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閑話:その男の名はラディレ
騎士団に属したその男の名はラディレ。
彼は東の豊かな町に住んでいた。
薙狗と呼ばれる第五部隊は槍遣いばかりで構成され、中でもラディレは軽い槍で幾多の敵を圧倒してきた凄腕だ。
そんな彼が槍を置く原因になったのは、一人の亜人の女。
女は人間に争いを起こさせ、南西のとある町の通りを一つ、血の海にした。
町の治安維持兵だけでは事態を収束させるのは難しい。ゆえに薙狗に応援要請が届いた。
薙狗は女を捕縛するために出征し、混乱に身を隠す女を捜索する。
見つけたのはラディレだった。
彼は諸悪の根源である者の姿を見て驚いた。その者は謀略を巡らせたり、大の大人を誑かすにはあまりにも幼い、猫人の少女だったのだ。
亜人の扱いはよくない。幼いとはいえ、捕らえれば弁明すら許されず処刑される可能性が高かった。
だからラディレは、少女を見逃した。
そして、彼は糾弾された。
いくら獣の身のこなしを持つ亜人が相手だったとはいえ、誤って取り逃がすと判断されるにはラディレの腕は立ちすぎたのだ。
弁明の余地はあった。彼は人間だ。それなりに耳を傾けてもらえるだろう。
彼を庇い立てする者もたくさんいた。
それでもラディレは、槍を置いた。




