プロローグ5
邪魔者はいない。
お母様もお父様もお仕事でお城だし、何よりお兄様がいない。
お兄様がポマルム王国へ婚約者に会いに行かれてるのだ。
長期でいないとなれば、今まで我慢してきたことやるしかない。
私たちはおおいにハメを外している。
今日は朝も遅くに起き、パジャマまま、ディアナお姉様とスピカと一緒にベッドの上でお菓子を食べ妊婦でも飲めるお茶を飲み、今までしたことなかった恋の話をする。
ちなみにギルはお兄様の代わりに執務室で仕事し、ロベルトお義兄様は社交シーズンも終わったので泣きながらご実家へ帰られた。
双子は侍女や従者たちと追いかけっこしてはしゃいでる。
色んなところで悲鳴があがっているが気にしないことにする。
殿下は…とくにないのでいいや。
ということで三姉妹だけの秘密も催しを開催してる。
「お姉様はお義兄様のどこがよかったの?」
姉へデレデレする姿を見すぎて義兄への尊敬の念はかけらくらいしかない。
「お優しいところかしら、あと可愛いところね。
私がいないと泣いてしまうなんて守ってあげたくなるの」
それは姉が寛大すぎるのではないか。
泣いて離れたくないという割に、姉と長時間一緒にいると緊張しすぎてぶっ倒れる。
私の旦那なら可愛いですませられない。
「エレーナお姉様は?」
「目かしら。あと私のこと何でもわかってくれて、何でも付き合ってくれる優しいところ。
あと、低めの声も好きだし、指が長いのも魅力的なの。
それから困ってる時に私の名前呼ぶところが可愛くて」
「わかりました」
今からがいいところなのに、残念。
「スピカはどうなの?殿下のどこを好き?」
うーん、うーんと悩み続けてる。
……殿下色のドレスを着といてそれはないんじゃないかな。
何故か殿下が可哀想になってきた。
「権力じゃなくて…あ!仕事が速いとこでしょうか」
「そ、そうね。お仕事は大切だものね」
寛大な心の持ち主のディアナお姉様にもフォローできないほどの解答。
さすがスピカ!
「そういえばお母様はお父様の何が良くて結婚したのでしょう」
おおっとスピカ、お父様にもいいところあるよ。
ネチネチジジイだけど。
「それよりもどこで出会ったんだろうね」
「王妃様に聞いたことあります!
確かお隣の国でお父様が留学していた時出会ったとか」
「それはロマンチックね。離れ離れの恋人が運命の再会したのかしら」
お姉様、夢見すぎです。
お父様なのだ。そんな綺麗なラブストーリーなはずない。
「いえ王妃様の政略結婚を使ってお母様を手繰り寄せ、半ば強引に結婚まで持っていったそうです。
王妃様が私おまけなのって笑っておられましたが、とても気まずかったです」
ほらね。
「それは…何と言っていいのか」
姉さえフォローを投げ出す。
諦めない心だけは見習いたい。
「そういえば、私聞いたことあります。
パーティーの男の人の服の色が決まっているのはお父様のせいらしいです。
何でもお母様の髪の毛の色の生地で仕立てた服を着たり、お母様に見て欲しくて派手な色の服を着たから禁止事項が増えたってお兄様が言っていました」
「「お父様…」」
あ、言わなくてよかったやつだこれ。
んーでも仕方ない言っちゃったし。
娘たちの中で父の株が下がっていく。
これも仕方ない。
元々そんなに高くないので大丈夫だろう。
「お母様、断っても言いくるめられて結婚したんじゃ」
「ありえるわ」
「可哀想なお母様」
この話題は駄目だ。
お母様が見れなくなちゃう。
「お姉様!お、お姉様はお義兄様の体の部位でいったらどこが好き?」
話題をかえるため、少し大人な質問をする。
「そうねやっぱり手かしら。
あの大きな手で優しく触られるのは好きね」
おおっとちょっと直球に聞こえてしまうのは気のせいか。
これ以上は聞いていられないのでスピカに話を振る。
「…?ちょっと待ってください捻り出しますので、うーんとその、あ!髪ですかね、キラキラしてるので鳥よけに良さそうです」
あ、駄目だこの子。恋愛に興味がなさすぎる。
「スピカ、本当に殿下でいいの?」
「何でですか?」
「全然殿下好きじゃないじゃない」
「そうねースピカ殿下が可哀想だわ」
「えーそうですか?
殿下も似たような答えですよ」
これは駄目だ。
殿下はスピカが好きなのを目でも態度でも示してるというのに。
「スピカこのままじゃあお父様と同じ、いえそれ以下よ」
「お父様は愛はありますものね」
「お父様以下…!」
「権力欲しいだけで、殿下を付属品としか見てないあなたに国母が務まるの?
冷え切った夫婦に連携して政策ができるはずないわ」
スピカがショックのあまり固まっている。
ごめんねスピカ、でも私も心を鬼にしていいます。
「もう一度スピカ殿下の好きなところ考えましょう」
「はい、お姉様」
「何でもいいのよ。ほらお茶会の時のこと思い出して」
「…顔がいい」
「そ、そうね。優しそうなお顔よね」
「いえ、意地悪です。人を揶揄うのが好きな捻くれた方です」
違う、違うよスピカ。
それが事実かもだけど、もうそれ悪口なのよ。
それかたよっぽど鬱憤が溜まっていたのか出るわ出るわ、殿下のやらかしエピソード。
第三者から見れば、好きな子揶揄って反応楽しんでるのがわかるが、いささか殿下クソガキのけがある。
というか成人したいい大人なのだからやめた方がいいと切実に思う。
5歳のノクスの方が女の子扱いがわかっている。
この前もキラキラ振り撒きながら初恋泥棒してた。
同世代でノクスに惚れなかった子いないのでは?状態だ。
殿下にも教えてあげて欲しい。
「でも時々優しい笑顔で笑いかけられると、ちょっとどきっとします」
「それだよスピカ!」
「まぁ殿下にもあって良かったわ」
やったーー!!
と三姉妹で謎の達成感に浸る。
あははうふふと笑い合っていると、廊下がキャーキャー騒がしくなってきた。
嫌な予感がするから見たくないけど、見ないともっと大変なことになるとわかっているのでしぶしぶ見にいく。
案の定大惨事だ。
カエルは跳ねるは壁に落書きはあるは、窓は割れているは、大量の猫はくつろいでいるは。
うちにいつのまにか、賊が入ったのだろうか。
「ノクス!!レイラ!!」
お姉様の怒鳴り声久しぶり聞いたなーじゃない。
「お姉様、赤ちゃんに悪いから寝ててください」
「でも…」
「お兄様にばれなきゃ大丈夫ですから私たちで対応できます」
「とりあえずお姉様はもう見ないでゆっくりお茶をお飲みになって」
でもでもと繰り返す姉を押し込み、後片付けの指示を出す。
双子の方がハメを外しすぎだろう。
私たちが可愛く見えてきた。
でもよかったお兄様がいたらとんでも無く怒られるとこだった。
「危なかったー」
「何が危なかったって」
この声は…後ろを振り向けない。
「エレーナ、スピカどうして君たち夜着のままうろついているんだい?」
嫌な汗が流れる。
私もスピカも名前を呼ばれたが振り返れない。
「それに窓ガラスは割れて猫はいるしカエルもとびはねてるは一体誰の仕業だろうね」
遠くではしゃいでる双子はお兄様の気配をさしって大人しくなった。
「エレーナとスピカはまず着替えておいで、後片付けが終わったら話をしよう。何、双子ほどじゃないよ。
ノクス、レイラおいで」
遠目だがいやいやしてるのが見えた。
「おいで」
ママーと泣き叫びながらも自分の足で兄の元に来ている。
わかると怖いよね。
でも言うこと聞いちゃうよね怖すぎて。
怒鳴られてるとか怖いことはされないけど怪物におこられてる気がする。
「ねぇこれ誰がやったのかな?」
兄は壁の落書きを指しただけだが、ノクスとレイラは漏らした。
「「ママァァァ」」
「あらあら、まぁまぁ」
ディアナお姉様が我慢できずに飛び出してきた。
おおっとこれはお姉様まで怒られてしまう。
「お、お兄様これはそのちょっとやりすぎただけでして」
「双子、何か言うことは」
「「おじざまぁごべんなざいぃ」」
「僕にじゃないでしょ、誰に迷惑かけてるの」
「「みんあごべんなざいい」」
「危ないことはもうしない?」
「「もうじまぜん」」
「まったく、早く着替えておいで」
「ノクス、レイラおいでお母様と一緒にお着替えしましょう」
そう言ってお姉様と双子と侍女は部屋に消えっていった。
「お兄様、少し圧が強いのでは?」
「カエル10回猫5回窓ガラス6回落書き13回だよ」
「そ、それは」
「双子のイタズラだよまだ他にもあるけど、ああやって大泣きするけど反省はないね。
またやるよまったく
僕はね、イタズラ自体にはあまり怒ってないんだよ。
ただこうも怪我や命に関わる危ないことをするもんだからついきつめに怒ってしまうよね」
「そうですね。
えっとお兄様、蜜月は過ごされなかったのですか?」
「あっちでは蜜月なんて文化ないんだよ。
知らないのに殺しちゃうわけにもいかないでしょ。
国際問題はごめんだよ」
「ないのですか、では結婚後どうするのです?」
「どうって貴族なら長くて一週間くらい旅行に行くらしいよ。
だいたい2〜3日休んで一緒に過ごすのが一般的らしい」
「そ、そんな短いのですか?
一ヶ月でも短いのに?」
「仕方ないよ。文化が違うし、あちらは竜の血は珍しいからね。
で、おしゃべりもいいけどお前達は着替えないのかい、それとももっとお話ししたいのかい?」
「いえすぐ着替えます」
スピカと一緒に着替えに戻る。
ただ恋の話してただけなんだけどな。
ギルに仕事押し付けた天罰が当たったのかもしれない。
静かに淡々とおこる人ほど怖いよね。
双子はどうせママに怒られても怖くないと舐めてかかっていたら、急にラスボス出てきて驚いて漏らした。
でもお兄様大好きだし、お兄様も双子は好きなので怒られてもすぐ忘れてまたやらかす




