エピローグ5
「なんだお義兄様、いつも通り帰ってきたのか」
「帰ってきたら駄目でしたか?」
「悪い悪い。てっきり蜜月過ごすと思ってだな」
「あっちでは蜜月ないので過ごすならこっちでですね」
殿下と話していると周りがざわつき出した。
蜜月がないということに驚いているらしい。
うーんなんかこれ前にもあったような。
「お話し中すみません。蜜月がないとは本当ですか?」
辛抱たまらず会話に入ってきた。
いつもはこんな無礼しないのでよっぽど驚いたのだろう。
「ないよ。あるのはこの国ぐらいじゃない。
僕が知る限りだと新婚旅行って言うのがある。
一週間くらい一緒にどこか行くというのがあるね」
「そのものは何か罪を犯したのですか?」
「いや、これでも長いらしいよ。
一般的には二、三日の休みだけらしい」
またしてもざわつく。
「罪人でももっと長いぞ」とか「そんな短くて精神的によくないのでは?」とか
出るは出るは。
ああ竜の血だなー反応が懐かしくて帰ってきたなーと思う。
「まぁ、他の国に行かない者は知らないよな。
母上も蜜月を聞いた時驚いたらしい。
他国では新婚でも監禁も拘束もしないらしい」
「しないのですか?!」
しないんだよなー。
監禁も拘束も犯罪だ。
それを伝えると今度は悲鳴が上がる。
「そんな、盗られたり逃げたらどうするんですか」
「普通は逃げないんだよジャン」
「逃げないのですか?
妻は落ち着かないのかよく逃げますが」
それもあれだ。竜の血だな。
血が奥さんの方が濃ゆいのだろう。
獲物、この場合宝石をパートナーにあげたくてあげたくて仕方ないのだろう。
「それ主導権が奥さんにあるな。
一度ジャンの方が拘束されてみたらいい。
多分満足するはずだ」
「はいわかりました」
会話をききつつ挙手をする。
「どうしたお義兄様」
「この会話すら他国ではタブーなのでやめた方がいいですよ」
「これもですか?」
「他国はどうやって愛を確かめ合っているんだ」
ちょっと大丈夫じゃないかもこの国。
他国に行って帰ってくると自国の会話がおかしいのってわかるな。
「普通は言葉や態度で示すんだよ」
「当たり前では?」
みんなしてうんうんと頷いている。
まぁ呼吸すると同義語くらいだからな。
他国からしたら異常だろう。
「あと他国では恋人や妻を“自分の”と言ったら喧嘩になる場合があるのだとか。
自分は物じゃないって」
これにもザワザワし始めた。
なんかだんだん楽しくなってきた。
「給餌もしないとか」
嘘だろ!と半ば叫ぶような声があっちこっちで響く。
「あんな楽しいことをしないのですか?」
「するとこもあるけど、うちの国の周りでは一般的ではないね」
「…一般とは?」
「母上もあれにも驚いたらしいよ。
王自らといより、誰かに食べさせられると言うのはあっちではマナー違反らしいね」
「そうですね、赤子ではないのでと言われますね」
どよめきが悲鳴になる。
わかる。断られると絶望的な気持ちになるよね。
この国の者なら意味がわかるから深い仲になる前に断られるので傷が浅い。
だが他の国の自分の恋人に断られるので絶望感が半端ない。
何か重大なことをして嫌われたのでは?と不安になるがただたんにマナーの問題だと聞いてどっと力が抜けたのも新しい。
「極め付けは二人きりでもあまり引っ付かないそうですよ」
これには笑いが起きだす。
嘘だや冗談と思われているらしい。
「いや本当だぞ。母上も最初知らなくて拒んでいたらしい」
ヒッと声にならない悲鳴と青ざめた顔の軍団がこちらをみている。
自分の恋人やパートナーに置き換えたのだろう。
想像で失神とは、まだまだである。
「王はお心もお強い。
拘束も監禁も給餌もできない
その上引っ付けない。
私めなら死んでます」
「わかるぞクリス。余も母上の話だけで目の前が真っ暗になった。
ただな、この国と他の国では言葉の意味が違うらしい。
監禁は部屋に監視し閉じ込めること
拘束は縄などで縛り上げること
両方、罪人に使うらしい。あとは誘拐のさいなど犯罪だな」
「そうなのですね。
言い方を変えた方がいいのかも知れません」
「それはいいな!
では何か案があればあの黒板に書いていこう。
決まったら余の世代でひろめていこう」
「「おー」」
「団結するのはいいですが、早めに仕事終わらないと今日帰れなくなりますよ」
呆れながら言うとそそくさと部下が仕事に戻っていく。
単純なのか繊細なのかまったく。
「帰ったら恋慕う者が待ってると言うのはいいな」
「まったくです。そうだ殿下」
なんだと言う顔でこちらを見たのでとても良い顔で報告する。
「数日だけでしたが監禁も拘束も給餌もどれもいいものでしたよ。
今まで馬鹿にしてましたが、なかなかでした。
欠けていたものが満たされて何とも言えない心地です」
殿下はポカーンとしていたが、我にかえると怒った顔をする。
「おまえ余を挑発しているな」
「ええ、そうですね。
そうとも言えるしただ僕は自慢したかっただけとも言える。
僕も血が濃いので、婚約者を見せびらかしたいんですよ。
ただあっちの国では通じないのがはがゆくて。
殿下なら自慢しても良いかなって」
「よくない、何も良くないぞ」
「はは、なるほど、これは優越感が増しますね」
自分がニヤつくのがわかったので、申し訳程度に口元を隠す。
義弟達がこぞって僕に妹を見せびらかすわけだ。
妹をとられない相手だから安心して優越感に浸れるわけだ。
それを言うと妹達も義弟を見せびらかしにくるな。
「おまえ最近性格が悪いぞ」
「そんなことは…あるかもですね」
なんせ見せびらかされてばっかりで、腹が立つのだ。
ミネルバと約束は取り付けた。
あと数ヶ月したら我が家に来る。
僕の部屋の横をミネルバに使ってもらおう。
本当は同じ部屋に篭ってしまいたいが、ミネルバはまだ慣れてない。
こっちの風習を学んでからゆっくり絡みとろう。
気づかれないように、それこそ逃さないように。
丁寧に丁寧に真綿で優しく包み逃すものか。
拘束具も新しく買おう。
真珠をはめこんだ金の指輪。
ああでもミネルバの色もいいな。
彼女の好きなアメジストで作るのもいい。
また僕色のドレスを着てくれないだろうか。
「楽しそうだなお義兄様」
「ええ、あと数ヶ月すれば蜜月ですからね」
「人がかわったように楽しそうだな、あんなに興味なさげだったのに」
「彼女は僕のと彼女から言われたので。
格別ですね。
殿下にはまだわからないと思いますが。
本当残念ですね」
「タチの悪い絡み方しよって。
余とお前の仲じゃないと処されても文句は言えんぞ」
「はは、何言ってんですか。
僕、神ですもの。処されるのは殿下ですよ」
反論できないのか悔しそうに顔を歪めた。
ミネルバと妹のためになったが、なかなか愉快だな。
「では僕も仕事に戻りますね。
蜜月の申請もしなければなので」
蜜月を強調すると殿下の顔がもっと愉快になった。
少し意地悪する殿下の気持ちがわかってきた。
殿下もスピカの気持ちがわかればいいが。
「はよ、出てけ!」
揶揄いすぎて怒鳴られたので笑って出ていく。
僕の笑い声が廊下に響いた。
言葉や態度は当たり前なので目に見える形の物が愛の証明みたいな文化
監禁=二人で誰にも会わず引きこもること
ただし買い出しなどどうしても出ないといけない場合
血の濃い方が出て対応する
ので揶揄して監禁と言われてる
ガチでまったく二人出てこない場合は巣籠と
尊敬の念で呼ばれる
拘束=一般的にはペアリングやペアネックレスを付け合うこと
主導権(血が濃い方)がつける。
じゃないと血が落ち着かずそわそわし
他の宝石をとりにいきたくなる。
これはパートナーにもっと自分を見て欲しくて
アピールするらしい。
ガチの縄で拘束する人もいるが
そう言うことは二人の秘密でこちらは公にしない
給餌=食べされたり食べさせられたり
二人っきりでやる
人前でしないのがマナー




