エピローグ6
はー幸せだと改めて噛み締める。
再度離れにきて、リズとキスをし、色々と楽しんだ後温かい風呂に一緒に入っている。
リズ用に作られた浴槽は俺とリズが入れば狭いもので、逆にそれがよかったりする。
「リズ、寒くはないか?」
「…ええ、今は温かくて眠たいくらい」
トロンとした声にこのまま眠ってのぼせてもいけないと思い、上がる。
柔らかなタオルで拭き、魔法で髪を乾かす。
寒くないようにふわふわのローブを着せ、ベッドに運ぶ。
「今日は色々あって疲れただろう。
眠っていいぞ」
「…どこにもいかない?」
「ああ、どこにもいかないリズのそばに一緒いるよ」
額にキスをすればウトウトしていた瞼がゆっくりと閉じてしまった。
可愛くて髪や頬にキスをする。
「いい夢を」
横に潜り、リズを抱きしめながらリズの髪で遊ぶ。
綺麗な色だ。
瞳とはまた違う紫に、この色に似た宝石を探そうと心に決める。
宝石で思い出した。
今日見たクリスタル、あれにリズは入るつもりだったのだろうか。
二人入るほどの大きさはなかった。
もし兄貴が神じゃなかったら、リズはクリスタルの中で200年過ごさなければならなかった。
それはどれほど恐ろしいことだろう。
俺は多分ずっと外からリズを見て、眠るリズに届かなくても声をかけるのだ。
触れもできず、声も聞こえず、あの綺麗な瞳も見れない。
そんな怖いことがおきてしまっていたかもしれないのだ。
どうにかするなんてよく言えたもので、浅くしか考えていなかった自分を殴りたくなった。
目の前が急に霞み、手で擦る。
濡れていた。
これが涙だと気づくのにだいぶ時間がかかった。
まだ涙が出るのだと心の中で驚く反面、リズのことで感情が出たことに喜ぶ。
ずっと俺たちは蔑まれながら生きてきた。
兄貴はそれも楽しんでいたが、俺はそれができず一人鬱々としていた。
自分を守るために感情を一つずつ殺した。
無表情の俺を見ながら兄貴は心配そうに何か言いたげにしていた。
月日は流れ、12歳になった頃兄貴と冒険者を始めた。
兄貴は元から魔法ができていたが大人に知られると厄介だ言って隠していた。
俺はその頃まだヒョロヒョロで、ヒョロヒョロがヒョロヒョロの棒切れで戦っているとよく笑われたがその頃には何も感じなくなっていた。
兄貴は悲しそうに笑い黙って俺を見ていた。
ヒョロヒョロでもどうにかなるようで、一年後には二人で肉を食えるくらい稼げるようになっていた。
それでも大人はやっぱり汚くて、成功報酬を出し渋る。
ずるいやつなどいっぱいいて、よくちょろまかされた。
そんな時兄貴は、神様は見てますからと笑ってすましてた。
あれは自分が見てるから後で覚えていろよという兄貴なりの脅しだと今になったらわかる。
少ない成功報酬でそれでも生きていけたのは、兄貴のおかげだった。
大っぴらに使えないが魔法で水や食料を確保してくれたのだ。
それに、獣を狩るのも上手で、よく兎を捕まえて捌いて焼いて食わせてもらってた。
食うのには困らないように兄貴がしてくれた。
その分しっかり扱かれて、剣を覚えさせられた。
最初は兄貴の方がなんでも上手かった。
次第に、剣だけは、ナイフだけは、弓だけはと兄貴より使える武器が増えてきた。
その頃から兄貴は魔法をだんだん使うようになり、仕事が徐々にやりやすく、求められる条件が難しくなっていった気がする。
それでも二人ならなんでもできた。
犬の散歩だって、畑の手伝いだって、魔物退治だって、盗賊に討伐だって。
なんでも二人でやってきた。
今日、兄貴が神様だってわかって、最初に思ったのはやっぱりなだった。
続いてすげー、じゃあ俺もかな?っていう疑問。
なんでもできる兄貴をいつも俺は神様みたいだと思っていたからすんなり受け入れられた。
でも俺が神じゃないと言われた時、すごくショックだった。
俺すげーとは思っていない。
ただ兄貴と同じじゃないことが酷くショックだったのだ。
血が同じ兄弟と言われ安堵したが、魂が違うと言われてまたショックだった。
二人で一緒にやってきたことが本当は違うと言われたようで、寂しくて悲しかった。
兄貴は気にしてないのか淡々と周りと話してる。
一人置いていかれてる。
どうしたら兄貴と会話できる?
兄貴は俺を見る?
ふと腕の重さと神殿を思い出した。
これならと思い、200年監禁の話をしてみる。
案の定、こっち見た。
あ、でも違うそうじゃない。
言いながらいい考えだと思ったのは本当だけど、軽い冗談なんだ。
取り消したが、後の祭り。
リズにも、若干冷めた目線をもらってしまった。
更に話は進み、神の代理人の話になった。
そんな寂しそうに笑うなよ。
200年後自分はいれない。
この時もクリスタルを思い出した。
もっと大きなクリスタルを作ってもらいリズと二人入って兄貴を待てばいいんじゃないか?
いい案だと思っていうと、兄貴に怒られた。
神殿が欲しいと思われたらしい。
違うんだよ。
でもまだ弟って言ってもらえて嬉しかった。
その後兄貴が魔法で神殿出した時は驚きを通り過ぎて、やっぱり俺の兄貴かっけーと思ってしまった。
話は流れてダンジョンの話になり、創れると聞いた時はやっぱり俺の兄貴かっけーとなった。
神ってる俺の兄貴。
そうだ神様だった。
自分が神とは違うと言われてもショックだったが、よくよく考えれば人間の自分が、神の弟なのすごくないか。
兄貴の弟やめて神になりますかって聞かれたら絶対に嫌だ。
じゃあ弟はやっぱりすごい立ち位置なのだ。
一生、大事にしようと思った。
「ん」
リズが身じろぐ。
寒くないように改めて布団を掛け直し、抱きしめ直す。
兄貴の弟で、リズの夫。
これ以上の幸せはない。
かもしれないで何故不安がっていたのだろうか。
どちらも俺の手の中にある。
伸ばせば届く位置に。
流れていた涙が止まったので、袖で拭う。
十何年ぶりに涙なんて流したものだから、軽く頭が痛かった。
だが、心の方がすっきりとしている。
今日はよく寝れそうだと、温もりを抱えて瞼を閉じる。
明日はきっと兄貴がきてあーだこーだいうだろう。
それを聞いてリズは困ったように笑って、でも本気では困ってなくて。
俺はその光景を見ながら紅茶を飲もう。
たぶん、きっと、心が温かくなって笑顔がでるはずだから。
ニルスはなかなかブラコン
表情はクールだけど、内心兄貴かっけーってキラキラしてた




