エピローグ3
正面に書類を持って立っているお義兄様に声をかける。
「その、なんだ…元気か?」
「ええまぁ、以前より調子はいい方だと思います。
先日は急なお休みをありがとうございます。
なにぶん力が馴染むのに時間が」
「いや違う、いや何、妹は元気か?」
「どの妹ですか」
「……スピカたんは元気かなって」
目の前の綺麗な顔をした男の眉がピクリと上がる。
「スピカも元気にしております。
殿下それよりもここの記述が」
「それよりもじゃない!」
机を叩いて抗議するが、呆れ顔のこの男には通じないようだ。
「スピカたんのことだぞ。
この世に現れた妖精と言ってもいい可愛い可愛いスピカたん。
恋を何かよくわかってない天然無垢なスピカたん
純粋で涙もろくて家族思いで、守ってやりたくなる雰囲気なのに守られるの拒否する負けん気の強さ。
外見もキラキラした青い目はそれはもう雲ひとつない澄んだ青空のようで、髪は眠れない夜に優しく包んでくれるようなミルク多めのミルクティー色。
いつも微笑みを浮かべる唇はぷっくりとした淡いピンク。
背は余の肩までしかなく見たかあの華奢な身体を。
この前踊った時など手なんてこんな小さかったんだぞ。
あれでは食事もうまくおこなえないのではないか?
だからちいさいのか!?!
余が食べさせた方がいいのでは?!」
「スピカは赤子ではないので不要ですし、しっかり食事してます」
「あんな儚げなのだぞ、食事とは砂糖水では、それか花を啄んでいるのか?
あの小さな口ではさぞ食べずらかろう。
やはり余がたべやすいように口」
「大丈夫です。肉も野菜も魚もパンもなんでもしっかり自分で食べてます。殿下のお気遣いは不要です。
はぁ、もう何が聞きたいのですか、遠回しに言われても分かりたくありません」
こいつ余は一応この国の王太子なのだが…いや今では立場が余が下のだが。
まぁいい、余もまわりくどいことは好かん。直に聞こう。
「スピカたんは余に惚れたと言ってはいないか?」
「これと言って別に」
「待て!余は命懸けで守ったのにか?」
「まぁはいその節はありがとうございます」
「本当なのか?あんなに頑張ったのに?」
「特に何かある様子は、まぁ私が目覚めた時は大泣きはしてましたが殿下とは特に関係ないかと」
「ちょっと待て大泣きしていたのか?
それは惜しいことした。婚約者なのだから慰めてやればよかった」
「いえ遠慮します」
「そう言うな、何度お茶会で泣き顔見たさに意地悪をしたことか。
あの潤んだ目にかすかに見え隠れする負けん気の強さ。
泣き声を出すまいと結ばれた唇。
さぞや泣き顔も綺麗なのだろうな。
慰めて鳴かせてベッドの上」
最後まで言う前に書類で頭を叩かれた。
余は王太子なのに、護衛も何やってるんだ。まったく。
「この際いいますが殿下気持ち悪いです」
「無礼なやつだ。お前でなければ首を刎ねていたぞ」
「はいはいありがとうございますー」
「全然気持ちがこもってないなまったく」
「殿下もうそのままこのやりとりスピカに伝えたらどうですか」
「惚れてくれるか?!」
「間違いなく振られます。大丈夫です。
そしたらスピカも潔く次に移れると思うんですよ」
「駄目じゃないか!
スピカたんを他の男などが触れていいわけなけなかろう。
お願いだお義兄様スピカたんとの仲をどうにかしてくれ」
「誰がお兄様ですか。気持ち悪い」
「悪口が隠れてないぞ」
はぁぁっと盛大にため息をつきやがったこいつ。
少し前までなら牢に放り込めたのに、残念だ。
「殿下は意地悪しないで優しく褒めれば上手く行くのでは」
「そんなことはわかっている」
「〜〜!!じゃあそうなさったらいいのでは!」
お義兄様は机に書類を乱暴に置くと部屋を出て行った。
なにをそんな怒ることがあるのか。
斜め後ろにいる護衛からため息が聞こえたが無視をし、執務に戻る。
次スピカたんに会えたらどうやって泣かせようか、考えるだけで高揚した。
うわ、王子気持ち悪




