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お兄様、過保護過ぎるのでは?  作者: 蜂蜜
金貨一枚分の距離

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33/48

づつゆっくり君に近づいていく

春がなりをひそめ、初夏の風が吹く頃だが、まだ朝は冷える。

ガウンを被り、冷たい床を裸足で歩く窓のそばによる。

昨夜私を好き勝手した彼はまだ起きてこない。

そっと城の方を眺める。


何故こんなことになっているのだろうか。

恋だの愛だのしてる暇などないはずなのに。

この一週間、愛されない時はいっときもなかった。

優しくどこまでも甘く。

監禁や拘束など物騒な単語が出た時はひっそり身を縮めたが、本当にただひたすら甘く囁かれ甘く触れるだけ。


さすが竜の先祖返り。

一瞬の隙もなく甘く愛されていた。

でも200年分もらったと思えば軽いのかもしれない。

そんなことを思う自分も竜の血が少し入っていたなと思い出した。

竜の血が入っていてよかった。

でなければ彼の重い愛に押しつぶされるかついていけなかっただろう。


胸にある赤いルビーのネックレスを手に取り、外にかざす。

これは彼の目によく似た色で、王宮でも見たことないほど立派な物だった。

くれると言うのだから遠慮はしない。

値段ではなく、彼の熱い揺らぐ瞳のようで、これだけは私の物だ。

身につけていけるだろうか。

装飾具がダメだとは書かれていなかった。

ダメならそばに置いておいて欲しい。

これがあれば私は生きていけるだろう。

石は200年たってもかわらないのだから。


「気に入ったか?」


起きてきた彼は私を抱え、顔中にキスを落とした。


「ええ、とても」

「足が冷えている。湯を沸かそう」


そう言いながら器用に私を抱えたまま、魔法で大きな桶に湯をはっている。

お兄さんほどではないが、彼も魔法を使えるとのこと。

ここまで自在なら楽しいだろうなと思った。

ゆっくり暖かな湯の中におろされる。

彼がしゃがむと、私の手を掴み彼の肩に置かれ、私の足を洗い出した。

洗い終わると柔らかなタオルで包まれ、抱っこされベッドにまた戻る。

お姫様以上にお姫様をしている。


一週間この離れに来てから何でもやってもらい、歩くことさえほぼない。

赤子のようにいつだって抱えられているのだ。

幼子の方がまだ自分のことをしているのじゃないかと思う。


「腹は空いていないか?喉はかわいてないか?」

「ええ少し」


そういうと彼は決まって少し笑った顔で魔法で食べ物と水差しを取り寄せる。

便利だが難しい魔法を彼は簡単に使うのだ。

お兄さんはこれ以上となると想像がつかない。


「今何考えた?」


初めて会った時のように眉間に皺が寄る。

彼以外のことを少し考えただけでこれなのだ。

この数日彼以外のことは考えられず、むしろ考えることをさせてもらえなかった。


「魔法のことを、あなた以上のお兄さんは想像もつかない魔法を使うのでしょうね」

「伊達に魔法使いを名乗っていない。

それよりも、ほら好きだろ。干し葡萄だ」


素直に答えると、それ以上追求されず、口に干し葡萄を押し付けられる。

不器用だが優しい彼の指から干し葡萄をもらい直接食べる。

嬉しそうに今度はパンをちぎり口元へせっせと運んできた。

この姿をかわいいと思ってしまう自分はもうこの一週間で絆されてしまっている。


朝の食事を終え、ゆっくりと水を飲んでいるとまたキスが降ってくる。


「今日で終わりなのが惜しい。

速く用事を終わらせてまた続きをしよう」


ああ終わりか。

彼に最後に謝らないといけないことがある。

今言おう、名残惜しいが彼を押して離れる。

表情がかわらないがたぶん驚いた顔をした彼が私の様子を伺っている。

そうね拒否したことなかったもの、驚いているのだろう。


「ニルスに言わなければいけないことがあります。

……私、神の代理人に選ばれました。

あなたとはこれ以上は一緒にいれないのです」

「…どう言うことだ?」


低い声が心を揺する。

仕方ないと抑えていた涙がこぼれ落ちる。


「200年前の神の代理が寿命を迎えそうなのです。

ですので私が代理となりこの地を見守るの。

200年あなたともだれとも会えません。

そのために今日神殿にむけ出発します」

「リズ、お前じゃないといけないのか?」

「ええ、もう決まっております。

ごめんなさい」

「謝るな」


抱きしめられ、涙で濡れている顔にキスされる。


「わかった、俺も一緒に神の代理とやらになろう」


思いもよらない言葉に涙が止まる。


「いえ、でも、それは」

「何だ二人だとなれないのか?」


どうなのだろう、そんなこと書かれていなかった。

もしかしたらなれるのだろうか。


「わかりません」


わからない。

でも二人一緒なら嬉しい…いやそんなこと考えてはいけない。

彼の未来を奪ってはいけない。


「リズ、何を考えている?

何がそんなに悲しんだ。

何がお前を苦しめる」


何度もキスをされ、心の柔らかいところに触れられ、思い出さないようにしていた痛みがせりあがってくる。

やめて、これ以上暴かないで。

キスを拒否すれば、許さないとばかりに舌が口の中に入ってきた。

知り尽くされた弱い所を攻め立てられ、息も絶え絶えになる頃ようやく口が少し離れる。

それでも近すぎる距離に身をよじろうとした時、またキスがふってきた。


「言うまで城にはいけないと思え」


言えない。でも言わないといけない。

そんな無責任なことできない。

私はこの国の王女で神の代理で。


涙が再び流れる。

この人に会わなければよかった。

愛されなければよかった。

こんなの思い出だけで生きていけるほど私は綺麗な人間ではない。


「…ン、…チュ…んニルス」

「何だ?」


優しく問われ、私は限界を迎える。


「私、本当は嫌。

神の代理などしたくない。

何で私だけそんなめにあわなければいけないの?

憎みたくないのに、好きな人に嫁いだ妹が羨ましい。

かっこつけたけど本当は200年もの孤独など私も堪えられない。

それに嫌、嫌なの、あなたがいないと私はもう生きていけないの」


縋り付けば、さっきよりも情熱的な口づけをされる。

息さえできずに、ただされるがままになる。

半ば放心状態になった時唇が離れた。


「ああ、愛しい私の太陽。

大丈夫だ、おまえのささやかなで可愛い我儘叶えてやる。

案ずるな、今は俺に身を委ねろ。

いつまでも一緒だ」


言うが速いか、また口づけされた。

後のことはあまり覚えていない。

それまでいかに手加減され甘やかされていたのかだけはわかった。

竜の血を舐めていたのか、ニルスという男を舐めていたのか。

どちらもかもしれない。






日が沈みかけた頃ようやく離してもらい、重たい腰を引きずった私をニルスが抱えて城のオーズたちがいる部屋にきた。

一番最後に入ってきた私たちを皆が見る。

騎士の一人が怪訝そうな顔をしたのを見逃せなかった。

ですよねと私も思ってる。

ニルスに抱えられているだけでなく、一等お気に入りの首まであるドレスを着ているからだろう。

いつもは着ないような桃色の可愛らしいドレス。

赤いルビーも首から下げ、今からパーティーでもするような出立だ。

ニルスがそうしろと言ったのだ。

従ってる私も私だが。

オーズが不機嫌を隠さず、ニルスに詰め寄る。


「遅いよ。昼には終えてゆっくりワイン呑むつもりだったのに」

「時間は指定されていない」

「屁理屈ばっかり、なんて可愛くない弟だ」

「可愛くなくて結構」


あんなに厳つい見た目なのにお兄さんには拗ねた子どもみたいで可愛い。

いっぱい泣いたからか、ニルスが一緒にいると言ってくれたからか、少しだけ心に余裕ができた。


「もういいや、出発前に確認するよ。

僕でしょ、ニルスでしょ、お姫様でしょ。

あと護衛の騎士が二人と…誰この人たち?」

「無礼ぞ」


オーズは気にしてないが、こちら側は身分を気にする者ばかりなので、私が間をとる。


「オーズ」

「お兄ちゃんって呼んで」

「お兄様、こちら父です」

「あー、おー様かー。これは失礼。

おたくの娘さんの義兄になりますオーズでーす。

名前はコロコロ変わるから好きに呼んでいいよー

はいこれから家族になるんだから握手ー」


そう言って手を差し出す。

見てられない。ここまで自由な人だったとは。

騎士が動いたが父が手をあげ制止する。

オーズの手を取り握手した。

ブンブン楽しそうにオーズは握手された手を振る。

やめてあげて、父は肩が弱いの。

案の定外れてしまった。流石に悪いと思ったのかオーズが魔法で治してる。


「それであの、彼らは大臣を務めてくれているネスター・ハウリッド侯爵とお隣はアスター・テイラー侯爵。

こちらの父の後ろにいるのが騎士団長のアーサー・ナイトフォール侯爵ですわ。

こちら魔法使いのオーズと剣使いのニルス。

案内役をお願いしてるの」

「はん、冒険者上がりが、信用できるのですかな」


ネスターおじ様の意地悪がまた始まった。

総じれば悪い人ではないが、欠点はこの人を試すことかしら。

信用さえ勝ち取れば心配性の良いおじ様なのだけど。


「きみー疑り深いんだねーそんな子大好きだよー」


今度はネスターおじ様の手を取りブンブン降っている。

オーズにはマナーも嫌味もないようだ。

でも流石に不敬になって投獄は可哀想なので、あとで許してくれるようにネスターおじ様にお願いしよう。


「ところで神殿のあの子に会いに行って何するのー?

連れ帰ってくれるのー?」


笑顔が眩しい。

…あの子?まさか知っているの?いやそうね何度も神殿には入っているだろうし、自由なオーズのことだ。

挨拶すれば勝手に友達とかになってそう。


「神の代理の世代交代だそうだ」

「何それ?」

「オーズ、俺はリズと神殿に残ることにする」

「え?どういうこと?

あそこ何もないよ。つまんないよー?」

「それでもリズがいる」

「??余計わかんないんだけど?

お姫様あんなとこで何すんのさ?

別に面白いのないどころか岩しかないよ?」

「ええーい黙れ!エリザベス様は代理人になると自分から申しだられたのだ、それをふざけたことばかりいいよってからにぃぃうう」


アスターおじ様が我慢していた涙が溢れ、それを拭うために後ろを向いた。

私、思っていたよりも皆に愛されていたのね。

小さい頃から可愛がられていたのを忘れてはいなかったが、彼の涙を見て改めて思い出した。


「えー何これ僕が悪いのー。

つまんないのは事実なのにー」


つまらなくても仕方ないのだ。

嫌だと逃げられない。

誰かがやらないといけないのだ。


「お兄様すみません、こればかりは仕方ないのです。

神ディーンが決めた事。

守らねばこの地が廃れてしまいます」

「僕そんな事決めてないんだって。

毎回言うけどさー君たち頭おかしんじゃなーい」


今度はこちら側がクエスチョンを飛ばす。


お兄様はまたしても神様で過保護

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