

皆様方においては多大なご迷惑をおかけし最後までお手数をおかけしております。

貴族位返上と私の命でどうかご容赦いただきたい」


おまえ“達”とはどう言うことだろう?

父の命でとは?


「かわいそうで可愛いマチルダ。頭空っぽのおまえはわかってないから教えてあげる。

魔欠石を横流ししてたのは俺だよ。

なかなかいい稼ぎだったんだけどなぁ

そんでおまえはこの件の餌にされたの、俺はまんまとおびき寄せられたわけ」

「お兄様…何故?」

「恋に恋するおまえが憐れでね。ドラコニス領が落ちたらおまえの手にも届くと思ったんだ。

まぁその前に見つかってしまったけどね」


兄の皮肉めいた笑いを見たのは初めてかもしれない。

私達はいったいどこで間違えたのだろう。

足に力が入らず膝から崩れ落ちた。

兄はただ私のわがままな願いを聞いてくれただけ。

兄なりの精一杯。それは良いやり方ではなかったけど。

父は幾度も諭してくれていたのに、何故聞く耳を持たなかったのだろう。

穏やかに暮らしていた頃に戻れたらと今になって思う。

5歳は天使なんかじゃない

まぁ、寝顔は天使だね


ドラコニス夫妻「息子やべー」がお茶会から止まらず、受け入れてくれるディアナを女神だと崇めてる


安心してください。庭に捨てられた魔欠石はスタッフがビクビクしながら回収しました

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