三章 鱗のある少年:乱筆の日々
最近は魚人たちと八地区の小競り合いが激しくなってきている。
それにつれてペンを執ることができる時間もずっと減ってしまい、前に書いたときは雪かきのことのんびり書いていたのか、と軽く読み返して思った。
今日大きな怪我をしたのは七人。ベッドの数が足りないから、僕たち三人は白い家の片隅で身を寄せ合って眠る。それがもう当たり前になっている。
放っておくとホークがこっそりどこかに行こうとしているから、今日はここで。
♢
今日は僕も戦いに出た。
鯨人が亡くなっても、やっぱり戦いは終わらない。むしろ前よりも激しいものになっている。
鯨人はもしかして、かなり忍耐力のある人だったのかもしれない。
彼は人間を根絶やしにしなくても耐えられる人だった。
とても、いい人とは言えないような人だったけど。
♢
ホークが自分も戦うと言うようになった。
僕は戦わせるため治したんじゃない。
♢
なんだか自分がどこにいるのか分からなくなるようなことが増えた。
僕は誰のために戦ってる?
♢
いくつか書き忘れていたことを今のうちに書こうと思う。
まず、僕が魚人を殺すたびに残していた床の紋様を、いつの間にか書き足さなくなっていた。
ホークは僕の目を盗んで戦っていた。それで喧嘩になってしまった。
僕にとって殺すということが当たり前になってしまったように、彼にとってもそれが当たり前になった。もしかすると、ここに来る前から、すでにそうだったのかも。
イサナは僕が治療するのを見て人の治し方を覚えてくれた。今となっては、人を治すのはイサナで、僕はたまにそれを手伝っているといった具合だ。
こんなに汚い字じゃ、自分でも読めないかもね。
♢
僕は拒絶の石壁の前で殺す予定の魚人を待つような生活をずっと続けている。
たまに白い家に帰ると、今日も疲弊しきったイサナが怪我人を診ている。
僕も治療の手伝いをしようとするが、イサナは頑なになって僕に休めと言う。
ホークはここしばらく見てない。いっそのこと、こんなところを見放して旅に出てくれているといい。
守りたかっただけなのに、守り切る自信がこれっぽっちもなくなってしまった。
それでも僕は、今日も明日も槍を取る。
♢
攻めてくるのは魚人だと言うのに、どうして僕は人間が憎くなってしまった?
人間が悪いのに、今日も魚人を殺す。




